不動産の仕入れ営業は、仲介会社・所有者・金融機関や士業からの紹介・自社への反響の4つの経路を持ち、経路ごとに記録の項目と次に連絡する日を決めて進めます。外に任せるなら接点づくりまでにとどめ、媒介に当たる行為は免許を持つ自社で行うのが基本です。この記事は、土地や建物の仕入れの経路を増やしたい不動産会社の経営者・仕入れ責任者のために、どの経路で誰と接点を作り、どこまでを外部の営業支援に頼めるかを整理したものです。仕入れ営業の仕事に就きたい方向けの年収や働き方の話、投資用物件の販売や査定の進め方は扱いません。

この記事で分かること

  • 仲介会社・所有者・紹介・反響という仕入れの4つの経路と、経路ごとに最初に作る接点
  • 仲介会社への営業と、所有者への手紙・電話・訪問をどの順番で組むか
  • 仕入れ営業を外に任せるとき、宅建業法の条文から考える「任せやすい工程」と「自社に残す工程」

仕入れの4つの経路|誰から情報が来るかで分ける

仕入れ営業を見直すときは、情報がどの経路から来ているかを分けて見るところから始めます。仲介会社から来る情報と、所有者本人から来る相談では、接点の作り方も、次に取るべき行動も違います。まず、自社の仕入れ情報を次の4つの経路に分けてみてください。

経路 相手 最初に作る接点 記録しておくこと
仲介会社 売却の依頼を受けている仲介会社の担当者 自社の仕入れ条件を伝える訪問や面談 担当者名、伝えた条件、もらった情報と回答した日
所有者 土地・建物を持っている個人や法人 手紙で用件と連絡先を伝える 所在を知った経緯、送った日、反応の有無、連絡を望まない意向
金融機関・士業の紹介 相続や事業の整理で不動産の相談を受ける立場の人 自社が扱える物件と、紹介を受けたあとの動き方を説明する面談 紹介者、紹介を受けた日、紹介者への報告の有無
自社への反響 自社サイトや看板を見て連絡してきた所有者 問い合わせへの最初の返答 問い合わせの入口、受けた日時、最初に返答した日時

出典: エイギョウブ編集部作成(仕入れの経路の整理。件数・割合などの数値は含まない)

4つの経路のうち、仲介会社と所有者は自社から動いて接点を作る経路で、紹介と反響は相手から情報が来るのを受け止める経路です。自社から動く経路は、動いた分だけ接点が増えやすい一方で、動きを止めると情報が細りやすくなります。相手から来る経路は、普段の関係づくりや返答の速さで差がつきます。

どの経路がどれくらいの仕入れにつながるかは、エリアや物件の種類、会社の知名度によって大きく変わり、一般に使える割合の統計は見当たりません。自社の過去の仕入れを経路ごとに数え直すところから始めるのが着実です。

仲介会社への営業|仕入れ条件を具体的に渡し、返答を早く返す

仲介会社は、売却の依頼を受けた物件を、条件に合う買い手に先に紹介することがあります。そのときに名前が思い浮かぶ会社になるには、何を探しているかが担当者にすぐ伝わり、情報を渡したときに反応が返ってくる相手であることが大切です。

訪問先を決めるときの考え方

やみくもに回るより、自社が仕入れたいエリアで売買の仲介を扱っている会社を先に並べ、既に付き合いがある会社と、まだ接点がない会社に分けて順番を決めます。訪問先のリストを作るときの条件の決め方は、訪問営業リストの作り方で整理しています。仕入れ営業の場合は、会社の規模よりも、自社が狙うエリアと物件の種類を扱っているかを優先して見ると、話が具体的になりやすくなります。

担当者に渡す仕入れ条件とトーク

仲介会社の担当者に「何かいい物件があれば」と伝えるだけでは、どの情報を回せばよいか判断できません。エリア、物件の種類、広さの目安、価格帯、購入を決めるまでにかかる期間、現況のままでよいかどうかなど、自社の条件を1枚にまとめて渡しておくと、担当者が情報を思い出しやすくなります。

面談での伝え方は、たとえば「○○駅から徒歩圏で、○○平米前後の土地を探しています。建物が残っている状態でも検討できます。情報をいただいたら、○日以内に買うかどうかのお返事をします」のように、条件と返答の約束をセットにします。ここで約束した日数は、実際に社内で守れる日数にしてください。守れない約束をすると、次から情報が回ってきにくくなります。

情報をもらったあとの返し方

仲介会社との関係は、紹介を受けた物件にどう返すかに大きく左右されます。見送る場合も、価格・広さ・形状など何が合わなかったのかを添えて返すと、担当者は次に回す情報を選びやすくなります。訪問のあとに何日目に何を送るかの組み立ては、訪問営業後のフォロー方法の考え方を仕入れ営業にも使えます。

所有者への接点づくり|手紙、電話、訪問の順に進める

所有者に直接声をかける仕入れ営業では、相手がまだ売ることを考えていない場合もあります。いきなり訪問したり電話したりするより、手紙で用件を伝え、相手が話を聞いてもよいと思える状態を作ってから、電話や訪問に進むほうが無理のない順番です。

手紙で伝えること

手紙には、誰が、何のために連絡しているのかを最初に書きます。自社の会社名と担当者名、その土地や建物に関心を持った理由、所在を知った経緯、連絡先、連絡を望まない場合の伝え方を入れておくと、受け取った人が不安を持ちにくくなります。売却を急がせる言い回しや、相手の事情を決めつける書き方は避けてください。

所有者の氏名や住所を登記簿などで調べて手紙を送る場合は、個人情報の扱いにも注意が必要です。個人情報保護委員会のQ&Aは、登記簿等で公開されている情報でも個人情報であることに変わりはなく、取得するなら利用目的の特定が必要だとしています。また個人情報保護法は、個人情報を取得したときは、利用目的をあらかじめ公表している場合を除き、速やかに本人に通知するか公表することを求めています。仕入れの連絡に使うという利用目的を社内で決め、プライバシーポリシーなどで公表しておきましょう。

電話は反応があった相手から

手紙を読んで連絡をくれた人や、以前から連絡先を知っている所有者には、電話で面談の日程を相談します。電話では、手紙を送ったことと、今日は日程の相談だけであることを先に伝え、価格の話は面談の場に回します。電話で「もう連絡しないでほしい」と言われたら、その意向を記録に残し、手紙も含めて以後の連絡を止めます。

飛び込みの訪問をどう位置づけるか

約束のない飛び込みの訪問は、相手が不在だったり、話を聞く準備ができていなかったりすることがあり、所有者にとっては突然の来訪になります。訪問するなら、手紙を先に送っておき、訪問の目的を短く伝えて名刺と資料を置いて帰るくらいにとどめると、次の連絡につなげやすくなります。落ち着いて話を聞いてもらうのは、相手の都合を聞いて約束した面談の場にしてください。

所有者へメールで連絡する場合の文面と注意点は、新規開拓の営業メールで扱います。

記録と追いかけ方|経路ごとに「次に連絡する日」を決める

仕入れ営業では、接点を作ってから実際に物件の話になるまでに時間がかかります。所有者の気持ちが変わるきっかけは、相続や住み替えなど相手の事情によるもので、こちらからは時期を決められません。だからこそ、接点を作った相手を記録に残し、忘れずに連絡を続ける仕組みが必要です。

記録に残す項目

記録は、経路・相手・最初に接点を作った日・最後に連絡した日・次に連絡する日・担当者・物件の条件の7項目から始めると続けやすくなります。特に「次に連絡する日」が空欄の相手は、そのまま忘れられやすくなります。1件ごとに次の連絡日を必ず入れる運用にすると、担当者が変わっても引き継げます。表計算ソフトでも管理できるので、専用のツールを入れる前に項目をそろえるところから始めてください。

連絡の間隔と中身を決める

毎回同じ用件で連絡すると、相手には催促に聞こえます。仲介会社には探している条件が変わったときの知らせを、所有者には周辺の取引の動きなど相手の判断材料になる情報を、紹介者には紹介を受けた件の進み具合を届けるように、経路ごとに連絡の中身を変えます。見込みの低い相手とも関係を切らずに情報を届け続ける考え方は、リードナーチャリングの基本で詳しく説明しています。

紹介者との関係で気をつけること

金融機関や士業から紹介を受けたときは、結果がどうなったかを紹介者に報告するところまでを記録の対象にします。紹介のお礼を金銭で渡す形は、相手の立場によって注意が必要です。弁護士と司法書士は、依頼者を紹介したことへの対価の受け取りが会規で禁じられています。個々のやり取りが当たるかは個別に判断されるため、謝礼を仕組みにする前に相手に確認してください。

外に任せる範囲と宅建業法|接点づくりまでを外に、媒介に当たる行為は自社に

仕入れ営業の人手が足りないとき、リスト作成や手紙の発送、電話での日程調整を外部の営業支援に任せられるかを考えることもあるでしょう。ここで押さえておきたいのが宅地建物取引業法です。

条文で確かめられること

宅建業法は、宅地・建物の売買や交換、またはその売買・交換・貸借の代理や媒介を業として行うことを宅地建物取引業と定め、営むには国土交通大臣か都道府県知事の免許が必要としています。免許なしで営むと、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方の対象です。「業として」に当たるかについて、国土交通省は、取引の対象者・目的・物件の取得経緯・取引の態様・反復継続性などを総合的に勘案して判断するとしています。

一方で、アポイント獲得や集客などの営業支援が、どこから「媒介」に当たるかを示した国土交通省の資料は、確認した範囲では見つかりませんでした。そのため、この記事では「アポ取りだけなら免許はいらない」とは書きません。実態で判断されるという前提で、工程を分けて考えます。

工程 分け方 根拠・考え方
仕入れ条件と対象エリアの決定 自社に残す 何を買うかは自社の経営判断で、外の担当者が話す内容の土台になるため
仲介会社・所有者の見込み先リストの作成 任せやすい(個人情報の利用目的は自社で決める) 登記簿等で公開されている情報も個人情報で、取得するなら利用目的の特定が必要(個人情報保護委員会Q&A 2-4)
手紙の発送、電話での面談日程の相談 任せやすい(物件の価格や条件には触れない) アポ獲得や集客がどこから媒介に当たるかの国交省の資料は見つからず、実態で判断される(宅建業法2条2号・3条1項)
物件情報の受け取りと検討 自社に残す 買うかどうかの判断と返答は、仲介会社との関係そのものに関わるため
価格・条件の提示と交渉 自社に残す 売買の代理や媒介を業として行うには免許が必要(宅建業法2条2号・3条1項)
契約・決済 自社に残す 売買の当事者または免許を持つ宅建業者として自社が行う

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(2026-04-01施行版)、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和8年4月1日施行版)、個人情報保護委員会「『個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン』に関するQ&A」(令和7年7月1日更新版)。いずれも2026-09-15確認。表は工程の分け方の目安で、法令上の安全な範囲を示すものではありません

自社が関わっていれば大丈夫、ではない

「免許を持つ自社が依頼しているのだから、外の担当者が条件の取り次ぎまでしても問題ない」と考えるのは誤りです。国土交通省の解釈・運用の考え方は、免許を受けていない者が業として行う取引に宅建業者が代理や媒介で関与しても、その取引は無免許事業に当たり、関与した宅建業者も監督処分の対象になるとしています。また宅建業者は、自分の名義で他人に宅建業を営ませることを禁じられています。外の担当者が所有者と話すときの名乗り方と、話してよい範囲を事前に文章で決めておきましょう。

物件や価格の質問が出たら自社に引き継ぐ

工程を分けても、電話の途中で所有者から「いくらで買ってもらえるのか」と聞かれることはあります。そのときは外の担当者が答えず、「担当から改めてご連絡します」と伝えて自社に引き継ぐ流れを台本に入れ、引き継いだ内容を報告の項目にも加えます。不動産の営業代行全体での宅建業法の論点は、不動産の営業代行と宅建業法の線引きで詳しく整理しています。自社の依頼内容が免許の必要な行為に当たるか迷うときは、発注の前に弁護士や免許を所管する窓口に確認してください。

エイギョウブ for 不動産に相談する場合|仕入れ営業の支援可否は見積り時に確認する

LongWave株式会社は、不動産業界向けの営業支援サービスとして「エイギョウブ for 不動産」を運営しています。サービスページに載っている進め方は、無料相談、営業設計・計画作成、契約、キックオフMTG、稼働開始、週次定例・改善の順です。総合のエイギョウブと訪問営業のサービスページには、電話・DM・SNS・訪問・手紙・紹介・交流会の7以上の営業チャネルを掲載しています。

ただし、サービスページに掲載している不動産業界の支援実績は、不動産会社を顧客にする企業の新規開拓で、不動産会社の仕入れ営業の事例ではありません。仕入れ営業のどの工程を支援できるかは、対象エリア、接点を作りたい相手、自社に残す工程の分け方を伝えたうえで、お見積りの際に確認してください。

料金は月額の目安で、トライアル20万円〜/月、標準40万円〜/月(いずれも税別)です。支援範囲・体制に応じて提案する形で、上位のプランは個別見積りです。

まとめ|経路を分け、記録を残し、媒介に当たる行為は自社で持つ

不動産の仕入れ営業を立て直すときは、情報の経路を分けることから始めます。要点は次のとおりです。

  • 仕入れの経路は、仲介会社・所有者・金融機関や士業の紹介・自社への反響の4つに分け、経路ごとに最初に作る接点と記録の項目を決めます。
  • 仲介会社には、エリア・物件の種類・価格帯などの仕入れ条件を1枚にまとめて渡し、紹介を受けた情報には理由を添えて早く返します。
  • 所有者には手紙で用件を伝え、反応があった相手から電話、約束した面談へと進めます。登記簿などで調べた氏名や住所も個人情報で、利用目的の特定が必要です。
  • 接点を作った相手には、1件ごとに次に連絡する日を決め、経路ごとに連絡の中身を変えます。
  • 外に任せるなら接点づくりまでにし、価格・条件のやり取りと契約は免許を持つ自社に残します。アポ獲得がどこから媒介に当たるかを示した国交省の資料はなく、実態で判断されます。

よくある質問(FAQ)

不動産の仕入れ営業を成功させるコツは何ですか?
仕入れ情報が来る経路を、仲介会社・所有者・金融機関や士業の紹介・自社への反響の4つに分けて、経路ごとに接点の作り方と記録を決めることです。どの経路が仕入れにつながりやすいかはエリアや物件の種類で変わり、一般に使える割合の統計は見当たりません。自社の過去の仕入れを経路ごとに数え直し、接点を作った相手には1件ごとに次に連絡する日を入れる運用にすると、担当者が変わっても追いかけが止まりにくくなります。
仲介会社から物件情報をもらうにはどうすればよいですか?
何を探しているかが担当者にすぐ伝わり、情報を渡したときに反応が返ってくる相手になることが大切です。エリア、物件の種類、広さの目安、価格帯、購入を決めるまでの期間などを1枚にまとめて渡し、面談では「情報をいただいたら○日以内にお返事します」と、社内で守れる返答の約束をセットで伝えます。見送る場合も、価格や広さなど合わなかった理由を添えて返すと、次に回す情報を選んでもらいやすくなります。
仕入れのアポ取りを外注してもよいですか?
アポイント獲得や集客などの営業支援がどこから宅建業法の「媒介」に当たるかを示した国土交通省の資料は、確認した範囲では見つからず、実態で判断されます。そのため「アポ取りだけなら免許は不要」とは言い切れません。外に任せるならリスト作成、手紙の発送、面談の日程相談など接点づくりまでにとどめ、価格・条件のやり取りと契約は免許を持つ自社に残す分け方が説明しやすくなります。個別の判断は弁護士や所管の窓口に確認してください。
所有者に手紙を送るときの注意点はありますか?
誰が何のために連絡しているかを最初に書き、会社名と担当者名、関心を持った理由、所在を知った経緯、連絡先、連絡を望まない場合の伝え方を入れます。売却を急がせる言い回しは避けてください。所有者の氏名や住所を登記簿などで調べた場合も、個人情報保護委員会のQ&Aでは公開されている情報でも個人情報であり、取得するなら利用目的の特定が必要とされています。連絡を断られた相手は記録に残し、以後の連絡を止めましょう。

出典