訪問営業のマナーは、法人訪問で相手の時間を使わせない段取りとして考えると迷いにくくなります。約束の時点で目的と所要時間を伝え、忙しい時間帯を避け、受付では会社名・氏名・約束の相手と時刻を一度で伝えます。名刺交換や席次も、その段取りの一部として押さえておけば、当日に慌てることは少なくなります。

この記事は、約束を取って取引先や見込み客の会社を訪ねる営業担当者と、訪問の決まりごとを部署で揃えたい営業責任者に向けて書いています。個人宅を訪ねる訪問販売は扱いません。特定商取引法の訪問販売の規定は、相手が営業のために結ぶ契約には適用されないとされていますが、相手が法人や個人事業主というだけで一律に外れるわけではなく、個人宅への訪問販売はこの法律を確かめながら進める別の話になるためです。また、訪問に向いた時間帯の在席率や面談率を示す統計は確認できなかったため、時間帯の話に数字は載せていません。

この記事で分かること

  • 約束を取るときに相手へ伝える4つのことと、訪ねてよい時間帯の確かめ方
  • 受付での名乗り方、名刺交換の順番、応接室の席次、退出までの流れ
  • 訪問のあとに残す記録と、訪問を外部に任せるときに契約前に揃える基準

約束を取るときに決めること|日時・所要時間・目的・同行者

訪問のマナーというと、受付での言葉づかいや名刺の渡し方が思い浮かびます。ただ、相手にとって負担が大きいのは、何のために何分使うのかが分からないまま予定を空けることです。約束を取る段階で次の4つを伝えておくと、相手は同席者や部屋を決めやすくなり、当日のやりとりも短くすみます。

決めること 相手に伝える理由 伝え方の例
日時 相手が都合のよい枠を選べるようにする 候補を複数出し、避けたい曜日や時間帯がないかも聞く
所要時間 相手が前後の予定を組めるようにする 「何分ほどいただけますか」ではなく、こちらから上限を示す
目的 相手が同席者や手元の資料を決められるようにする 「現状の進め方を伺い、合いそうか一緒に確かめたい」のように1文で伝える
同行者 相手が部屋の広さや同席者の人数を合わせられるようにする 同行する人の氏名と役割を事前に伝え、当日に人数を増やさない

出典: 表は法人訪問の段取りを一般的に整理したもので、特定の調査の数字は含みません。

所要時間は「その時間で終える」前提で準備する

所要時間は相手への約束です。伝えた時間の中で、聞きたいこと、見せたい資料、次の約束の相談までを終えられるように、話す順番を事前に決めておきます。説明したい内容が多いときは、1回で全部を話そうとせず、初回は相手の状況を聞くことに絞り、提案は次の訪問に回すほうが時間を守りやすくなります。

前日までに確かめること

訪問の前日か前営業日には、日時と場所を確認する連絡を入れておくと、相手の予定が変わっていた場合にも早めに気づけます。あわせて、ビルの入館手続きが必要か、受付がどの階にあるか、無人受付で内線を使う形か、当日に連絡がつく電話番号はどれかを聞いておくと、到着してから迷わずにすみます。

訪ねてよい時間帯と避けたい時間帯|業種で違うので相手に聞いて決める

法人訪問に「この時間なら必ずよい」という決まりはありません。相手の業種や職種、その日の予定によって、落ち着いて話せる時間は変わります。そのため、次の表は時間帯ごとに避けたい理由を並べたものにとどめ、最終的には相手に聞いて決める前提で使ってください。

時間帯 避けたい理由 確かめ方
始業の直後 朝の打合せやメールの確認、その日の段取りに時間を使っていることが多い 午前を希望されたら、朝の打合せが終わる時刻を聞く
昼休みとその前後 休憩中に呼び出す形になりやすい。昼休みの時刻は会社ごとに違う 昼の休憩の時間帯を聞き、その前後に余裕を持たせる
終業の間際 その日の締めの作業と重なり、延びると相手の退勤が遅れる 夕方を希望されたら、終わりの時刻を先に決めておく
月末・月初、締め日の前後 請求や集計、月次の会議が集まりやすい 「避けたい時期はありますか」と約束の時点で聞く
相手の業種の忙しい時間 店舗の営業時間中、現場の作業時間中など、本業の手が離せない 営業時間や作業の流れを聞き、手が空く時間を相手に選んでもらう

出典: 表は一般的な傾向を整理したもので、時間帯ごとの在席率や面談率の統計は確認できなかったため数字を載せていません。

確かめ方の基本は、約束を取るときに「ご都合のよい時間帯や、避けたい曜日・時期はありますか」と一言添えることです。相手が答えた時間帯は訪問記録に残しておくと、2回目以降の約束を取るときに同じことを聞かずにすみます。同じ会社でも部署によって忙しい時期が違うことがあるので、記録は会社単位ではなく相手の部署や担当者の単位で残しておくと使いやすくなります。

到着から受付まで|会社名・氏名・約束の相手と時刻を一度で伝える

到着は早めに、受付は約束の少し前に

電車の遅れや道に迷うことを考えて、訪問先の近くには余裕を持って着くようにします。一方で、受付をあまり早く済ませると、相手が前の予定を切り上げて出てくることになりかねません。決まった規則があるわけではありませんが、近くで身だしなみと持ち物を整えてから、約束の5分前ごろに受付をする進め方にすると、相手を急がせずにすみます。建物に入る前に上着やコートを脱いで腕にかけ、携帯電話は音が鳴らない設定にしておきます。

遅れそうだと分かったら、その時点で約束の相手に電話をかけ、遅れる理由と到着できる時刻を伝えます。相手の次の予定に響きそうなら、時間を短くするか、日を改めるかを相手に選んでもらいます。

受付で伝える3点

受付では、①自分の会社名と氏名、②約束の相手の部署名と氏名、③約束の時刻の3点を一度で伝えます。「株式会社〇〇の△△と申します。本日〇時に、営業部の□□様とお約束をいただいております」のように続けて言えば、受付の人は聞き返さずに取り次げます。名刺を求められたら1枚渡します。入館の記帳や来訪者カードの記入を頼まれた場合は、案内に従って記入します。

内線電話の受付や、受付がない場合

無人の受付で内線電話を使う形の会社では、置かれている案内や部署の一覧を見て、約束の相手の部署を呼び出し、同じ3点を伝えます。部署の一覧が見当たらないときは総合案内の番号にかけるか、事前に聞いておいた相手の連絡先に電話をします。受付の方法は会社ごとに違うので、前日の確認連絡で聞いておくと当日に迷いません。

約束がない訪問の場合

この記事は約束を取ったうえでの訪問を前提にしています。約束のない訪問で受付の方に取り次いでもらうときの言い方は受付・担当者・決裁者別の飛び込み営業のトーク例で整理しています。法人への飛び込み訪問そのものが成り立つ条件は法人への飛び込み営業は今も有効かを整理した記事で扱っています。

応接室・名刺交換・席次|順番と置き方を決めておく

案内されてから相手が来るまで

応接室や会議室に案内されたら、席を勧められた場合はその席に座ります。勧められなかった場合は、入口に近い側で待ちます。かばんは椅子の上や机の上ではなく足元に置き、資料や名刺入れはすぐ出せるようにしておきます。相手が部屋に入ってきたら立ち上がってあいさつをし、名刺交換に移ります。

名刺交換の順番と渡し方

名刺は、訪ねた側から先に差し出すのが基本です。複数人どうしの場合は、役職の上の人どうしから交換を始めます。名刺は相手が読める向きにして両手で持つか、名刺入れの上に載せて差し出し、会社名と氏名を名乗ります。受け取るときは両手で受け取り、会社名や氏名の上に指がかからないように持ちます。相手と同時に出し合う形になったときは、右手で自分の名刺を渡しながら左手の名刺入れで相手の名刺を受け取り、受け取ったらすぐに両手で持ち直します。

名刺を切らしてしまった場合は、そのことを伝えて謝り、会社名と氏名を口頭で名乗ります。訪問のあとに送るお礼の連絡で、名刺の情報(会社名・部署・氏名・連絡先)を伝えれば、相手の手元にも連絡先が残ります。

受け取った名刺の置き方

席に着いたら、受け取った名刺は机の上に置いたまま話を進めます。相手が1人なら自分の名刺入れの上に載せ、複数なら相手の座り順に合わせて並べると、名前と顔を結びつけやすくなります。話の途中で名刺をしまったり、上にメモや資料を重ねたりしないようにし、商談が終わってから名刺入れにしまいます。

応接室の席次

応接室では、一般に入口から遠い奥の席が上座、入口に近い席が下座とされています。長椅子と一人掛けの椅子がある部屋では長椅子のほうが上座になるのが一般的です。訪ねた側は来客なので、上座を勧められたらそのまま座ってかまいません。同行者がいる場合は、自分たちの側で役職の上の人が奥に座ります。部屋の作りは会社ごとに違うため、迷ったときは自分で判断せず、案内に従うのが先です。

場面 押さえること
名刺を出す順番 訪ねた側から先に出す。複数人どうしは役職の上の人どうしから
渡し方・受け取り方 相手が読める向きで差し出し、会社名と氏名を名乗る。受け取るときは文字に指をかけない
受け取った名刺 商談中は机の上に置く。複数枚は相手の座り順に並べる
席次 入口から遠い席が上座。勧められた席に座り、迷ったら案内に従う

出典: 表は一般的なビジネスマナーを整理したもので、会社や業界によって運用が異なる場合があります。

商談中と退出|時間を守り、次の約束をその場で決める

始めに所要時間と進め方を確かめる

あいさつのあと、本題に入る前に「本日は〇分ほどと伺っていますが、お時間は大丈夫でしょうか」と所要時間を確かめます。相手の予定が変わって時間が短くなっていたら、その場で話す内容を絞ります。メモを取るときは一言断ってから取り、録音をしたい場合は、事前に相手の許可を得てからにします。

終わりの時刻はこちらから切り出す

約束の時間が近づいたら、相手から言われる前に自分から「お時間が近づいてまいりました」と切り出します。話が盛り上がっていても、延ばすかどうかは相手に決めてもらいます。時間どおりに終えることは、次の約束を頼みやすくすることにもつながります。

次の約束は帰る前に決める

退出する前に、次に何をするかを相手と決めます。次回の日時、同席してほしい人、それまでにお互いが用意するものをその場で確かめておくと、訪問後の連絡が「日程のご相談」から始まらずにすみます。次回に決裁権を持つ人の同席をお願いしたい場合の考え方は決裁者に会うための到達経路を整理した記事を参考にしてください。その場で日時が決まらないときは、いつまでに誰が何を連絡するかだけでも決めておきます。

退出するときの流れ

話が終わったら、机の上の資料と名刺をしまい、時間をいただいたお礼を伝えて席を立ちます。見送りを申し出られたら、エレベーターの前や出口で「こちらで失礼いたします」と伝えて辞退してもかまいません。上着やコートは建物を出てから着ます。建物の中やエレベーターの中では、電話や商談の内容の話をしないようにします。

訪問後にすること|お礼と記録を当日中に済ませる

訪問のマナーは、建物を出たところで終わりではありません。当日のうちにお礼の連絡を入れ、話した内容を記録に残すところまでを1回の訪問として考えます。お礼のメールに何を書くか、その後の連絡の間隔をどう決めるかは訪問営業後のフォローメールと追客の設計で文例つきで整理しています。

記録には、少なくとも次の3つを残します。記録の項目を部署で揃えておくと、担当者が替わっても次の訪問を同じ前提から始められます。

記録の項目 書くこと
会えた相手 部署・役職・氏名。同席した人も含める
聞けたこと 相手の発言は相手の言葉のまま残し、自分の推測とは分けて書く
次の約束 次回の日時と参加者、お互いの宿題と期限。決まらなかった場合はその理由

出典: 表は訪問記録の項目を一般的に整理したものです。

あわせて、受付の方法や相手が答えた都合のよい時間帯も書き添えておくと、次の約束を取るときの確認が短くなります。訪問前の準備から訪問後の見直しまでを一続きの手順として組み立てたい場合は、法人向け訪問営業を7ステップで進める方法で全体の流れを確認できます。

訪問を外に任せるときに合わせる基準|服装・名乗り方・資料・報告の型

訪問を営業代行会社などの外部に任せると、訪問先から見れば、訪ねてきた担当者の振る舞いがそのまま自社の印象になります。ここまで見てきた段取りや作法を担当者任せにせず、契約の前に次の4つを委託先と決めておくのが一般的な進め方です。

合わせる基準 契約前に決めること
服装と持ち物 訪問先の業界に合わせた服装、持参する物(名刺・資料・入館に必要な物)
名乗り方と名刺 どの会社名で名乗るか、自社の名前をどう伝えるか、どちらの会社の名刺を使い、肩書をどう書くか
資料と話してよい範囲 使ってよい資料、価格や条件をその場でどこまで話すか、持ち帰って自社が回答する事項
報告の型 会えた相手・聞けたこと・次の約束の3項目を含む報告の書式と、報告の頻度

出典: 表は外部に訪問を任せる際の確認事項を一般的に整理したもので、特定の会社の契約内容ではありません。

基準は契約前に委託先の会社との間で決め、運用を始めてから直したい点も委託先の会社に伝えます。厚生労働省の疑義応答集では、発注者が請負会社に対して発注に関わる要求をするのは当事者間のやりとりとして問題ないとする一方、営業を請け負ったスタッフに顧客への営業上の対応方針などを発注者が直接指示している場合は労働者派遣事業と判断されるとしています。訪問先での振る舞いを揃えたいときほど、現場の担当者に個別に指示を出すのではなく、委託先の会社と基準を決めて伝えてもらう形にしておくと安心です。

当メディアを運営するLongWave株式会社の訪問エイギョウブでは、業種・規模・エリア・決裁構造で訪問優先度の高い企業を抽出し、電話やDMで事前の接点を作って「会える商談」にしてから訪問します。訪問トークを標準化し、訪問結果を週次で分析して、アポ率・商談率・受注率の改善につなげる進め方です。LongWaveは800人規模の訪問営業部隊を持ち(サービスページの表記は「累計800人規模の部隊」)、電話・DM・SNS・訪問・手紙・紹介・交流会の7以上のチャネルを組み合わせられます。料金は、訪問エイギョウブのサービスページに月額の目安(税別)としてトライアル20万円〜/月、標準40万円〜/月を掲載しており、支援範囲・体制に応じて提案します。

訪問営業代行の費用の目安や、委託先を選ぶときに契約前に確かめる8項目は訪問営業代行の費用相場と選び方にまとめています。

まとめ|訪問営業のマナーは相手の時間を守る段取りとして揃える

法人訪問のマナーは、約束を取る段階から始まっています。日時・所要時間・目的・同行者を先に伝え、訪ねてよい時間帯は相手に聞いて決め、受付では会社名・氏名・約束の相手と時刻を一度で伝えます。名刺交換は訪ねた側から出し、受け取った名刺は商談中に机の上に置き、席は案内に従います。商談は伝えた時間で終え、次の約束を決めてから帰り、当日中にお礼と記録を済ませます。

こうした段取りを部署の決まりとして揃えておくと、担当者が替わっても、外部に訪問を任せても、訪問先に与える印象がぶれにくくなります。訪問という手段そのものを続けるべきか迷っている場合は、訪問営業は時代遅れかを法人営業で確かめた記事もあわせて読んでみてください。

よくある質問(FAQ)

訪問営業の時間帯やマナーは?
法人訪問では、始業の直後、昼休みとその前後、終業の間際、月末・月初や締め日の前後、相手の業種の忙しい時間を避けるのが基本です。ただし都合のよい時間は業種や部署で違うため、約束を取るときに「避けたい曜日や時期はありますか」と聞いて決めます。マナーの面では、約束の時点で目的と所要時間を伝え、受付では会社名・氏名・約束の相手と時刻を一度で伝え、伝えた時間で商談を終えることを押さえておくと迷いにくくなります。
訪問先には何分前に着けばよいですか?
決まった規則はありませんが、訪問先の近くには余裕を持って着き、受付は約束の5分前ごろに済ませる進め方にすると相手を急がせずにすみます。受付が早すぎると、相手が前の予定を切り上げて出てくることになりかねません。近くで身だしなみと持ち物を整え、建物に入る前に上着を脱ぎ、携帯電話の音が鳴らないようにしてから受付に向かいます。遅れそうなときは、分かった時点で相手に電話をして到着できる時刻を伝えます。
名刺を切らしたときはどうすればよいですか?
名刺交換の場面で名刺を切らしていることを伝えて謝り、会社名と氏名を口頭で名乗ります。相手の名刺は通常どおり両手で受け取り、商談中は机の上に置いておきます。訪問のあとに送るお礼の連絡で、会社名・部署・氏名・連絡先を書き添えておけば、相手の手元にも連絡先が残ります。次に同じ相手と会うときは、最初に名刺をお渡しすると印象を整えられます。
営業代行の担当者が訪問するとき、名刺や名乗りはどうするのですか?
どの会社名で名乗るか、どちらの会社の名刺を使うか、肩書をどう書くかに決まった形はなく、発注する会社と営業代行会社が契約の前に決めておく事項です。あわせて、服装、使ってよい資料とその場で話してよい範囲、報告の書式と頻度も揃えておくと、訪問先に与える印象がぶれにくくなります。運用を始めてから直したい点は、訪問する担当者に直接指示するのではなく、委託先の会社に伝えて対応してもらう形にしておきます。

出典

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