システム開発の営業は、エンド企業からの受託、SIer・元請けからの受託、SESの技術者提案の3つで、話す相手と「1件の成果」と数える地点が違います。営業代行に任せるのは相手と話せる場を作るところまでにし、要件の整理・見積・要員の選定は社内に残すと、成果の定義を決めやすくなります。そのうえで、商流ごとに1件と数える条件を決め、発注前に渡す材料をそろえておくと、代行会社との認識のずれを減らせます。

読者として想定しているのは、元請けからの発注や紹介に案件の入口を頼っていて、新しい取引先を自社で作りたいシステム開発会社の経営者と営業責任者です。システム開発やSESに絞った営業代行の料金や受注率の統計は、この記事の調査範囲では見つかりませんでした。そのため業界の数字は並べず、商流ごとに外に出す工程と成果の決め方を整理します。

この記事で分かること

  • エンド企業からの受託、元請けからの受託、SESの3つの商流で、営業の相手と成果の地点がどう違うか
  • 受託開発とSESで、営業代行に任せやすい工程と社内に残す工程の分け方
  • 1件と数える成果の条件、費用の考え方、発注前に代行会社へ渡すもの

システム開発の営業代行|案件は3つの商流で取り方が違う

システム開発会社の営業といっても、誰から仕事を受けるかで、営業する相手も話の進み方も変わります。同じ「営業代行」でも商流ごとに成果の地点を分けて考えないと、面談の件数は増えたのに案件が増えない状態になりやすくなります。

商流 営業する相手 成果地点の例 向く手法の例
エンド企業からの受託 自社の業務のためにシステムを発注する企業の、情報システム部門・事業部門・経営者 開発の予定や業務の課題を聞けた面談 テレアポ、フォーム営業、顧客を紹介してくれる取引先の開拓
SIer・元請けからの受託 システム開発を請け負う会社の、外注先を選ぶ窓口や開発部門の責任者 パートナー登録の案内を受けた、または窓口担当者と面談できた テレアポで窓口を探す、フォーム営業、交流会
SESの技術者提案 技術者を求める案件を持つ開発会社や、SESの営業担当 案件情報を受け取れた、個別の案件で面談を設定できた 電話やメールで定期的に接点を持つ

出典: 商流の分け方と成果地点・手法の例はエイギョウブ編集部が整理(特定の調査の数字ではありません)。

エンド企業の案件は、発注する側の社内で予算や時期が決まるまでに時間がかかることがあります。最初の面談で受注を目指すより、開発の予定や課題を聞けたかどうかを成果にするほうが、代行会社と約束しやすくなります。元請けからの受託では、まず外注先として登録されることが入口になる場合があり、1回の面談よりも、登録のあとに案件の相談が来る関係を作れるかが問われます。SESでは、相手が技術者を求める案件情報を持っているかどうかが最初の分かれ目です。

自社製品を売るIT企業の場合の、手法の使い分けや地方への訪問の組み合わせ方は、IT・SaaS企業が営業代行に出す工程の決め方で整理しています。

受託開発で外に出す工程と社内に残す工程|要件・見積・技術の質問は社内

受託開発の営業を工程に分けると、リスト作成と窓口探し、初回接触、面談の設定、要件の整理と技術の質問への回答、見積と体制の提示の順に進みます。受注に近い工程ほど、作るものの中身や工数、金額を判断する知識が要るため、社内に残すほうが安全です。反対に、相手と話せる場を作るまでの工程は、渡す材料をそろえれば外に出しやすくなります。

工程 エンド企業からの受託 SIer・元請けからの受託 外に出すか
リスト作成・窓口探し 狙う業種・規模・地域の企業を絞る 外注先を探していそうな開発会社を絞り、パートナーの窓口を探す 外に出しやすい
初回接触 業務の課題や開発の予定を聞く面談を打診する パートナー登録や窓口担当者との面談を打診する 外に出しやすい
面談の設定・定期的な接点 課題を聞く面談の日程を決める 登録のあとも、案件の動きを定期的に確かめる 外に出しやすい(連絡の頻度と伝える内容は社内で決める)
要件の整理・技術の質問への回答 何を作るか、今のシステムとの関係 求められる技術と工程の範囲 社内に残す
見積・体制の提示 金額、工数、納期 金額、担当できる人数と時期 社内に残す

出典: 工程の分け方はエイギョウブ編集部が整理(特定の調査の数字ではありません)。

エンド企業からの受託は「課題を聞く面談」の設定まで

エンド企業への初回接触では、相手から「今の業務システムを入れ替えられるか」「どれくらいの費用がかかるか」と具体的に聞かれることがあります。代行側がその場で答えると、要件を聞く前に前提を約束することになり、あとで見積と食い違うおそれがあります。技術と金額の質問は持ち帰り、社内の担当者が面談で答えると決めておけば、代行側の役割は課題を聞く面談の設定までで区切れます。

面談の場で聞く項目も、社内で一覧にして渡しておきます。開発の予定があるか、いつごろ予算を確保するか、誰が発注を決めるかを代行側が確かめてから社内に引き継ぐと、社内の担当者は要件の話から始められます。

元請けからの受託は「窓口探し」と接点を切らさない連絡

開発会社やSIerから外注先として声をかけてもらうには、まず誰がパートナーの窓口なのかを突き止める必要があります。代表番号や問い合わせフォームから担当者にたどり着くまでの作業は手間がかかりますが、社内の技術者でなくても進められるため、外に出しやすい工程です。

登録が済んだあとも、相手の案件が動く時期は外からは読みにくいものです。連絡が途切れると、案件が動いたときに思い出してもらいにくくなるので、定期的に状況を確かめる連絡を続けます。連絡の頻度と、そのたびに伝える内容(空いている体制や、新しく対応できるようになった技術)は社内で決めて代行会社に渡します。

SESで任せられること・任せにくいこと

SESの営業は、技術者が参画できる案件を探し、条件の合う案件に技術者を提案する流れで進みます。このうち、案件情報を持つ相手を増やす工程は外に出しやすく、どの技術者をいくらで出すかを決める工程は社内に残す必要があります。

任せやすいのは案件情報の収集と面談の調整

技術者を求める案件を持つ開発会社や、SESの営業担当を探して関係をつくり、案件情報を受け取れる状態にするまでは、代行会社に任せやすい工程です。受け取った案件のうち、社内で提案すると決めたものについて、相手と面談の日程を調整する作業も任せられます。

案件情報は数が多くなりやすいので、代行会社には提案できる技術の範囲と、受けない条件(勤務地、期間、担当する工程など)を一覧で渡し、条件に合わない案件は社内へ回さないと決めておくと、社内で読む手間を減らせます。

要員の選定と単価は社内に残す

どの技術者をどの案件に出すかは、本人の希望、今の参画先が終わる時期、技術の経験を知っている社内でなければ判断できません。単価も技術者の処遇と自社の粗利に直結するため、代行側に決める権限を渡さないほうが安全です。代行会社が面談の日程を調整する場合も、提案する技術者と金額は社内で決めてから伝える順番にします。

スキルシートの扱いと、作業の指示を誰が出すか

技術者のスキルシートに氏名など特定の個人を識別できる情報が入っていれば、個人情報に当たります(個人情報保護法2条1項)。個人データの取扱いを営業代行会社に委託する場合、委託元は委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければなりません(同法25条)。スキルシートを代行会社に渡すかどうか、渡すなら誰がどの範囲の情報を扱い、どう管理するかを契約前に決めておきます。

もう1つ確かめたいのは、参画先で誰が技術者に作業の指示を出すかです。契約が準委任でも、実態として発注者と受注者側の労働者の間に指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に当たると厚生労働省の疑義応答集(第3集)は示しており、この考え方はアジャイル型以外のシステム開発を請け負う場合にも当てはまるとされています。自社が営業代行会社のスタッフに顧客への営業上の対応方針などを直接指示する場合も労働者派遣事業と判断されると、疑義応答集(第2集)は示しています。契約の形と指示の出し方の詳細は、営業を業務委託で頼む方法と偽装請負を避ける条件で扱っています。

成果の決め方|件数ではなく中身で数える

営業代行の成果を「面談○件」だけで決めると、商流ごとの違いが消えて、提案に進めない面談が混ざりやすくなります。1件と数える条件を、商流ごとに書き分けておきます。

商流 1件と数える条件の例 数えないものの例
エンド企業からの受託 開発の予定を聞けた/予算を確保する時期の見通しを聞けた/決裁者か、発注を決める部門の担当者が同席した 予定のない情報収集だけの面談、既存の取引先や紹介元との面談
SIer・元請けからの受託 パートナー登録の案内を受けた/求める技術が自社と合う窓口担当者との面談を設定した 代表の問い合わせ窓口に会社案内を送っただけのもの
SESの技術者提案 案件情報を受け取れた/社内で提案すると決めた案件の面談を設定した 自社の技術の範囲や受けない条件に合わない案件情報

出典: 条件の項目はエイギョウブ編集部が整理(特定の調査の数字ではありません)。

エンド企業の面談では、「開発の予定・予算の時期・決裁者の同席」のうち、いくつを満たせば1件とするかまで決めます。すべてを必須にすると件数は減り、代行会社から示される単価も上がることがあります。どこまで条件を付けるかは、次の見出しで触れる費用と合わせて判断します。

SESの「案件情報の受領」は、1通の案件の連絡を1件とするのか、継続して案件情報が届く取引先になった時点を1件とするのかで、数え方が大きく変わります。どちらで数えるかは始める前に書面で決めておきます。取り消しになった面談や日程を変えた場合の数え方、判定の期限など、契約書に書いておく項目はテレアポ代行の成果報酬型で有効アポの定義を決める方法で扱っています。

費用の考え方|業界を絞った料金の数字は見つからない

システム開発・SES・受託開発に絞った営業代行の料金の統計は、この記事の調査範囲では見つかりませんでした。ここでは営業代行全体の目安を、商流ごとの成果の地点に当てはめて考えます。

月額固定で頼む場合、固定報酬型は営業担当者1人あたり月50万〜60万円程度とするメディアが多くあります(Sales Marker、PRONIアイミツほか。税区分の記載なし)。元請けとの定期的な接点づくりのように、案件の相談が来るまでの期間が読みにくい工程は、件数ごとに払う形より、月額で工程の範囲を決めて頼むほうが条件を合わせやすい場合があります。

アポ1件ごとに払う成果報酬型は、アポイント1件あたり1万5,000円〜2万円程度(Sales Marker、PRONIアイミツ、BOXILの34サービス調査)から、1万〜3万円(グランドセントラル)、決裁者アポなど難易度が高いと3万〜5万円以上(アイドマ、ローカルマーケティングパートナーズ)まで幅があります。エンド企業の面談に決裁者の同席などの条件を付けるほど、この幅の上のほうの単価を示されることがあると考えておきます。

成約したときに売上の一定割合を払う形では、受注時の報酬は売上の20〜30%(グランドセントラル、アイドマ)とする媒体と、30〜50%(Sales Marker、PRONIアイミツ)とする媒体があり、定まった相場はありません。受託開発なら追加開発や保守の売上にも割合がかかるのか、SESなら技術者の参画が続く間の毎月の売上に何か月分かかるのかを、契約前に書面で決めておく必要があります。

上の料金はいずれの媒体にも税区分の記載がなく、BOXILの調査は税区分が不明な値を税抜として集計しています。自社の案件の粗利と受注率から、アポ1件にいくらまで払えるかを出す計算の手順は、Web制作会社の営業代行で払えるアポ単価を出す方法で解説しています。成果報酬型の料金の目安と固定報酬との損益分岐は、営業代行の成果報酬型のアポ単価・成約報酬の目安にまとめています。

発注前に営業代行会社へ渡すもの

代行会社は、渡された材料の範囲でしか自社を説明できません。システム開発の相手は技術に詳しいことが多く、材料が足りないと最初の電話で聞かれたことに答えられず、面談につながりにくくなります。発注前に、少なくとも次の5つをそろえておきます。

渡すもの 中身 使われる場面
公開できる開発実績 業界・システムの種類・規模ごとの実績と、社名や内容を出してよい範囲 初回接触で、相手に近い実績を示すとき
得意な技術と業界 使える言語や基盤、担当できる工程、詳しい業務の分野 相手の案件と合うかを判断するとき
受けない案件 規模・工程・技術・勤務地・期間など、請けない条件の一覧 面談や案件情報を社内へ回す前に外すとき
体制 受けられる人数、手が空く時期、担当できる工程 「いつから何人で入れるか」と聞かれたとき
秘密保持の範囲 話してよい取引先名や案件の内容、スキルシートなど個人に関わる情報の扱い 相手に説明する範囲と、代行会社に渡す情報を決めるとき

出典: 渡すものの一覧はエイギョウブ編集部が整理(特定の調査の数字ではありません)。

元請けや取引先との契約で、取引先の名前や案件の内容を外に出さない約束をしている場合があります。代行会社が相手に話してよい実績は、その約束の範囲に収まるものだけにし、迷うものは渡さないでおきます。複数の代行会社に見積もりを頼むときは、この5つと前の見出しで決めた成果の条件を同じ形で渡すと、各社の回答を並べて比べやすくなります。

元請けの窓口やエンド企業へフォーム経由で案内を送るときの課金の単位と送り方の注意点は、フォーム営業代行の費用と進め方にまとめています。

エイギョウブで頼める範囲

エイギョウブは、LongWave株式会社が運営する営業支援サービスです。総合のエイギョウブの実行支援メニューには、電話営業(BDR/SDR)、フォームDM(1日最大500件のアプローチ)、SNS運用(LinkedIn)、即戦力人材のアサイン(最短数日で稼働)などがあります。アポイントの獲得だけでなく、商談から成約までを一括で請け負うこともできます。この記事で整理したように要件・見積・要員の判断を社内に残す場合も、どこまでを任せるかは支援範囲に応じて提案する形です。

サービスページに掲載している支援実績に、営業人員が足りない企業に即戦力人材をアサインし、インサイドセールスから受注までを担当して、3か月で新規商談41件・成約3件という事例があります。システム開発会社の事例として紹介するものではなく、数値は対象期間や条件により異なります。

料金は、エイギョウブ(総合)のサービスページで、トライアルが月30万円〜、標準が月50万円〜(いずれも月額の目安・税別)、上位のプランは個別見積りとしており、支援範囲や体制に応じて提案します。2026年7月時点で進行中の営業支援契約は31件で、月額固定型17件・成果報酬型11件・人材アサイン型3件です。初期費用、最低契約期間、成果報酬の料率はサービスページに載せていないため、見積もりの際に確認してください。

まとめ|商流ごとに成果の地点を決め、要件・見積・要員は社内に残す

  • システム開発の営業は、エンド企業からの受託、SIer・元請けからの受託、SESの技術者提案で、営業する相手と成果の地点が違います。
  • 受託開発では、エンド企業は課題を聞く面談の設定まで、元請けは窓口探しと定期的な接点を外に出し、要件の整理・見積・技術の質問は社内に残します。
  • SESでは、案件情報の収集と面談の調整は任せやすく、要員の選定と単価は社内で決めます。スキルシートの扱いと、作業の指示を誰が出すかも契約前に確かめます。
  • 成果は件数ではなく中身で数え、エンド企業は開発の予定・予算の時期・決裁者の同席、SESは案件情報の受領と面談の設定を条件にします。発注前には開発実績・得意な技術・受けない案件・体制・秘密保持の範囲を渡します。

そもそも自社の商材が営業代行に向いているかを先に確かめたい場合は、営業代行が向いている業種・向かない業種もあわせて読んでみてください。

よくある質問(FAQ)

システム開発会社は営業代行を使えますか?
使えますが、合うかどうかは任せる工程の決め方で変わります。エンド企業からの受託、元請けからの受託、SESの技術者提案では、営業する相手と成果の地点が違うため、まず自社がどの商流の取引先を増やしたいかを決めてください。そのうえで、相手と話せる場を作るまでを代行会社に任せ、要件の整理・見積・要員の選定は社内に残すと、1件と数える成果の条件を決めやすくなります。
SESの営業は代行を頼めますか?
技術者を求める案件を持つ相手を探して関係をつくり、案件情報を受け取れる状態にする工程と、面談の日程調整は頼みやすい工程です。どの技術者をどの案件にいくらで出すかは、本人の希望や経験を知る社内で決めます。スキルシートに個人を識別できる情報が入っていれば個人情報に当たり、個人データの取扱いを委託する場合は委託先を監督する義務があるため、渡す範囲と管理の方法を契約前に決めてください。
受託開発の営業代行は成果報酬で頼めますか?
成果報酬型で請ける営業代行会社はありますが、先に1件と数える条件を決めることが前提です。エンド企業との面談なら、開発の予定、予算を確保する時期の見通し、決裁者の同席のうちどれを満たせば1件とするかを書面にします。成約時に売上の一定割合を払う形では、追加開発や保守の売上にも割合がかかるのかを契約前に決めてください。条件を厳しくするほど、示される単価が上がることがあります。
SESの営業代行の成果報酬はいくらですか?
SESに絞った営業代行の料金の統計は、この記事の調査範囲では見つかりませんでした。営業代行全体では、アポイント1件あたり1万5,000円〜2万円程度(Sales Marker、PRONIアイミツ、BOXILの34サービス調査)から1万〜3万円(グランドセントラル)まで幅があります。成約時の報酬は売上の20〜30%(グランドセントラル、アイドマ)とする媒体と30〜50%(Sales Marker、PRONIアイミツ)とする媒体があり、定まった相場はありません。各媒体に税区分の記載はなく、BOXILの調査は税区分が不明な値を税抜として集計しています。

出典

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