Web制作の営業代行は、案件単価と受注までの率から「1件の商談にいくら払えるか」を先に計算し、それに合う料金の形を選ぶと判断しやすくなります。単価が低い案件だけならアポ1件ごとの課金は合いにくく、保守・運用まで含む案件や単価の高い案件なら、成果報酬や月額固定も検討できます。そのうえで、提案・見積と技術の質問は社内に残し、リスト作成から初回接触までを外に出す形が組み立てやすくなります。

読者として想定しているのは、紹介や既存客からの相談に案件の入口を頼っていて、受注に波がある制作会社の経営者と営業責任者です。制作会社に絞った営業代行の料金の統計は、この記事の調査範囲では見つかりませんでした。そのため、業界の数字を並べるのではなく、自社の案件単価と受注率を当てはめて判断する手順をまとめます。

この記事で分かること

  • Web制作の営業で、外に出しやすい工程と社内に残す工程の分け方
  • 案件の粗利と受注率から、アポ1件に払える上限を出す計算と、料金の形ごとの合わせ方
  • 有効なアポの条件、使いやすい手法、発注前に代行会社へ渡すもの

Web制作会社の営業が止まりやすい理由

Web制作会社が営業代行を検討するきっかけは、営業の担当者が足りないことだけではありません。案件の入口と、制作と営業の分担のしかたに、新規開拓が続きにくい構造がある場合も少なくないためです。ここでは統計ではなく、判断の前提として押さえておきたい一般的な構造を3つ挙げます。

案件の入口が紹介と既存客に偏っている

紹介や既存客からのリニューアル相談は、信頼関係ができた状態で始まるため、受注に進みやすい入口です。一方で、いつ、どれくらいの規模の相談が来るかを自社で決められません。紹介が続いている間は新規開拓の仕組みを作る必要を感じにくく、紹介が途切れた時点で、リストもトークも手元にないことに気づく流れになりがちです。

制作と営業を同じ人が担っている

少人数の制作会社では、代表やディレクターが営業も兼ねている場合があります。技術に詳しい人が商談に出るので提案の質は保ちやすい反面、その人の時間が制作に取られると、新しい相手に連絡する時間が真っ先に削られます。

大きな案件の制作中は新規の営業が止まる

単価の高い案件を受注すると、数か月は制作に人手が集中します。その間に新しい商談を作っていないと、納品のあとに次の案件がない期間ができます。受注の波は、案件が多い時期に営業を止めてしまうことから生まれている場合があります。

この3つに当てはまるなら、足りないのは営業の腕前よりも、制作が忙しい時期でも止まらない接触の量です。営業代行を使うかどうかは、次に説明する「外に出す工程」と「払える単価」を決めてから判断します。

外に出す工程と社内に残す工程|提案・見積と技術の質問は社内に残す

Web制作の営業を工程に分けると、リスト作成、初回接触、ヒアリング、提案・見積、制作の順に進みます。受注に近い工程ほど、構成や工数、金額を判断する知識が要るため、社内に残すほうが安全です。反対に、受注から遠い工程は、渡す材料をそろえれば外に出しやすくなります。

工程 外に出すか 社内で決めて渡すこと
リスト作成 外に出しやすい 狙う業種・地域・会社の規模、除外する既存取引先と紹介元
初回接触(電話・フォーム・訪問) 外に出しやすい 伝えてよい制作実績、話してよい範囲、料金を聞かれたときの答え方
ヒアリング(時期・予算・課題の確認) 項目を決めれば一部を出せる 聞く項目の一覧。技術的な質問は持ち帰って社内で答えるという線引き
提案・見積 社内に残す サイトの構成、工数、金額、納期。制作する側でないと責任を持てない
制作・保守・運用 社内に残す 営業代行の範囲外。保守契約の条件は提案・見積の段階で社内が示す

出典: 工程の分け方はエイギョウブ編集部が整理(特定の調査の数字ではありません)。

とくに気をつけたいのは、初回接触の場で出る「WordPressで作れるか」「今のサーバーのまま移せるか」といった技術の質問です。代行側がその場で答えると、提案の段階で前提が崩れることがあります。持ち帰って社内の担当者が答える、と決めておくと、商談の入口で約束を増やさずに済みます。

商材がSaaSやシステムの場合の工程の分け方は、IT・SaaS企業の営業代行で外に出す工程の決め方で整理しています。

案件単価と料金の形の相性|払えるアポ単価を先に計算する

営業代行の料金を比べる前に、自社が1件のアポにいくらまで払えるかを出しておくと、見積もりを受け取ったときに合う・合わないをすぐに判断できます。

アポ1件に払える上限を出す計算

計算は次の掛け算です。アポ1件に払える上限 = 1件の受注で得る粗利 × 商談からの受注率 × アポからの商談率。アポが取れても、日程の変更や取り消しで商談にならないことがあり、商談をしても全部は受注できません。その2つの率を粗利に掛けると、アポ1件が平均して生む粗利になります。これを超える単価を払うと、受注しても営業の費用で粗利が消える計算です。

下の表は、手順を示すための仮の数字です。制作だけの案件と、保守まで含む案件を同じ率で比べています。

項目(仮の数字) 制作だけの案件 保守まで含む案件
1件の受注で得る粗利 10万円 42万円(制作30万円+保守 月1万円×12か月)
商談からの受注率 20% 20%
アポからの商談率 80% 80%
アポ1件に払える上限 1万6,000円 6万7,200円

出典: 計算の手順を示すための仮の数字(エイギョウブ編集部作成・税は考慮していません)。実在の案件や料金ではありません。

受注率と商談率は、過去の商談の記録から自社の数字を入れてください。記録がなければ、最初の数か月は率を測ることを目的にして、少ない件数で始める方法もあります。また、保守の粗利を何か月分入れるかは、保守契約が平均で何か月続いているかという自社の実績で決めます。提案書や見積りの作成には、失注した商談の分も含めて社内の工数がかかるので、その分を粗利から先に引いておくと、上限を甘く見積もらずに済みます。

料金の形ごとに、上限と比べる

アポ1件ごとに払う成果報酬型の料金は、アポイント1件あたり1万5,000円〜2万円程度(Sales Marker、PRONIアイミツ、BOXILの34サービス調査)から、1万〜3万円(グランドセントラル)、決裁者アポなど難易度が高いと3万〜5万円以上(アイドマ、ローカルマーケティングパートナーズ)まで幅があります。仮の数字の「制作だけの案件」では上限が1万6,000円なので、この帯とほぼ同じ高さです。受注しても粗利がほとんど残らず、条件の厳しいアポを頼めば赤字になる計算です。単価が低い案件だけを扱う会社にアポ課金が合いにくいのは、この計算のためです。一方、「保守まで含む案件」なら上限に余裕があり、決裁者の同席などの条件を付けたアポでも検討できます。

成約したときに売上の一定割合を払う形では、受注時の報酬は売上の20〜30%(グランドセントラル、アイドマ)とする媒体と、30〜50%(Sales Marker、PRONIアイミツ)とする媒体があり、定まった相場はありません。Web制作で使うなら、報酬の割合が自社の粗利率を超えないかを先に確かめます。あわせて、保守や運用の月額にも割合がかかるのか、かかるなら何か月分かを、契約前に書面で決めておく必要があります。

月額固定で頼む場合、固定報酬型は営業担当者1人あたり月50万〜60万円程度とするメディアが多くあります(Sales Marker、PRONIアイミツほか)。テレアポ中心なら月50万〜70万円とする例もあります(ローカルマーケティングパートナーズ)。上に挙げた料金は、いずれの媒体にも税区分の記載がなく、BOXILの調査は税区分が不明な値を税抜として集計しています。月額を、上で出したアポ1件の上限で割ると、月に何件のアポが取れれば採算が合うかが分かります。その件数を社内の提案・見積で回せるかも、あわせて確かめてください。

月額固定とアポ課金のどちらが安く済むかを月の件数で比べる方法は、営業代行の成果報酬型と固定報酬との損益分岐で解説しています。アポ単価の安さだけで選んだときに起きやすいことは、安い営業代行の落とし穴にまとめています。

成果の定義で商談の質が決まる|Web制作の有効アポに入れる条件

成果報酬型でも月額固定でも、何を1件のアポと数えるかを決めずに始めると、件数は増えても提案に進めない商談が混ざります。Web制作の商談で、アポの条件に入れておきたい項目は次のとおりです。

条件 アポの時点で確かめる内容
予算の有無 制作に費用をかける前提があるか。金額の帯を聞けたか、聞けなかったか
リニューアル・新規制作の時期 いつまでに公開したいか。「いつか見直したい」だけの段階を数えるか
決裁者の同席 社長や担当役員など、発注を決める人が商談に出るか。担当者だけの面談を1件と数えるか
既存取引の除外 既存の顧客、制作を紹介してくれる取引先、過去に商談した相手を成果から外すか
対応範囲との一致 自社が受けない種類の案件でないか(受けない案件は発注前に一覧で渡す)

出典: 条件の項目はエイギョウブ編集部が整理(特定の調査の数字ではありません)。

条件を厳しくするほど、提案に進める商談の割合は上がりやすくなりますが、代行会社から示されるアポ1件の単価も上がることがあります。前の見出しで出した上限の範囲で、どこまで条件を付けるかを決めてください。取り消しになったアポや、日程を変えた場合の数え方など、契約書に書いておく項目の細部は、テレアポ代行の成果報酬型と有効アポの定義の決め方で扱っています。

Web制作の営業に使いやすい手法

ここでは、Web制作の新規開拓で組み合わせやすい4つの手法を、何を確かめられるかという観点で整理します。業種ごとの向き不向きではなく、Web制作の商談の進み方に合わせた使い分けです。

フォーム営業

相手の会社のWebサイトを見てから文面を作れるので、サイトの状況に合わせた提案の入口を作りやすい手法です。一方で、送る数を増やすほど相手先の手間も増えるため、営業の連絡を断っているフォームには送らない、同じ会社に何度も送らないといった配慮が要ります。問い合わせフォームからの営業文の送信が特定電子メール法の対象になるかについて、総務省・消費者庁の公式見解は見つかっていません。課金の単位や見積もりの確かめ方は、フォーム営業代行の費用と進め方を参考にしてください。

テレアポ

電話では、リニューアルの時期や予算、決めるのが誰かを会話の中で確かめられます。前の見出しの条件を満たすかをその場で判断しやすいので、条件を付けたアポと相性のよい手法です。リストを外部から買う場合、名簿業者から個人の名簿を買うこと自体は禁止されていませんが、購入には相手が名簿を取得した経緯などの確認・記録義務がかかると、個人情報保護委員会のQ&Aで示されています。

紹介パートナーの開拓

自社で制作の機能を持たない広告会社、印刷会社、コンサルティング会社などは、顧客からWebサイトの相談を受けることがあります。こうした会社を紹介元として開拓すると、紹介に頼るという今の強みを、自社で広げられる入口に変えられます。紹介の対価や、顧客との窓口をどちらが持つかの決め方は、代理店と営業代行の違いが参考になります。

地方の中小企業への訪問

Web制作の発注に慣れていない経営者は、画面越しより対面で相談したいと考える場合があります。電話やフォームで先に接点を作り、会う約束を取ってから訪問すると、移動の手間に見合う商談にしやすくなります。

発注前に営業代行会社へ渡すもの

代行会社は、渡された材料の範囲でしか自社を説明できません。材料が足りないと、相手先から聞かれたことに答えられず、アポの条件も満たしにくくなります。発注前に、少なくとも次の5つをそろえておくと、初回接触から有効なアポまでの流れを組み立てやすくなります。

渡すもの 中身 使われる場面
制作実績 業種・目的・規模ごとの実績と、社外に見せてよい範囲 初回接触で、相手に近い実績を示すとき
料金表・価格帯 プランや価格の帯、見積りで金額が変わる条件 「だいたいいくらか」と聞かれたとき
対応範囲 制作、保守、運用、更新代行など、自社が請けられる業務 相手の課題が自社で対応できるかを判断するとき
受けない案件 規模や種類、予算の下限など、請けない条件の一覧 アポにする前に外すとき
ヒアリング項目 時期・予算・決裁者・今のサイトの課題など、アポの時点で聞く項目 有効なアポかを判断し、商談の前に社内へ共有するとき

出典: 渡すものの一覧はエイギョウブ編集部が整理(特定の調査の数字ではありません)。

複数の代行会社に見積もりを頼むときは、この5つと、前の見出しで決めたアポの条件を同じ形で渡すと、各社の回答を並べて比べやすくなります。比較表の作り方と各社に送る質問は、営業代行の比較で揃える軸と相見積もりの質問リストにまとめています。

エイギョウブで頼める範囲

エイギョウブは、LongWave株式会社が運営する営業支援サービスです。総合のエイギョウブの実行支援メニューには、電話営業(BDR/SDR)、フォームDM(1日最大500件のアプローチ)、SNS運用(LinkedIn)、交流会・展示会、即戦力人材のアサイン(最短数日で稼働)、これらを組み合わせるマルチチャネルがあります。進め方は、ヒアリングのあと、KPIや損益(PL)の設計と体制の提案を含む支援計画を作ってから契約に進む流れです。

支援実績として、不動産向けSaaS企業の支援で、中小〜中堅の不動産会社にテレアポとフォーム営業を行い、商談獲得 月20件〜・受注率30%以上という数字をサービスページに掲載しています。これはWeb制作会社の事例ではなく、数値は対象期間や条件により異なります。

料金は、エイギョウブ(総合)のサービスページで、トライアルが月30万円〜、標準が月50万円〜(いずれも月額の目安・税別)、上位のプランは個別見積りとしており、支援範囲や体制に応じて提案します。実際の契約では、2026年7月時点で進行中の月額固定型17件の月額は22万〜176万円(税込)で、月33万円前後の契約が多く、業務範囲を絞った契約は月22万円台からです。こちらは当社の実契約の金額で税込のため、上の税別の目安とはそのまま比べられません。初期費用、最低契約期間、成果報酬の料率はサービスページに載せていないため、見積もりの際に確認してください。

まとめ|Web制作の営業代行は、払えるアポ単価から料金の形を決める

  • Web制作の営業は、紹介への依存、制作と営業の兼務、大きな案件の制作中に営業が止まることから、受注に波が出やすい構造があります。
  • リスト作成と初回接触は外に出しやすく、提案・見積と技術の質問は社内に残すと、商談の入口で前提が崩れにくくなります。
  • アポ1件に払える上限は、1件の粗利 × 商談からの受注率 × アポからの商談率で出します。単価の低い制作だけの案件ではアポ課金は合いにくく、保守まで含む案件や単価の高い案件なら、成果報酬や月額固定も検討できます。
  • 有効なアポの条件に、予算の有無、公開したい時期、決裁者の同席、既存取引の除外を入れ、発注前に制作実績・料金表・対応範囲・受けない案件・ヒアリング項目を渡します。

営業代行を使うかどうかを業種の面から先に確かめたい場合は、営業代行が向いている業種・向かない業種もあわせて読んでみてください。

よくある質問(FAQ)

Web制作会社は営業代行を使うべきですか?
紹介だけでは受注の波をならせず、社内に新規開拓の担当を置けない場合は、検討する価値があります。ただし、提案や見積りを社内で回す余力がないまま商談だけを増やしても、受注にはつながりにくくなります。まず外に出す工程を決め、1件の粗利と受注率からアポ1件に払える上限を計算し、その範囲に収まる料金の形で頼めるかを確かめてから判断してください。
Web制作の営業代行は成果報酬型で頼めますか?
成果報酬型で請ける営業代行会社はありますが、合うかどうかは案件単価で変わります。アポ1件ごとに払う形なら、1件の粗利 × 商談からの受注率 × アポからの商談率で出した上限が、提示された単価を上回るかを確かめてください。成約時に売上の一定割合を払う形では、その割合が自社の粗利率を超えないか、保守や運用の月額にも割合がかかるかを、契約前に書面で決めておく必要があります。
Web制作会社が営業代行を頼む費用はどれくらいですか?
Web制作会社に絞った料金の統計は、この記事の調査では見つかりませんでした。営業代行全体では、固定報酬型は営業担当者1人あたり月50万〜60万円程度とするメディアが多く(Sales Marker、PRONIアイミツほか)、成果報酬型のアポ1件は1万5,000円〜2万円程度(Sales Marker、PRONIアイミツ、BOXILの34サービス調査)から1万〜3万円(グランドセントラル)まで幅があります。各媒体に税区分の記載はなく、BOXILの調査は税区分が不明な値を税抜として集計しています。自社の案件単価から出した上限と並べて判断してください。
フォーム営業はWeb制作の新規開拓に向いていますか?
相手のWebサイトを見てから文面を作れるため、サイトの状況に合わせた提案の入口を作りやすい手法です。ただし、送信数を増やすほど相手先の手間も増えるので、営業の連絡を断っているフォームには送らない、同じ会社に何度も送らないといった配慮が要ります。反応があった相手には電話で時期や予算を確かめるなど、ほかの手法と組み合わせると、有効なアポの条件を満たしやすくなります。

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