支社や営業所を出す前に、地方・他県へ営業する方法は、本社からの出張、電話・フォーム・オンライン商談、現地で動ける営業代行、代理店、現地の人材の5つを、「受注までに顧客と会う回数」と「顧客と記録を自社に残せるか」で比べて選びます。対面が必要な回数が少ないうちは拠点を持たずに試し、商談が続く地域が見えてから、その地域だけ拠点を検討する順番が進めやすい方法です。この記事は、東京や地方の本社から他県の顧客を開拓したいものの、支社を出すかどうか迷っているBtoB企業の経営者・営業責任者のために書いています。

この記事で分かること

  • 拠点を持たずに他県へ営業する5つの選択肢と、それぞれが向く場面・費用の形・記録の残り方
  • どれを選ぶかを決める4つの基準(対面の必要回数、見込み先の数と密度、立ち上げの速さ、記録と顧客の持ち主)
  • 支社を出す場合と比べるときの費用の見方と、現地の人に頼むときに気をつける指示の出し方

拠点を持たずに他県へ営業する5つの選択肢|会う回数と記録の残り方が違う

他県の顧客を開拓する方法は、「支社を出すか、出さないか」の二択ではありません。拠点を持たないまま使える方法は大きく5つあり、どれも顧客に会える回数と、営業の記録がどこに残るかが違います。まずは5つを並べて、自社の商材に合いそうなものを絞り込みます。

選択肢 向く場面 費用の形 顧客と記録が自社に残るか
① 本社からの出張 見込み先が特定の都市にまとまっていて、会う回数が少なくて済む。自社の社員が商談に出たほうが話が進む 交通費・宿泊費と、移動に使う社員の時間 残る。自社の社員が直接会うため
② 電話・フォーム・オンライン商談 画面越しの説明で商材が伝わる。見込み先が広い範囲に散らばっている 担当者の人件費とツールの利用料。外に出すなら営業代行の料金 社内で行えば残る。外に出すなら、報告の項目と受け取り方を契約で決める
③ 現地で動ける営業代行 訪問や対面の説明が必要だが、社員を置くほどの商談が続くかはまだ分からない 固定報酬・成果報酬・複合の料金と、訪問にかかる交通費の扱い 契約で決めれば残せる。訪問先ごとの記録と顧客情報の扱いを先に決める
④ 代理店 その地域の顧客網をすでに持つ相手に売ってもらう 売れた分の手数料や卸値の差になりやすい 相手の顧客網で売るため、顧客との接点は相手側に残りやすい
⑤ 現地の人材(採用・個人への業務委託) その地域で長く営業を続ける前提があり、育成や管理に手をかけられる 雇うなら採用費と人件費。個人に委託するなら報酬 雇うなら残る。個人への委託は、記録の渡し方を契約で決める

出典: エイギョウブ編集部作成(拠点を持たずに営業する方法の整理。数値は含まない)

5つは、どれか1つを選ぶものではなく、組み合わせて使えます。たとえば、電話やオンライン商談で見込み先を絞り、会う価値のある商談だけを出張や現地の営業代行で訪問する形です。こうすると、移動の回数を抑えながら、対面が必要な場面では顔を合わせられます。

代理店と営業代行は、表だけでは違いがつかみにくい組み合わせです。売る権利を渡すのか営業活動を任せるのか、地方へ広げるときにどちらを選ぶかは代理店と営業代行の違いと、地方へ広げるときの選び方で整理しています。

選ぶときの4つの基準|対面の回数・見込み先の密度・立ち上げの速さ・記録の持ち主

5つの選択肢のどれが合うかは、商材と対象の地域によって変わります。次の4つの基準を順に確かめると、候補を2つか3つに絞りやすくなります。

① 受注までに対面が必要な回数

最初に確かめるのは、受注までに顧客と何回会う必要があるかです。初回の説明はオンラインで済むのか、現場の確認や実物の説明が必要なのか、契約のときに対面が求められるのかを、これまでの商談を振り返って書き出します。会う回数が少なければ出張やオンライン商談で足ります。訪問が何度も続く商材なら、現地で動ける営業代行や現地の人材が候補になり、それでも回らないほど商談が続くようになった段階で拠点を考えます。

② 見込み先の数と、まとまり具合

対象の地域に見込み先が何社あり、それが1日で回れる範囲にまとまっているかも判断を分けます。特定の都市に集まっているなら、出張の日程をまとめたり、訪問を営業代行に任せたりしやすくなります。県内や地方全体に散らばっているなら、先に電話・フォーム・オンライン商談で関心のある相手を絞り、会う相手を決めてから動くほうが移動のむだを減らせます。

③ 立ち上げの速さ

支社を出す場合や現地で人を雇う場合は、物件を探し、人を採り、仕事を覚えてもらうまで営業が本格的に始まりません。出張、オンライン商談、営業代行は、準備が整えば比較的早く動き出せます。他県で売れるかどうかをまだ確かめていない段階なら、早く始められる方法で反応を見て、その結果を拠点を出すかどうかの材料にするほうが判断を誤りにくくなります。

④ 記録と顧客の持ち主

見落としやすいのが、誰に会い、何を話し、なぜ断られたかという記録と、顧客との関係が、方法を切り替えたあとも自社に残るかどうかです。この記録は、後から支社を出すかどうかを決めるときの根拠そのものになります。社員が動く方法なら記録は社内に残りますが、外部に頼む場合は、報告してもらう項目、顧客情報の受け渡し、契約が終わったときの扱いを、依頼の前に決めておきます。

基準 拠点なしで試しやすい状態 拠点を検討する状態
対面の必要回数 初回や途中の説明をオンラインで済ませられ、会うのは要所だけ 訪問が何度も続き、出張や外部への依頼では回らない
見込み先の数と密度 見込み先がまだ少ない、または散らばっている 1つの地域に商談の続く相手がまとまっている
立ち上げの速さ 他県で売れるかをまだ確かめていない 反応を確かめ終え、腰を据えて続ける判断ができている
記録と顧客の持ち主 外部に頼んでも、報告と顧客情報を自社で受け取る約束ができる 顧客との関係を社員が直接持ち続ける必要がある

出典: エイギョウブ編集部作成(判断の目安の整理。数値は含まない)

費用の見方|金額より先に「費用の形」を並べる

支社を出す場合と拠点を持たない方法とでは、お金のかかり方が違います。総額だけを比べると、毎月続く費用と一度きりの費用、やめれば止まる費用とやめても残る費用が混ざってしまうため、まずは選択肢ごとに「何に、どういう形でかかるか」を並べてから金額を当てはめます。

出張は、交通費に移動の時間を足して見る

出張の費用は交通費と宿泊費だけで見積もりがちですが、移動に使う社員の時間も費用として数えます。移動している間、その社員は商談も社内の仕事もできません。遠方ほど、1回の出張で会える件数と、移動に取られる時間の釣り合いを確かめておくと、出張を続けるか別の方法に切り替えるかを判断しやすくなります。

営業代行は、料金体系と交通費の扱いを確かめる

営業代行の固定報酬型は、営業担当者1人あたり月50万〜60万円程度とするメディアが多くなっています(Sales Marker、PRONIアイミツほか。税区分の記載なし)。訪問営業の代行については、固定報酬型で月50万〜60万円、成果報酬型で成約売上の30〜50%とする比較メディアもあります(比較ビズ。税区分の記載なし)。ただし、成約時の比率は媒体によって幅があり、定まった相場はありません。他県での訪問を含めて頼む場合は、訪問先までの交通費が料金に含まれるのか別に請求されるのかを、見積もりの段階で確かめてください。

支社は、家賃・人件費・採用費が並ぶ

支社や営業所を出すと、事務所の家賃と常駐する社員の人件費が毎月かかり、人を集めるたびに採用費もかかります。どれも、その地域で商談が続かなかったとしても、すぐには止められない費用です。拠点なしの方法で試した結果を見てから検討すれば、こうした費用をかける地域を絞り込めます。

料金体系ごとの目安と、費用対効果の見極め方は営業代行の費用相場と費用対効果の見極め方で詳しく扱っています。販路を広げる費用に公的な支援制度が関係するかは、販路開拓の支援制度と営業代行で整理しています。

地方・他県で営業代行を使う前に知る、地域ごとの事情|地域別の記事

同じ「他県への営業」でも、地域によって産業の構成や移動のしやすさが違います。開拓したい地域が決まっている場合は、次の記事で地域ごとの事情と頼み方を確かめてください。

  • 福岡: 福岡の営業代行で、九州での新規開拓と、福岡の会社が東京・大阪へ広げる方法を扱っています。
  • 大阪: 大阪の営業代行で、関西の販路を拠点を出す前に試す進め方を扱っています。
  • 東京: 東京の営業代行で、地方の会社が拠点を持たずに首都圏を開拓するテスト営業の設計を扱っています。
  • 名古屋: 名古屋の営業代行で、愛知の製造業を開拓するときの進め方と訪問を含めた費用の見方を扱っています。
  • 広島: 広島の営業代行で、元請け・メーカーの開拓と、広島の会社が他県へ広げる進め方を扱っています。
  • 千葉: 千葉の営業代行で、東京とまたがる商圏で頼むときの進め方を扱っています。

IT・SaaSの商材で、地方の中小企業への訪問をオンライン商談と組み合わせたい場合は、IT・SaaS企業の営業代行が参考になります。

現地の人に頼むときの注意|指示の出し方と取引条件の明示

拠点を持たずに他県で営業すると、現地で動く人と本社の担当者が離れているため、つい本社から直接細かく指示を出したくなります。ここで気をつけたいのが、指示の出し方と、個人に頼むときの取引条件の伝え方です。

営業代行会社のスタッフには、直接指示を出さない

厚生労働省の疑義応答集では、営業を請け負ったスタッフからの問い合わせに発注者が業務に必要な範囲で情報を提供するだけなら直ちに労働者派遣事業とはされない一方、発注者が顧客への営業上の対応方針などをスタッフに直接指示している場合は労働者派遣事業と判断されるとしています。訪問の進め方を変えてほしいといった要望は、スタッフ本人ではなく、受注した営業代行会社に伝える形にしておきましょう。

個人に頼むなら、取引条件を書面やメールで伝える

現地の営業フリーランスなど個人に業務委託をする場合は、委託したら直ちに、業務の内容・報酬の額・支払期日などを書面または電子メールなどの電磁的方法で明示する義務があり、この義務は従業員のいない発注者にもかかります(フリーランス・事業者間取引適正化等法 第3条)。契約形態の選び方や偽装請負と判断される指示の例は、営業を業務委託で頼む方法で詳しく説明しています。

エイギョウブで頼める範囲

エイギョウブは、LongWave株式会社が運営する営業支援サービスです。会社概要に載っている所在地は、本社(東京都千代田区麹町1丁目8-1 THE GATE HANZOMON)と福岡支社(福岡県福岡市中央区天神2-2-12 T&Jビルディング7F)です。

営業のチャネルとして、電話・DM・SNS・訪問・手紙・紹介・交流会の7以上をサービスページに掲げています。訪問営業については800人規模の訪問営業部隊を持っており、サービスページの表記は「累計800人規模の部隊」です。支援事例には、高校採用を強化したい上場企業の依頼で、全国の高校を訪問し、進路指導の担当者との接点を継続的に構築したものがあります。

ただし、都市や地域ごとの対応の可否と、その地域で稼働できる人数は、公開しているページに記載がありません。開拓したい地域と、訪問が必要かどうかをお伝えいただき、お見積り時に確認してください。

まとめ|会う回数が少ないうちは拠点なしで試す

他県の顧客を開拓するときは、支社を出すかどうかを最初に決めるのではなく、拠点を持たずに使える方法から比べます。要点は次のとおりです。

  • 拠点を持たない方法には、本社からの出張、電話・フォーム・オンライン商談、現地で動ける営業代行、代理店、現地の人材の5つがあり、組み合わせても使えます。
  • 選ぶ基準は、受注までに対面が必要な回数、見込み先の数とまとまり具合、立ち上げの速さ、記録と顧客の持ち主の4つです。
  • 費用は総額より先に形で並べます。出張は移動の時間を、営業代行は交通費の扱いを足し、支社は家賃・人件費・採用費が続く点を踏まえて比べます。
  • 現地で動く人に頼むときは、要望を営業代行会社のスタッフ本人ではなく会社側に伝え、個人へ委託するなら取引条件を書面やメールで伝えます。

対面が必要な回数が少ないうちは拠点なしで反応を確かめ、商談が続く地域が見えたら、その地域に絞って拠点を検討してください。

よくある質問(FAQ)

東京の営業代行会社に地方の営業を頼めますか?
頼めるかどうかは、会社の所在地よりも、その会社が対応できる地域と、訪問が必要かどうかで決まります。電話・フォーム・オンライン商談が中心の依頼なら、代行会社の所在地による違いは出にくくなります。訪問を含む場合は、その地域で動ける人がいるか、交通費を料金に含めるのか別に請求するのかを、見積もりの段階で確かめてください。地域ごとの事情は、福岡・大阪・名古屋・広島などの地域別の記事で整理しています。
出張と現地の営業代行はどう比べればよいですか?
受注までに会う回数と、費用の形で比べます。出張は交通費と宿泊費に加えて移動に使う社員の時間がかかり、営業代行は固定報酬や成果報酬などの料金に、訪問時の交通費の扱いが加わります。会う回数が少なく、自社の社員が商談に出たほうが話が進む段階なら出張が向きます。訪問が続き、社員の時間が足りなくなってきたら営業代行を検討し、その際は訪問の記録を自社で受け取れるよう契約で決めておきましょう。
オンラインだけで地方の新規開拓はできますか?
商材によってはできます。画面越しの説明で内容が伝わり、見積もりや契約の手続きもオンラインで済む商材なら、拠点を持たずに進めやすくなります。一方、現場の確認や実物の説明が必要な商材や、対面での説明を求める相手には、オンラインだけでは商談が進みにくいことがあります。その場合は、電話やオンライン商談で関心のある相手を絞り、会う必要がある商談だけ出張や訪問を組み合わせる形が現実的です。
代理店と営業代行はどちらがよいですか?
顧客と営業の記録を自社に残したいか、相手がすでに持つ顧客網に乗って売りたいかで分かれます。どちらが一律によいとは言えず、商材や価格を自社で決めたいか、地域での信用をどう得たいかによっても変わります。売る権利を渡すのか営業活動を任せるのかという違いと、地方へ広げるときの選び方は、代理店と営業代行の違いで詳しく整理しています。

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