製造業の新規開拓は、狙う相手(業種・工程・地域)と、見積・試作の依頼をどこで受けるかを先に決め、展示会・紹介・Webで接点を作り、電話と訪問で商談にする組み合わせで考えます。手法を一つ選んで量を増やすより、接点を作る手段と商談にする手段を分け、社内で誰が受け止めるかまで決めておくほうが、名刺や問い合わせが途中で止まりにくくなります。

この記事は、既存の取引先への依存を減らしたい中小製造業の経営者・営業責任者が、新規開拓をどの手段から、どう組み合わせて始めるかを決めるために書いています。架空の事例や手法のランキングは載せず、公的統計と、社内で先に決めておくことを中心にまとめました。

この記事で分かること

  • 全国の製造業の事業所数を公的統計で確かめ、狙う相手を業種・工程・地域で絞る考え方
  • 新規開拓を始める前に社内で決める5つ(狙う業種と工程、強みの一文、見積・試作依頼の受け口、技術の質問に答える人、記録の置き場)
  • 展示会・紹介・Web・フォーム・電話・訪問を、接点を作る役と商談にする役に分けて組み合わせる方法

相手の数を公的統計で見る|製造業をひとまとめにせず、業種と工程で絞る

新規開拓の相手を「製造業の会社」とだけ決めると、リストも話の入り口も広がりすぎます。最初に、相手がどれくらいいるのかを公的統計で確かめておくと、どこまで絞り込むべきかを考えやすくなります。

経済産業省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査」によると、全国の製造業の事業所は214,719事業所(2025年6月1日現在、個人経営を含まない)で、製造品出荷額等は381兆6,540億円(2024年1〜12月の実績)です。会社の数ではなく事業所の数なので、複数の工場を持つ会社はその分だけ数に入っています。同じ会社でも、外注先を選ぶのが本社なのか工場なのかは会社ごとに違うため、リストを作る段階で確かめる必要があります。

事業所の数が多い産業中分類は次の3つです。

産業中分類 事業所数(2025年6月1日現在) 全国の製造業に占める割合(計算値)
金属製品製造業 29,549 約13.8%
食料品製造業 23,820 約11.1%
生産用機械器具製造業 22,562 約10.5%

出典: 経済産業省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査」地域別統計表 第1表(2026年7月29日公表、e-Stat掲載)。個人経営を含まない。割合は全国の事業所数214,719をもとにエイギョウブ編集部が算出(確認日 2026-09-15)。

分類の名前が同じでも、その中には作っている製品も得意な加工も違う事業所が数多く含まれます。自社の加工や部品を必要とする相手は、この分類のさらに一部です。そこで、狙う相手を次の3つで言葉にしておきます。

  • 業種: 何を作っている会社か
  • 工程: 自社の加工や部品が、相手の製造のどの工程に入るか
  • 地域: 打合せや納品で通える範囲か、遠方でも取引が成り立つ内容か

愛知県・大阪府など、地域ごとの製造業の数字は名古屋・愛知の営業代行の記事大阪の営業代行の記事で扱っています。

製造業の新規開拓で先に決めること|受け口と答える人がいないと接点が止まる

新規開拓の手段を選ぶ前に、社内で決めておくことが5つあります。展示会でも電話でも、相手が関心を持った次の段階で「図面をどこに送ればいいか」「この材質で加工できるか」と聞かれます。そこに答える仕組みがないと、せっかくの接点が止まってしまいます。

決めること 書き出す中身 決まっていないと起きやすいこと
① 狙う業種と工程 「どんな製品を作る会社の、どの工程の外注先を探している部署か」まで書く リストが広がり、電話でもメールでも話の入り口が定まらない
② 自社の強みを一文で 対応できる材質・大きさ・ロット・精度・納期のうち、選ばれる理由になるもの 「何でも対応できます」になり、今の外注先から切り替える理由が伝わらない
③ 見積・試作依頼の受け口 図面や仕様を受け取る窓口(メールアドレス・フォーム・担当者)と、返答までの目安 依頼が営業・技術者・代表の個人宛てに散らばり、返答が遅れる
④ 技術の質問に答える人 材質・公差・加工方法などの質問に、誰がいつまでに答えるか 答えられる人が既存の仕事で埋まり、商談が次に進まない
⑤ 記録の置き場 接点を持った会社、話した内容、次の予定を1か所に残す(表計算ソフトでもよい) 展示会の名刺や問い合わせが担当者の手元に残り、追いかける人がいなくなる

出典: エイギョウブ編集部作成(新規開拓を始める前の確認項目として整理。数値は含まない)

狙う相手は「業種・工程・地域」で一文にする

「自動車部品の会社」「食品工場」のような業種だけの書き方では、まだ広すぎます。自社の加工が相手のどの工程に入るのか、たとえば量産前の試作なのか、量産部品なのか、設備の保守部品なのかまで書くと、話すべき部署や相手が今どこに頼んでいるかの見当がつきます。一文にできないときは、既存の取引先がなぜ自社を選んでいるのかを、取引先ごとに書き出すところから始めると整理しやすくなります。

見積・試作の依頼をどこで受けるかを決める

製造業の新規開拓では、商談のあとに図面を受け取って見積を出す、試作を受けるという段階をはさむことがあります。この依頼の受け口が決まっていないと、展示会で知り合った担当者はメールで、Webから来た相手はフォームで、紹介の相手は代表の携帯へ、というように入口がばらばらになります。受け取る窓口を1つに決め、誰が受け取り、どれくらいの日数で一次返答をするかを社内で決めておくと、相手を待たせにくくなります。

技術の質問に答える人と、記録の置き場を決める

加工できるかどうかの質問に答えるには、現場や設計の知識が要ります。答えられる人の時間が既存の仕事で埋まっていると、新規の相手への回答が後回しになります。週のうち新規の質問に答える時間を決めておく、よく聞かれる質問と答えを資料にしておく、といった準備で負担を減らせます。あわせて、接点を持った会社と話した内容を1か所に残す場所を決めます。記録が残っていれば、担当が替わっても追いかけを続けられます。

接点の作り方と商談への渡し方|作る手段と商談にする手段を分ける

新規開拓の手段は、相手に自社を知ってもらう「接点を作る」役と、関心を持った相手を「商談にする」役に分けて考えると組み合わせやすくなります。展示会・紹介や代理店・Web・フォームは主に接点を作る役で、電話と訪問は接点を商談にする役を担います。それぞれの手段で、向く相手と社内で要る準備、次に何をするかを表にしました。

手段 向く相手 社内で要る準備 次の一手
展示会 出展テーマに関心を持って来場する相手。加工や製品を実物で見せたい相手 サンプル・展示物、名刺と会話内容の記録方法、会期後に連絡する担当 会期後に電話やメールで関心の中身を確かめ、打合せや見積依頼につなぐ
紹介・代理店 既存の取引先や商社・代理店がすでに付き合っている相手 紹介者に渡す資料、紹介してほしい相手の条件、代理店との担当範囲の取り決め 紹介者から聞いた課題をもとに、初回の打合せを設定する
Web問い合わせ 自分で外注先や部品の調達先を探している設計・購買の担当者 対応できる加工・材質・設備の掲載、図面を受け取れる問い合わせ窓口 すぐ見積に進む相手と、情報を送り続ける相手に分けて対応する
フォーム営業 まだ自社を知らない会社のうち、狙う業種・工程に当てはまる相手 送る相手の条件、短い案内文、反応があったときに受ける人 反応があった会社に電話で確認し、資料送付や打合せにつなぐ
電話 リストで絞った相手、展示会やフォームで接点を持った相手 最初に伝える強みの一文、よくある技術の質問への答え方 担当部署と困りごとを確かめ、訪問またはオンラインの打合せを設定する
訪問 図面や現物を見ながら話したい相手、打合せに通える地域の相手 持参するサンプルや加工例の資料(公開してよい範囲)、図面の持ち帰り方 受け取った図面や仕様を、見積・試作依頼の受け口に渡す

出典: エイギョウブ編集部作成(手段ごとの役割と準備の整理。数値は含まない)

手段ごとの進め方は、それぞれの記事で詳しく扱っています。展示会の準備から会期後の追いかけまでは展示会営業の進め方にまとめました。紹介や代理店に頼る場合は、売る権利を渡すのか営業活動を任せるのかで、顧客や商談の記録が自社に残るかどうかが変わります。この違いは代理店と営業代行の違いで整理しています。

Webから来た問い合わせのうち、すぐには見積に進まない相手を追いかける方法はリードナーチャリングの基本を、フォーム営業を外に頼むときの課金の単位や法律上の注意はフォーム営業代行の費用と進め方を参照してください。電話や手紙で事前の接点を作ってから会いに行く進め方と、法人への飛び込みが成り立つ条件は法人への飛び込み営業で扱っています。製造業に限らない一般的な手法の比較は、中小企業の新規開拓営業の方法の比較にあります。

組み合わせは「接点を作る手段1つ+商談にする手段1つ」から始める

最初からすべての手段に手を広げると、名刺・問い合わせ・フォームの反応が別々の場所に届き、受け口と記録の置き場が追いつかなくなります。はじめは、狙う相手に合う接点づくりを1つ選び、電話か訪問で商談にする流れを1本だけ作るほうが、どこで止まっているのかを見つけやすくなります。たとえば、出展テーマが自社の加工と合う展示会に出るなら「展示会+会期後の電話」、自社を知らない相手を広く当たるなら「フォーム営業+反応があった会社への電話」という組み合わせです。

一定の期間を回したら、接点を持った数、打合せになった数、図面や仕様を受け取った数を記録から数え、どこで止まっているかを確かめます。接点は増えたのに打合せにならないなら強みの一文や電話の入り口を、打合せはできるのに図面が来ないなら技術の質問への答え方や受け口を見直します。止まっている箇所が分かってから、手段を足すかどうかを決めます。

小規模な会社ほど、開拓に回せる人手が足りない

新規開拓の手段と社内の準備が決まっても、実際に動く人の時間がなければ進みません。中小企業庁「2026年版 小規模企業白書」の第1-1-13図では、小規模事業者(n=9,915)が最も重視する経営課題として「受注・販売の拡大」を挙げた割合が36.6%で、項目の中で最も高くなっています。次いで高いのが「人材確保」の16.7%です。中規模企業(n=8,876)では「人材確保」が44.7%で最も高く、「受注・販売の拡大」は29.0%でした。

この調査は製造業に限ったものではありません。帝国データバンクとデロイト トーマツが2025年11〜12月に行ったWebアンケートを、白書が企業規模別にまとめた結果です。製造業だけの割合は示されていないため、読み取れるのは「小規模な会社では、売上を広げることを最も重い課題と見ている割合が高い」というところまでです。

代表や工場長、技術担当が営業を兼ねている会社だと、新規開拓は「既存の仕事が落ち着いたらやる仕事」に回されがちです。時間を作る方法は、大きく分けて3つあります。

  • 仕組みに寄せる: 対応できる加工や設備をWebに載せ、よくある質問と答えを資料にして、問い合わせのたびに一から説明しなくて済むようにする
  • 時間を先に確保する: 週のうち新規開拓と新規の質問への回答にあてる時間を決め、既存の仕事と同じように予定に入れる
  • 人を足す: 営業の担当者を採用する、または電話やフォームなど手を動かす量が多い工程を外部に頼む

どの方法を選んでも、前の章で決めた受け口と技術の質問に答える人は社内に残ります。人を足す前に、その2つが回るかどうかを確かめておきます。

外に出すなら、社内に残す工程を先に決める

接点づくりや商談の設定を外部に頼む場合も、考え方は同じです。一般的には、リストづくり、電話やフォームでの初回の接点、打合せの日程調整は外に出しやすく、図面の読み取り、見積、価格や納期の判断は社内に残す分け方になります。外部に頼んだ活動で分かった相手の反応や断られた理由も、自社の記録の置き場に戻してもらう取り決めをしておくと、次に選ぶ手段を判断しやすくなります。

製造業で外部に任せる工程の線引き、成果の数え方、費用の考え方は製造業の営業代行の記事で詳しくまとめています。

エイギョウブでできること

エイギョウブは、LongWave株式会社が運営する営業支援サービスです。総合のエイギョウブの実行支援メニューには、電話営業(BDR/SDR)、フォームDM(1日最大500件のアプローチ)、SNS運用(LinkedIn)、交流会・展示会、即戦力人材アサイン(最短数日で稼働)、マルチチャネルがあります。アポイント獲得だけでなく、商談から成約までを一括で請け負うこともできます。

建材メーカーの支援事例では、大手ハウスメーカー・元請けへの販路を再構築するため、テレアポと訪問を組み合わせ、稼働初月から有力な元請けとの接点を作りました。商談獲得数は従来比で約10倍です。これはサービスページに掲載している支援事例で、数値は対象期間や条件により異なります。

総合のエイギョウブは、ヒアリングのあとに支援計画(KPI・PL設計、体制の提案)を作成し、契約、アサイン・稼働開始の順に進みます。料金は月額の目安でトライアル30万円〜(税別)、標準50万円〜(税別)で、支援範囲・体制に応じて提案します。見積・試作依頼の受け口や技術の質問に答える人を社内に残したい場合は、その前提をヒアリングで伝えておくと、任せる範囲を決めやすくなります。

まとめ

手段を選ぶ前に、狙う相手と、関心を持った相手を受け止める社内の仕組みを決めておくことが、製造業で新規開拓を始めるときの土台になります。要点を4つにまとめます。

  • 製造業をひとまとめにせず、同じ分類の中にも作るものや加工が違う相手が含まれることを前提に、業種・工程・地域で狙う相手を一文にする
  • 狙う業種と工程、強みの一文、見積・試作依頼の受け口、技術の質問に答える人、記録の置き場の5つを先に決める
  • 展示会・紹介や代理店・Web・フォームで接点を作り、電話と訪問で商談にする。はじめは接点づくり1つと商談にする手段1つの組み合わせから始め、止まっている箇所を記録で確かめる
  • 人手が足りないときは、仕組みに寄せる・時間を先に確保する・人を足すの3つから選び、外に出す場合も受け口と技術回答は社内に残す

どの組み合わせから始めるかは、狙う相手と社内で割ける時間によって変わります。まず5つの決めごとを書き出し、足りない部分がどこかを確かめてください。

よくある質問(FAQ)

製造業の新規開拓は何から始めればよいですか?
狙う相手を業種・工程・地域で一文にし、見積・試作の依頼を受ける窓口と、技術の質問に答える人を決めるところから始めます。手段を先に選ぶと、名刺や問い合わせが集まっても受け止める人がいないまま止まりやすくなります。受け口と答える人が決まったら、狙う相手に合う接点づくりの手段を1つ選び、電話か訪問で商談にする流れを1本作ります。一定の期間を回してから、止まっている箇所を記録で確かめ、手段を足すかどうかを決めます。
製造業の新規開拓に飛び込み営業は向いていますか?
事前の接点がない訪問だけに頼るより、電話・フォーム・手紙などで接点を作ってから訪問するほうが進めやすくなります。受付で用件を伝えただけでは、外注先の選定や図面を扱う担当者につながらないことがあるためです。一方で、図面や現物を見ながら話したい相手、打合せに通える地域の相手には、訪問が商談を進める手段になります。訪問を「接点を作る手段」ではなく「接点を商談にする手段」として位置づけると、組み合わせを考えやすくなります。
展示会だけで新規開拓は足りますか?
展示会は接点を作る手段なので、会期後に連絡して商談にする工程が別に必要です。名刺を集めても、会期後に誰が、いつまでに、どの順で連絡するかが決まっていなければ、関心を持った相手を逃しやすくなります。また出展できる回数には限りがあるため、会期と会期の間の接点をWebの問い合わせや紹介、フォーム営業で補う組み合わせも考えます。展示会で集めた名刺と会話内容は、ほかの手段で得た接点と同じ置き場に記録します。
製造業の新規開拓を営業代行に任せられますか?
リストづくり、電話やフォームでの初回の接点、打合せの日程調整などは外部に任せやすい工程です。図面の読み取り、見積、価格や納期の判断は、技術と責任を持つ社内の人が担う分け方が一般的です。任せる場合は、どの工程までを頼むのか、何をもって成果と数えるのか、相手の反応や断られた理由をどう記録として受け取るのかを、発注前に決めておきます。社内に見積・試作依頼の受け口と技術の質問に答える人がいることが前提になります。

出典

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