営業代行の契約書では、業務範囲と成果の定義、報酬の計算と支払期日、期間と中途解約の精算、再委託、情報管理、成果物の扱い、指示の窓口を必ず決めます。「業務委託契約書」という名前だけでは中身は決まらず、請負に当たるか準委任に当たるかも条文の書き方で変わります。下のチェック表の12項目を契約書案と突き合わせ、空欄や「別途協議」のまま残っている条項は、署名の前に埋めてもらってください。
この記事は、営業代行会社や個人の営業フリーランスと契約する直前に、届いた契約書案や手元の雛形を条項ごとに確かめたい経営者・営業責任者・法務担当の方に向けたものです。民法や個人情報保護法、労働者派遣の区分基準、印紙税に関する公的な資料をもとに、一般的な見方を整理しています。個別の契約書が自社にとって妥当かどうかは、弁護士に相談してください。
この記事で分かること
- 営業代行の契約書で必ず決める12項目と、それぞれの根拠になる条文(署名前のチェック表)
- 成果の定義・報酬の計算・中途解約の精算・再委託・情報管理・成果物の権利の書き方と、偽装請負にならない指示の出し方
- 無料の契約書チェックリストと雛形の使い方、契約書に貼る収入印紙の考え方
営業代行の契約書で必ず決める12項目|署名前のチェック表
営業代行の契約書で揉めやすいのは、法律で中身が決まっておらず、当事者が契約で決めるしかない条項です。雛形ではこうした条項ほど空欄や一般的な書き方になりやすいため、次の12項目が契約書か発注書のどこかに具体的に書かれているかを確かめます。「根拠」の欄に法令がない項目は、当事者で決める事項です。
| 項目 | 契約書で決めること | 根拠 |
|---|---|---|
| 1. 契約の組み立てと型 | 基本契約と個別契約(発注書)の役割分担、食い違ったときの優先順位。仕事の完成を約す請負か、事務の処理を任せる準委任か | 民法632条・643条・656条 |
| 2. 業務範囲 | 任せる工程(リスト作成、架電、訪問、商談、成約まで等)と任せない工程、対象とする業種・地域・規模 | 当事者で決める |
| 3. 成果の定義 | 成果1件と数える条件と数えない場合、誰がいつまでに成果を確定させるか | 当事者で決める。成果に報酬を払う委任は民法648条の2 |
| 4. 報酬の計算と支払期日 | 固定・成果・複合のどれか、計算式、締め日と支払期日、税別か税込か | 委任の報酬は特約による(民法648条1項・2項)。相手が個人のフリーランスなら支払期日などの明示が必要(フリーランス法3条) |
| 5. 実費 | 交通費・通信費・リスト購入費などを報酬に含むか、別に請求するなら上限と事前承認の手順 | 当事者で決める |
| 6. 報告と記録 | 報告の頻度、受け取るデータの項目(架電数、接続数、商談の記録など)と形式 | 当事者で決める |
| 7. 期間・更新・中途解約と精算 | 契約期間、自動更新の有無、解約の予告期間、途中で終えたときに払う額の計算方法、違約金の有無 | 民法651条・641条、割合に応じた報酬は648条3項・634条。個人のフリーランスに6か月以上委託するなら30日前予告(フリーランス法16条) |
| 8. 再委託 | 再委託を認めるか、認めるなら事前の書面承諾と、再委託先にも同じ義務を負わせるか | 民法644条の2第1項・656条 |
| 9. 情報管理(個人情報・秘密保持) | 預ける顧客リストの利用目的と範囲、安全管理、漏えい時の連絡、終了時の返却・削除。代行会社が用意するリストの出どころ | 個人情報保護法25条・27条5項1号、20条1項・30条 |
| 10. 成果物とリストの権利 | 営業で作ったリスト、トークスクリプト、通話や商談の記録を、終了後にどちらが持ち、使えるか。引き渡すデータの形式 | 当事者で決める |
| 11. 指示の窓口 | 要望を伝える代行会社側の責任者、指示を出す経路、定例会議の位置づけ | 37号告示、37号告示関係疑義応答集(厚生労働省) |
| 12. 禁止事項・損害賠償・反社条項 | 禁止する営業方法、賠償の範囲と上限とその例外、反社会的勢力と判明したときの解除 | 特商法26条1項1号、民法415条1項、東京都暴力団排除条例18条 |
出典: 民法・個人情報保護法・フリーランス法(e-Gov法令検索)、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)と関係疑義応答集(厚生労働省)、消費者庁「特定商取引に関する法律等の施行について」(令和6年11月19日)、東京都暴力団排除条例をもとに編集部が作成。いずれも2026-10-25確認。
12項目のうち、とくに支払う金額を左右するのは3の成果の定義、4の報酬の計算、7の中途解約の精算です。この3つは次の章以降で書き方を詳しく見ます。収入印紙を貼るかどうかは条項ではありませんが、上の1と4の書き方で決まるため、最後の章で扱います。
契約の組み立てと型|基本契約と個別契約、請負か準委任か
営業代行を継続して頼む場合、取引全体に共通するルールを「基本契約書」にまとめ、月ごと・案件ごとの業務内容や金額を「個別契約書」や「発注書・注文請書」で決める組み立て方があります。1通の「業務委託契約書」にすべてを書く形もあります。どちらの形でも、基本契約と個別契約に同じ事項が違う内容で書かれていないか、食い違ったときにどちらを優先するかが書いてあるかを確かめておきます。
「業務委託契約」は実務での呼び名です。報酬や解除について民法のルールを当てはめるときは、その中身が請負と委任(準委任)のどちらに当たるかを見ます。請負は、一方が仕事の完成を約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払う契約です(民法632条)。委任は法律行為をすることを委託する契約で、法律行為でない事務の委託(準委任)にも委任の規定が準用されます(民法643条・656条)。委任には、事務の処理に対して報酬を払う形のほかに、事務の処理で得られる成果に対して報酬を払う約束もあります(民法648条の2)。
| 見るところ | 請負 | 委任・準委任(事務の処理に報酬) | 委任・準委任(成果に報酬) |
|---|---|---|---|
| 報酬の原則 | 仕事の結果に対して支払う(632条) | 特約がなければ請求できない。受け取る場合も原則は履行の後で、期間で報酬を定めたときは別(648条1項・2項) | 成果に対して支払う。成果に引渡しが必要なら、引渡しと同時に支払う(648条の2第1項) |
| 途中で終わったとき | 可分な部分で注文者が利益を受けるなら、その利益の割合に応じて請求できる(634条) | 既にした履行の割合に応じて請求できる(648条3項) | 請負の634条が準用される(648条の2第2項) |
| 解除 | 仕事が完成しない間は、注文者は損害を賠償していつでも解除できる(641条) | 各当事者がいつでも解除できる。相手方に不利な時期の解除などは、やむを得ない事由がない限り損害を賠償する(651条) | |
| 再委託 | 国税庁は、仕事が完成されるなら下請負に出してもよい契約と説明している | 委任者の許諾か、やむを得ない事由がなければ復受任者を選任できない(644条の2第1項・656条) | |
| 印紙税 | 第2号文書(請負に関する契約書) | 委任に関する契約書は課税物件表になく、課税されない | 「請負」には当たらないとされている。請負の事項が併記されると請負になり得る |
出典: 民法 第632条・第634条・第641条・第643条・第644条の2・第648条・第648条の2・第651条・第656条(e-Gov法令検索)、国税庁 質疑応答事例(印紙税)「請負の意義」、タックスアンサーNo.7102、国税庁「印紙税の手引」(令和8年6月)。いずれも2026-10-25確認。
アポイントの件数を「完成」として約すのか、営業活動そのものを任せるのかという契約形態の選び方は、営業を業務委託で頼む方法(契約形態の選び方と報酬の考え方)で扱っています。この記事では、選んだ形が契約書の条項に表れているかを見ていきます。なお印紙税では、契約の名前が準委任でも、報酬が仕事の完成と対価の関係にあれば請負として扱われます。
相手が個人の営業フリーランスのとき|取引条件の明示が加わる
従業員を使用しない個人などの営業フリーランスに営業業務を委託する場合は、フリーランス法の対象になります。発注したら直ちに、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面または電磁的方法で明示しなければならず、この義務は従業員のいない発注者にもかかります(フリーランス法3条1項)。公正取引委員会の特設サイトが挙げる明示事項は、発注事業者とフリーランスの名称、業務委託をした日、給付の内容、役務の提供を受ける期日と場所、検査をする場合の検査完了期日、報酬の額と支払期日、金銭以外の方法で払う場合の支払方法です。契約書を交わす場合も、これらの項目が契約書か発注書のどちらかに書かれているかを確かめます。
従業員を使用するなどの発注者(特定業務委託事業者)には、さらに義務が加わります。支払期日は役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間で定め(同法4条1項)、6か月以上委託する場合は、契約を解除したり更新しなかったりするときに少なくとも30日前までの予告が必要です(同法16条1項)。個人への頼み方や報酬の目安は、営業代行をフリーランスに依頼する方法にまとめています。
条項ごとの書き方|成果の定義・報酬・中途解約・再委託・情報管理・成果物
ここからは、チェック表の項目のうち、書き方しだいで払う金額や終了後に手元に残るものが変わる条項を見ていきます。
成果の定義と報酬の計算|報酬が発生する時点を条項で固定する
最初に見るのは、何を任せ、何をもって成果とするかです。「アポイント1件」と書いてあっても、決裁者との面談に限るのか、日程が決まった時点か、商談が実際に行われた時点か、対象外の業種や重複した相手をどう扱うかで、払う金額が変わります。成果の定義が別紙や「別途協議」になっている場合は、契約前に中身を埋めてもらいます。成果の定義には、少なくとも次の点を書いておきます。
| 決めること | 書いておく内容 |
|---|---|
| 成果の地点 | アポイントの獲得、商談の実施、受注のどれを1件と数えるか |
| 数える条件 | 面談する相手の役職、対象の業種・規模・地域、日程が確定していることなど |
| 数えない場合 | 既存の取引先や過去に接点のある相手、重複、対象外の相手、相手の都合で流れて再設定できなかった商談など |
| 確定の手順 | 発注側が何日以内に確認するか、異議の出し方、確認がないときの扱い |
| 報酬の計算 | 固定額と成果の単価の組み合わせ方、締め日、確定した件数だけを数えるか |
報酬の条項は、報酬がどの時点で発生するかと合わせて読みます。委任では、受任者は特約がなければ報酬を請求できず、報酬を受ける場合も原則は委任事務を履行した後に請求します(民法648条1項・2項)。つまり月額の固定報酬で頼むなら、金額だけでなく「どの期間の、どの業務に対する報酬か」を契約書に書いておくことになります。成果に対して報酬を払う形の委任も認められており(民法648条の2)、成果報酬型の営業代行はこの形に近い書き方になります。
実費と報告も、法律で中身が決まっていない分、書き漏れると後で揉めやすい条項です。交通費やリスト購入費を別に請求するなら、上限額と事前承認の手順を書きます。報告は頻度だけでなく、架電数・接続数・商談の記録など、受け取るデータの項目と形式まで決めておくと、契約が終わったあとも自社に記録が残ります。成果報酬の単価の目安や固定報酬との損益分岐は、営業代行の成果報酬型の相場で扱っています。
期間・中途解約・損害賠償・反社条項|途中で止めるときの払い方を先に決める
委任は各当事者がいつでも解除できます。ただし、相手方に不利な時期に解除したときや、受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く)をも目的とする委任を解除したときは、やむを得ない事由がない限り損害を賠償します(民法651条)。請負では、仕事が完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できます(民法641条)。「いつでも解約できる」と「負担なく解約できる」は同じではありません。最低契約期間を設けている会社もあるため、契約期間と自動更新の有無、解約の予告期間、最低契約期間の途中で終えるときの扱い、違約金の有無を条項で確かめます。
途中で終わったときの報酬は、法律にも手がかりがあります。委任が履行の途中で終了したときなどは、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項)。請負では、可分な部分の給付で注文者が利益を受けるなら、その利益の割合に応じて報酬を請求でき(民法634条)、成果に報酬を払う委任にもこの規定が準用されます(民法648条の2第2項)。月の途中で止めた場合や、成果の手前まで進んでいた案件をどう数えるかを、日割りや件数の計算式で書いておくと解釈の違いが起きにくくなります。
損害賠償の条項では、賠償の範囲と上限を見ます。民法は、相手が債務を約束どおりに履行しないときに損害賠償を請求できると定める一方で、契約の内容や取引の通念からみて相手に責任を負わせられない事由で生じた損害は、その対象から外しています(民法415条1項)。契約書で賠償額に上限を設ける場合は、個人情報の漏えいのように上限をかけると困る損害を例外にするかどうかも確かめます。
反社会的勢力の排除条項は、東京都の場合、暴力団排除条例で事業者の努力義務とされています。同条例は、契約を書面で結ぶ場合に、相手方等が暴力団関係者と判明したら催告なしで解除できる旨などの特約を定めるよう努めるものとしています(18条2項)。他の道府県の条例は個別に確認が必要で、全国一律の法律上の義務として扱うものではありません。
再委託・禁止事項・情報管理|誰が、どう営業し、どの情報を使うか
委任・準委任の契約では、受任者は委任者の許諾を得たときか、やむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任できません(民法644条の2第1項・656条)。一方で請負について、国税庁は印紙税の解説で、仕事が完成されるなら下請負に出してもよい契約と説明しています。どちらの形でも、実際に誰が営業するのかは発注側にとって大事な点なので、再委託を認めるか、認めるなら事前の書面承諾を条件にするか、再委託先にも秘密保持や個人情報の義務を負わせるかを条項で明確にします。なお、営業代行会社が請けた営業を別の会社や個人に再委託する場合は、取適法(旧下請法)の役務提供委託として、代行会社と再委託先との取引が対象になり得ます(公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」)。
禁止事項には、代行会社がしてはいけない営業方法を書きます。法人向けの訪問営業・電話営業で、相手が営業のために結ぶ契約であれば、特定商取引法の訪問販売・電話勧誘販売の規定は適用されません(特商法26条1項1号)。ただし消費者庁の通達は、相手が事業者や法人であることだけで一律に除外されるわけではなく、主に個人用・家庭用に使うための契約や、事業実態がほとんどない零細事業者との契約には適用される可能性があるとしています。営業先に個人事業主や小規模な事業者が含まれるなら、法令に反する営業をしないことと、違反があったときの扱いを条項に入れておきます。
顧客リストなど個人データの取扱いを営業代行会社に委託する場合、委託元は委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければなりません(個人情報保護法25条)。利用目的の達成に必要な範囲で取扱いを委託することに伴う提供は、委託先が第三者に当たらないため本人の同意は要りません(同法27条5項1号)。同意が要らない代わりに監督の義務が残るので、利用目的の範囲、安全管理の方法、漏えいが起きたときの連絡、契約終了時の返却や削除を契約書に書いておきます。
代行会社がリストを用意する場合は、その出どころも確かめます。名簿業者から名簿を買うこと自体は禁止されていませんが、適正取得の義務と、第三者から個人データを受け取る際の確認・記録義務がかかり、相手が名簿を取得した経緯などを確認・記録する必要があると解されています(個人情報保護委員会Q&A Q4-2)。
成果物とリストの権利|契約が終わったあと、何が自社に残るか
営業代行では、営業の過程でアプローチリスト、トークスクリプト、通話や商談の記録、断られた理由のメモなどが積み上がります。これらを契約終了後にどちらが持ち、使い続けられるかは法律で決まっていないため、契約書に書いていないと、終了後に自社で営業を続けようとしたときに手元に何も残らないことがあります。秘密保持の条項は「相手に漏らさない」ことを決めるもので、成果物を誰が持つかとは別の話なので、条項を分けて確かめます。
- 対象を挙げる。リスト、スクリプト、通話録音、商談の記録、報告書のどれが成果物に当たるかを列挙する
- 帰属と利用の範囲を決める。発注側が終了後も使えるか、代行会社が他の取引で使えるか(汎用のノウハウと、発注側の顧客情報を分けて書く)
- 引き渡しの形式と時期を決める。どのファイル形式で、契約終了から何日以内に渡すか。代行会社の管理ツールに入っているデータの書き出しを含めるか
- 個人情報の返却・削除とそろえる。顧客の個人データは、引き渡したあとに代行会社側で削除する旨を情報管理の条項と食い違わないように書く
偽装請負にならない線引き|指示は代行会社の責任者を通す
営業代行の契約書で見落とされやすいのが、発注側からの指示の出し方です。請負(業務委託)と認められるには、受注した会社が、自社のスタッフへの業務遂行・評価の指示、労働時間の管理、服務規律や配置の決定を自ら行い、かつ資金や事業主としての責任、自前の企画や専門技術によって業務を発注者から独立して処理している必要があり、いずれかを満たさなければ労働者派遣事業とされます(37号告示)。委任・準委任の形でも、発注者と受注者側のスタッフとの間に指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に当たります(37号告示関係疑義応答集 第3集)。
| 発注側の行為 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| スタッフからの問い合わせに、業務に必要な範囲で情報を提供する | 直ちに労働者派遣事業とはされない | 疑義応答集 第2集 問1 |
| 受注した会社に対して、作業の見直しなど発注に関わる要求をする | 当事者間のやりとりで問題ない | 疑義応答集 第1集 |
| 受注した会社の責任者の判断で、スタッフが打ち合わせに同席する、依頼メールをCCで受け取る | それだけでは直ちに労働者派遣事業とはされない | 疑義応答集 第2集 問9・問10 |
| スタッフに、顧客への営業上の対応方針などを直接指示する | 労働者派遣事業と判断される | 疑義応答集 第2集 問1 |
| 作業の順序や割り振りの詳細な指示、日常的な方針変更の指示、スタッフへの直接返信の要求 | 受注した会社自身が指示していると認められない場合は、労働者派遣事業と判断される | 疑義応答集 第2集 問9・問10 |
出典: 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」、同 関係疑義応答集(第1集・第2集・第3集)。2026-10-25確認。
契約書では、要望や修正の依頼を伝える相手として代行会社側の責任者を決め、定例会議の参加者と、報告を受け取る経路を書いておきます。条項にするだけでなく、発注側の現場の担当者が代行会社のスタッフに直接「この顧客にはこう話して」と伝えない運用まで決めておくことが大切です。労働者派遣法などの適用を免れる目的で、請負など派遣以外の名目で契約し、必要な事項を定めずに派遣を受けた場合は、発注側がそのスタッフに労働契約の申込みをしたものとみなされる規定もあります(労働者派遣法40条の6第1項5号。知らず、かつ知らないことに過失がなかった場合を除く)。
自社の担当者が日々の指示を出しながら一緒に営業してほしい場合は、業務委託ではなく派遣で受け入れる形が合うことがあります。違いと受け入れる側の義務は、営業派遣と営業代行の違いで整理しています。
雛形・テンプレートを使うときの注意|空欄と抜けを自社の取引に合わせて埋める
インターネットで手に入る業務委託契約書の雛形やテンプレートは、特定の取引を前提にしていません。公正取引委員会・中小企業庁・経済産業省の資料には、営業代行の契約書を対象にした公的なモデル契約やひな形は見当たりません(2026年9月時点)。
公的な資料で参考になるものはありますが、どれも契約書の雛形ではありません。公正取引委員会のフリーランス法特設サイトは、個人のフリーランスに発注するときに明示すべき取引条件の項目を挙げています。公正取引委員会・中小企業庁の「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月)には、発注書面の参考例として役務提供委託の書式例が載っています。これらは発注の際に書面で示す事項の参考で、再委託や個人情報、解除の精算までを定めた契約書の形にはなっていません。同テキストは、発注書面に請負契約などの課税事項を書き加えると印紙税の課税文書になる場合がある、とも注意しています。
雛形をもとに営業代行の契約書を作るときに、とくに抜けやすいのは次の点です。冒頭の契約書チェックリストと並べて、1つずつ埋めてください。
- 成果の定義が空欄か抽象的なまま。「成果」「アポイント」の言葉だけで、数える条件と数えない場合が書かれていない
- 再委託と個人情報の条項がない。一般的な業務委託を想定した雛形では、顧客リストを預ける前提の条項が入っていないことがある
- 成果物の帰属が書かれていない。秘密保持の条項はあっても、リストや記録を終了後にどちらが持つかが決まっていない
- 途中終了の精算が「協議」だけ。月の途中で止めた場合や、成果の手前の案件の扱いが決まっていない
- 契約の中身と印紙の判断がずれている。準委任のつもりで作ったのに、成果の完成を約す文言が混ざっている
雛形の条項を埋める前に、相手の会社そのものに不安がある場合は、営業代行が怪しいと感じたら確認する7項目で先に確かめておくと、契約書の読み方も定まりやすくなります。問い合わせから契約・稼働開始までの流れと、条項以外に書面でそろえておく確認事項は営業代行を依頼する流れと契約前の確認事項に、契約後に起きやすい行き違いは営業代行のトラブルを契約前に防ぐ方法にまとめています。
営業代行の契約書と印紙税|名前ではなく記載内容で決まる
収入印紙を貼る必要があるかどうかは、表題が「業務委託契約書」かどうかではなく、条項に何が書かれているかで判断されます。印紙税がかかるのは印紙税法の課税物件表に載っている文書に限られ、たとえば委任に関する契約書はこの表に載っていないので、課税の対象になりません。
| 契約書に書かれている内容 | 印紙税の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 仕事の完成を約し、その結果に報酬を払う(請負) | 第2号文書。税額は契約金額に応じて段階的に決まり、たとえば1万円以上100万円以下なら200円、金額を書いていない契約書も200円 | タックスアンサーNo.7102(令和8年4月1日現在法令等) |
| 委任(準委任)だけを定める | 課税物件表に掲げられておらず、課税されない | 国税庁「印紙税の手引」(令和8年6月) |
| 成果に対して報酬を払う委任(民法648条の2) | 「請負」には当たらない | 質疑応答事例「請負の意義」 |
| 一部に請負の事項が併記されている、請負と他の事項が混然一体に書かれている | 民法上は委任に近い混合契約でも、印紙税法上は請負になるものがある | 質疑応答事例「請負の意義」(課税物件表の適用に関する通則2) |
| 継続的な取引の基本となる条件を定める(例: 営業者の間で請負の2以上の取引を継続して行うため単価や対価の支払方法などを定める。売買に関する業務を継続して委託するため業務の範囲や対価の支払方法を定める) | 第7号文書で1通4,000円。契約期間が3か月以内で更新の定めのないものは除く。例示に「業務委託契約書」がある | タックスアンサーNo.7104・No.7141、印紙税法施行令26条1号・2号 |
| 紙ではなく、電子署名を付した電磁的記録をメールで送信 | 電磁的記録は印紙税の「文書」に含まれず、課税されないとの回答がある | 質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」 |
出典: 国税庁 タックスアンサーNo.7102・No.7104・No.7120(いずれも令和8年4月1日現在法令等)・No.7141、質疑応答事例(印紙税)「請負の意義」「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」(いずれも令和7年8月1日現在の法令・通達等)、国税庁「印紙税の手引」(令和8年6月)、印紙税法・同施行令(e-Gov法令検索)。2026-10-25確認。
営業代行の契約書が第2号文書、第7号文書、課税されない文書のどれに当たるかは、仕事の完成を約しているか、継続取引の基本条件や委託業務の範囲・対価の支払方法を定めているかなど、記載内容で判断されます。営業代行契約を名指しして判断を示した国税庁の事例は見当たらないため、判断に迷う場合は、契約書案を持って税務署に相談してください。
紙で作る場合の注意もあります。電子メールで送った電磁的記録は課税されないとの事例がある一方で、紙に印刷して署名・押印し、契約の成立を証明する目的で相手に交付すれば課税文書になり得ます。「写し」「副本」と表示しても、双方の署名・押印があるなど契約の成立を証明する目的で作ったものは課税対象で、署名・押印のない単なるコピーは対象になりません。印紙を貼らなかった場合は、納付しなかった印紙税額とその2倍の合計(3倍)の過怠税がかかり、調査を予知せず自主的に申し出た場合は1.1倍になります(印紙税法20条)。営業代行費の経理処理や消費税の扱いは、営業代行費の勘定科目と仕訳で扱います。
エイギョウブと契約する場合
エイギョウブは、LongWave株式会社が運営する営業支援サービスです。総合のエイギョウブは、ヒアリングのあとに支援計画(KPI・PL設計、体制の提案)を作成し、そのうえで契約、アサイン・稼働開始の順に進みます。契約の前に支援計画を作る流れなので、この記事で挙げた業務範囲や成果の定義、報告で受け取りたい記録を計画の段階で伝えておくと、契約書の条項とそろえやすくなります。
営業支援は6〜12か月の期間でのご提案を基本にしており、最低契約期間は6か月です。初期費用は20万円(税別)で、ヒアリング、アプローチリストの作成、トークスクリプトの作成などを含みます(いずれも2026年9月時点)。作成したリストやスクリプトを契約終了後にどう扱うかを含め、契約書のそのほかの条項はお見積りの際にご確認ください。
まとめ|契約書は12項目を中身で読み、空欄を署名前に埋める
- 営業代行の契約書で必ず決めるのは、業務範囲、成果の定義、報酬の計算と支払期日、実費、報告、期間と中途解約の精算、再委託、情報管理、成果物の権利、指示の窓口、禁止事項・損害賠償・反社条項、契約の組み立てと型の12項目です
- 請負か委任・準委任かは名前ではなく中身で決まり、報酬の原則、途中終了の精算、再委託、印紙税の扱いが変わります
- 成果の定義と報酬の計算式、途中で終えたときの支払額は、法律で決まっていない分、契約書に具体的に書きます
- 再委託は委任では許諾が原則です。顧客リストを預けるなら委託先の監督義務があり、成果物を誰が持つかは秘密保持とは別に決めます
- 指示は代行会社の責任者を通します。スタッフに営業上の対応方針を直接指示すると、契約の名前にかかわらず労働者派遣事業と判断されます
この記事は条項の一般的な見方を整理したものです。実際に署名する契約書の条項が自社にとって妥当かどうかは、契約書案を持って弁護士に、印紙税の判断に迷う場合は税務署に相談してください。
よくある質問(FAQ)
- 営業代行の契約書で必ず決める項目は何ですか?
- 業務範囲、成果の定義、報酬の計算と支払期日、期間と中途解約の精算、再委託、情報管理、成果物の扱い、指示の窓口は必ず決めます。これに実費、報告と記録、禁止事項・損害賠償・反社条項、基本契約と個別契約の関係を加えた12項目を、契約書案と突き合わせて確かめると抜けが見つかります。とくに成果の定義と中途解約の精算は法律で中身が決まっておらず、空欄や「別途協議」のままだと払う金額が読めないため、署名の前に埋めてもらいましょう。
- 営業代行の契約は請負と準委任のどちらですか?
- 契約書の名前ではなく、中身で決まります。アポイントや受注などの仕事の完成を約し、その結果に報酬を払うなら請負、営業活動という事務の処理を任せるなら準委任に当たります。成果に対して報酬を払う準委任(民法648条の2)も認められていて、成果報酬型の営業代行はこの形に近い書き方になります。型によって報酬を請求できる時期、途中で終わったときの精算、再委託、印紙税の扱いが変わるので、条文がどちらの書き方になっているかを確かめてください。
- 営業代行の契約書に収入印紙は必要ですか?
- 契約書の名前ではなく、書かれている内容で決まります。仕事の完成を約す請負の契約書は第2号文書、継続的な取引の基本条件や委託業務の範囲・対価の支払方法を定める契約書は第7号文書(1通4,000円。3か月以内で更新の定めのないものを除く)に当たることがあり、委任(準委任)だけを定める契約書は課税されません。電子署名した電磁的記録をメールで送る場合は課税されないとする国税庁の事例があります。迷ったら契約書案を持って税務署に相談してください。
- 無料の業務委託契約書の雛形やテンプレートをそのまま使ってもよいですか?
- そのまま使うのはおすすめしません。雛形は特定の取引を前提にしていないため、営業代行で大事な成果の定義、再委託、顧客リストなど個人情報の扱い、成果物の帰属、途中終了の精算が空欄だったり抜けていたりすることがあります。営業代行を対象にした公的なモデル契約も見当たりません。雛形を使う場合は、この記事の12項目のチェック表や無料の契約書チェックリストで抜けを埋め、実際に署名する前に弁護士に確認してもらってください。
- 営業代行はどこに頼めばよいですか?選び方は?
- 任せたい工程を担えるか、成果の定義と報告の中身を契約前に文書で示せるか、指示の窓口と再委託の扱いを説明できるかで選びます。契約書の条項を質問したときの答え方も判断材料になります。エイギョウブ(LongWave株式会社)は、ヒアリングのあとに支援計画(KPI・PL設計、体制の提案)を作成してから契約に進み、アポイント獲得だけでなく商談から成約までを一括で請け負うこともできます。料金は月額40万円〜の目安で、最低契約期間は6か月です(2026年9月時点)。
出典
- 民法 第415条・第632条・第634条・第641条・第643条・第644条の2・第648条・第648条の2・第651条・第656条(e-Gov法令検索) 確認日 2026-10-25
- 個人情報の保護に関する法律 第20条・第25条・第27条・第30条(e-Gov法令検索) 確認日 2026-10-25
- 「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A Q4-2(個人情報保護委員会、令和7年7月1日更新版) 確認日 2026-10-25
- 特定商取引に関する法律等の施行について(消費者庁・経済産業省、令和6年11月19日) 確認日 2026-10-25
- 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)(厚生労働省) 確認日 2026-10-25
- 37号告示関係疑義応答集(第1集)(厚生労働省) 確認日 2026-10-25
- 37号告示関係疑義応答集(第2集)(厚生労働省) 確認日 2026-10-25
- 37号告示関係疑義応答集(第3集)(厚生労働省) 確認日 2026-10-25
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第40条の6(e-Gov法令検索) 確認日 2026-10-25
- 東京都暴力団排除条例 第18条(東京都) 確認日 2026-10-25
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)第3条・第4条・第16条(e-Gov法令検索) 確認日 2026-10-25
- 2025年公正取引委員会フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) 確認日 2026-10-25
- 中小受託取引適正化法テキスト(公正取引委員会・中小企業庁、令和7年11月) 確認日 2026-10-25
- タックスアンサーNo.7102 請負に関する契約書(国税庁、令和8年4月1日現在法令等) 確認日 2026-10-25
- タックスアンサーNo.7104 継続的取引の基本となる契約書(国税庁、令和8年4月1日現在法令等) 確認日 2026-10-25
- タックスアンサーNo.7141 印紙税額の一覧表(国税庁) 確認日 2026-10-25
- タックスアンサーNo.7120 契約書の写し、副本、謄本等(国税庁、令和8年4月1日現在法令等) 確認日 2026-10-25
- 質疑応答事例(印紙税)「請負の意義」(国税庁、令和7年8月1日現在の法令・通達等) 確認日 2026-10-25
- 質疑応答事例(印紙税)「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」(国税庁、令和7年8月1日現在の法令・通達等) 確認日 2026-10-25
- 印紙税の手引(国税庁、令和8年6月) 確認日 2026-10-25
- 印紙税法 第2条・第20条(e-Gov法令検索) 確認日 2026-10-25
- 印紙税法施行令 第26条(e-Gov法令検索) 確認日 2026-10-25



