介護の営業代行は、①介護事業所がケアマネジャーや病院の相談員に自事業所を知ってもらう営業と、②企業が介護事業所へ商品やサービスを売る営業に分けて考えます。①では、利用者に特定のサービスを使わせる対償として財産上の利益を渡すことが基準省令で禁じられているので、報酬の形と訪問先での振る舞いを契約前に決めておきます。②は、決裁の場所と現場の忙しさを踏まえた接点づくりが中心になります。この記事は、デイサービス・訪問介護・有料老人ホームなどを運営する経営者で、ケアマネジャーや病院の相談員への営業を外に出したい方と、介護事業所に商品やサービスを売る企業の営業責任者に向けて書いています。利用者本人やご家族への営業と、介護報酬・加算の話は扱いません。

この記事で分かること

  • 「介護の営業代行」に含まれる2種類の営業と、それぞれで外に出しやすい工程
  • ケアマネジャーへの営業で基準省令が禁じている利益供与の中身と、確認できなかった論点
  • 成果地点と報酬の決め方、介護に限った相場が確認できないときの費用の見方

介護の営業代行は2種類ある|誰に何を届けるかで任せ方が変わる

「介護 営業代行」で調べると、介護事業所の利用者を増やすための営業を代行する話と、介護施設に商品を売り込む営業を代行する話が混ざって出てきます。どちらも介護業界の営業ですが、売り先も、成果として数えるものも違います。発注前に自社がどちらに当たるかを分けておくと、代行会社との打ち合わせで話が噛み合いやすくなります。

種類 主な売り先 成果地点の例 外に出しやすい工程
①介護事業所のケアマネ営業
(デイサービス・訪問介護・有料老人ホームなどが発注)
地域の居宅介護支援事業所のケアマネジャー、地域包括支援センター、病院の相談窓口 面会できた件数、空き状況を案内できた件数、見学や面談の設定件数 訪問先リストの作成、訪問の予約、事業所案内と空き状況の案内、訪問結果の記録
②介護事業所へ売る営業
(介護事業所向けの商品・サービスを持つ企業が発注)
介護事業所の施設長・事務長、複数の事業所を運営する法人の本部 決裁に関わる人との商談の設定件数、商談からの受注 リスト作成、電話・フォームでの事前接点づくり、訪問、商談の設定

表は編集部の整理です。成果地点と工程は一例で、件数や成約率の目安を示すものではありません。

①は、事業所の名前でケアマネジャーや相談員に会い、自事業所のサービスや空き状況を知ってもらう営業です。利用者を紹介してもらうことが最終的な目的になりやすいため、次の章で見る基準省令との関係を最初に押さえておく必要があります。②は、介護事業所を顧客とする法人向けの新規開拓で、進め方は他業種向けの法人営業に近くなります。商材の条件から見た業種ごとの向き不向きは、営業代行が向いている業種・向かない業種の見分け方で整理しています。

事業所がケアマネ・相談員へ営業するときの決まり|対償としての利益供与が禁じられている

介護事業所の営業で最初に確かめたいのは、介護保険サービスの人員・設備・運営の基準を定めた省令(基準省令。平成11年の厚生省令で、現在は厚生労働省が所管)の規定です。営業代行を使うかどうかに関係なく、事業所がケアマネジャーに営業するときに当てはまります。

介護サービス事業者の側で禁じられていること

「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)の第35条は、指定訪問介護事業者が、居宅介護支援事業者やその従業者に対して、利用者に特定の事業者のサービスを利用させることの対償として、金品その他の財産上の利益を供与することを禁じています。同じ規定は、通所介護(第105条)、短期入所生活介護(第140条)、特定施設入居者生活介護(第192条)などにも準用されています。居宅介護支援事業者とは、ケアマネジャーが所属し、利用者のケアプランを作る事業所を運営する事業者のことです。

ケアマネジャーの事業所の側で禁じられていること

受け取る側にも規定があります。「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)の第25条は、指定居宅介護支援事業者とその従業者が、ケアプランの作成や変更に関し、利用者に特定の居宅サービス事業者等のサービスを利用させることの対償として、その事業者等から金品その他の財産上の利益を受け取ることを禁じています。あわせて、事業者や管理者がケアマネジャーに特定の事業者をケアプランに位置付けるよう指示すること、ケアマネジャーが利用者に特定の事業者の利用を指示することも禁じられています。営業の場で「うちの事業所を使ってほしい」と頼んでも、ケアマネジャーの側には、利用者に特定の事業者の利用を指示してはならないという決まりがあるわけです。

営業代行会社への委託料が当たるかを示した資料は見つからなかった

介護事業所が営業代行会社に委託料を払ってケアマネジャーへの営業を任せることが、これらの規定に当たるかどうかを示した条文や厚生労働省の資料は、確認した範囲では見つかりませんでした。条文が利益を渡してはならない相手として名指ししているのは、居宅介護支援事業者とその従業者です。一方で、条文の解釈を示した通知までは今回確認していないため、この記事では「介護の営業代行は違法」とも「問題ない」とも言い切りません。病院の相談員や地域包括支援センターの職員を訪ねる場合の扱いも、ここでは確認していません。報酬の形を決める前に、事業所の指定を受けた自治体の担当窓口や、介護分野に詳しい専門家に確認してください。

訪問先で渡さないものを代行会社と決めておく

代行会社の担当者は、事業所の名前でケアマネジャーや相談員を訪ねます。訪問先での振る舞いは事業所自身の営業と同じように受け止められると考えて、契約前に次の点を決めておくと安心です。

  • 謝礼、商品券、贈り物、飲食の提供など、財産上の利益に当たり得る物を訪問先で渡さない
  • 「利用者を紹介してもらえたらお礼をします」のように、紹介と見返りを結びつける話をしない
  • 持参してよい資料をあらかじめ決めておき、担当者の判断で物を配らない
  • 判断に迷う物や申し出があったときは、その場で答えずに事業所へ持ち帰る

手土産やノベルティのように、どこから財産上の利益に当たるのかが分かりにくい物もあります。個別の扱いは指定を受けた自治体に確認し、その結果を訪問の台本と持ち物のリストに書き込んで、代行会社と共有しておきましょう。

ケアマネ営業で任せる工程と事業所に残す工程|約束に関わる工程は事業所に残す

①の営業を外に出すときは、準備と接点づくりの工程を代行会社に任せ、利用者ごとの相談やサービス内容の約束は事業所に残すと、役割の線を引きやすくなります。工程ごとに分けると次のとおりです。

工程 分担の目安 契約前に決めておくこと
訪問先リストの作成(地域の居宅介護支援事業所・地域包括支援センター・病院の相談窓口) 任せやすい 対象にするエリアと、事業所がサービスを提供できる地域との合わせ方
訪問・面会の予約 任せやすい 連絡する時間帯、1か所あたりの訪問の頻度
事業所の案内と資料の説明 任せやすい 説明してよい内容の範囲(台本)と持参する資料
空き状況の案内 任せやすい 誰が、いつ、最新の空き状況を代行会社に渡すか
利用者ごとの相談への回答 事業所に残す 相談を受けたときに事業所の担当者へつなぐ手順
契約・サービス内容の約束 事業所に残す 代行会社の担当者が受け入れの可否や提供内容を約束しないこと
訪問結果の記録 代行会社が記録し、事業所が確認する 記録する項目と共有する頻度

表は編集部の整理です。分担は一例で、この分け方が基準省令に反しないことを示すものではありません。

訪問先リストは、エリアを広げすぎると1か所あたりの訪問の間隔が空きやすくなります。会うべき相手の絞り方は訪問営業リストの作り方(会うべき企業を絞る6条件)を、受付での名乗り方や面会時間の使い方は訪問営業のマナーを参考にしてください。

もうひとつ決めておきたいのが、代行会社への伝え方です。空き状況のように業務に必要な情報を渡すだけなら、直ちに労働者派遣事業とはされません。一方で、厚生労働省の疑義応答集は、発注者が顧客への営業上の対応方針などを請負のスタッフに直接指示している場合は労働者派遣事業と判断されるとしています。説明の方針を変えたいときは、担当者に直接指示するのではなく、代行会社の責任者を通して伝える形にしておきましょう。

介護事業所へ商品やサービスを売る企業の営業|決裁の場所と忙しい時間を先に確かめる

②は、介護事業所を顧客とする法人営業です。売り先の数を公的統計で見ようとしても、令和6年経済センサス‐基礎調査の産業大分類「医療、福祉」は、2024年6月1日現在で全国43万3,229事業所(雇用者のいない個人経営の事業所を除く民営事業所の約10.8%、同調査の表をもとに算出)ですが、これは医療と福祉を合わせた数で、介護事業所だけの数ではありません。自社の商材が対象にする業態を決めてから、売り先を数え直す必要があります。

介護事業所へ売る営業を代行会社に任せるときは、次の3点を発注前にすり合わせておきます。

  • 決裁の場所: 購入を決めるのが施設長か、事務長か、複数の事業所をまとめる法人本部かは、運営法人の規模や体制によって違います。現場の担当者が気に入っても、本部で決める法人なら話は前に進みません。最初の接点で、誰が決めるのかを聞き取る項目を台本に入れておきましょう。
  • 電話がつながりにくい時間帯: 送迎や食事、入浴の介助など、現場が手を離せない時間帯は、デイサービスと入所系の施設とで違い、事業所ごとの日課でも変わります。時間帯を示した統計は確認できなかったため、最初の数週間の架電記録から、つながった時間帯を業態別に集計して決めるのが現実的です。
  • 電話・フォーム・訪問の組み合わせ: 電話でつながりにくい相手には、問い合わせフォームや資料の送付で先に知ってもらい、関心を示した事業所に訪問するといった組み合わせを考えます。どのチャネルをどの順に使うかは、商材の説明にかかる時間と、売り先の数で決めます。

担当者止まりを抜けて決裁に関わる人に会う設計は決裁者に会えない営業を変える4つの到達経路で、つながる時間帯の見つけ方はテレアポが繋がらない原因と直す順番で解説しています。フォームを使う場合の課金の単位や法律の注意点は、フォーム営業代行の費用と進め方を確認してください。

成果と費用の決め方|何を成果と数えるかを先に決める

成果地点の例

①の営業は、訪問してから利用者の紹介につながるまでに時間がかかり、どのサービスを使うかは利用者やご家族の選択にも左右されます。代行会社の働きを評価するなら、代行会社が自分の動きで増やせる地点を成果として置くと、月ごとの振り返りがしやすくなります。

  • ケアマネジャーや相談員と面会できた件数
  • 空き状況を案内できた件数
  • 事業所の見学や、ケアマネジャー・相談員との面談を設定できた件数

気をつけたいのは、利用者1人の利用が決まるごとに代行会社へ報酬を払う形です。基準省令の対償の規定との関係を示した資料は見つからなかったため、この形を検討するなら、契約前に指定を受けた自治体や専門家に確認してください。この記事では、問題があるともないとも判断していません。②の営業では、商談の設定件数や受注を成果地点に置く、他業種と同じ考え方で決められます。

費用の目安と、介護に限った数字が無いこと

介護業界に限った営業代行の料金相場や成約率を示した資料は、確認できませんでした。そのため、ここでは営業代行全般の目安だけを示します。固定報酬型は、営業担当者1人あたり月50万〜60万円程度とするメディアが多くなっています(Sales Marker、PRONIアイミツほか。税区分の記載なし)。訪問営業の代行については、比較ビズが、固定報酬型で月50万〜60万円、成果報酬型で成約売上の30〜50%としています(税区分の記載なし。成約時の割合は媒体によって幅があり、定まった相場はありません)。

どちらも介護向けに集計された数字ではありません。①のように成果を利用者の利用と結びつけにくい営業では、成約売上に応じた成果報酬の数字をそのまま当てはめられない点にも注意が必要です。訪問営業代行の見積もりを比べるときの確認項目は、訪問営業代行会社の選び方と契約前に確認する8項目にまとめています。

エイギョウブに相談する場合|介護分野への対応はお見積りの際に確認

エイギョウブは、LongWave株式会社が運営する営業支援サービスです。800人規模の訪問営業部隊を持っています(LPの表記は「累計800人規模の部隊」)。営業チャネルは、電話・DM・SNS・訪問・手紙・紹介・交流会の7以上です。

訪問営業に特化した「訪問エイギョウブ」では、業種・規模・エリア・決裁構造で訪問優先度の高い企業を抽出し、電話やDMで事前接点を作って「会える商談」にしてから訪問します。訪問トークを標準化し、訪問結果を週次で分析して、アポ率・商談率・受注率を改善していく進め方です。

訪問エイギョウブの料金は月額の目安で、トライアル20万円〜/月、標準40万円〜/月(いずれも税別)です。上位のプランは個別見積りで、支援範囲・体制に応じて提案します。介護事業所のケアマネ営業や、介護事業所へ売る営業に対応できるか、これまでに実績があるかは、お見積りの際に確認してください。

まとめ|種類を分け、報酬の形と訪問先での振る舞いを先に決める

介護の営業代行は、介護事業所がケアマネジャーや病院の相談員に自事業所を知ってもらう営業と、企業が介護事業所へ商品やサービスを売る営業に分けて考えます。

  • ケアマネ営業では、利用者に特定のサービスを利用させる対償として財産上の利益を渡すことが、介護サービス事業者の側(指定居宅サービス等基準 第35条ほか)でも、ケアマネジャーの事業所の側(指定居宅介護支援等基準 第25条)でも禁じられています。
  • 営業代行会社への委託料がこの規定に当たるかを示した資料は見つからなかったため、利用者1人ごとの成果報酬などは、指定を受けた自治体や専門家に確認してから決めます。
  • リスト作成・訪問の予約・空き状況の案内は任せやすく、利用者ごとの相談と契約・サービス内容の約束は事業所に残します。
  • 介護事業所へ売る営業では、決裁の場所、つながる時間帯、電話・フォーム・訪問の組み合わせを発注前にすり合わせます。

介護に限った営業代行の相場は確認できなかったので、見積もりは営業代行全般の目安と、依頼する工程の範囲を並べて比べるのが現実的です。

よくある質問(FAQ)

介護の営業代行とは何ですか?
介護業界の営業を外部の会社に任せることで、中身は大きく2種類に分かれます。1つは、デイサービスや訪問介護などの介護事業所が、ケアマネジャーや病院の相談員を訪ねて自事業所のサービスや空き状況を知ってもらう営業です。もう1つは、介護事業所向けの商品やサービスを持つ企業が、施設長や法人本部などに売り込む営業です。前者は基準省令の利益供与の禁止との関係を、後者は決裁の場所と現場の忙しい時間帯を先に確かめておくと、任せる範囲を決めやすくなります。
ケアマネジャーへの営業を代行会社に任せても問題ありませんか?
任せること自体を扱った条文や厚生労働省の資料は、確認した範囲では見つからず、問題があるともないとも言い切れません。基準省令が禁じているのは、利用者に特定の事業者のサービスを利用させる対償として、居宅介護支援事業者やその従業者に金品その他の財産上の利益を供与することです(指定居宅サービス等基準 第35条ほか)。代行会社の担当者が訪問先で謝礼や贈り物を渡さない運用を決め、報酬の形は事業所の指定を受けた自治体や専門家に確認してから決めてください。
ケアマネジャーに手土産や謝礼を渡してもよいですか?
利用者に特定のサービスを利用させることの対償として金品その他の財産上の利益を渡すことは、介護サービス事業者の側(指定居宅サービス等基準 第35条ほか)でも、受け取るケアマネジャーの事業所の側(指定居宅介護支援等基準 第25条)でも禁じられています。紹介へのお礼として謝礼を渡す形は、この規定との関係が問題になり得ます。手土産のように、どこから財産上の利益に当たるかが分かりにくい物の扱いは、事業所の指定を受けた自治体に確認してください。
病院やクリニックへ売る営業も同じ考え方でよいですか?
この記事の考え方をそのまま当てはめる話ではありません。この記事で扱った基準省令は、介護サービス事業者と居宅介護支援事業者の間の利益供与などを定めたものです。病院やクリニックへ商品やサービスを売る営業では、医療分野の法令との関係を別に確かめる必要があり、医療の営業代行で整理しています。なお、介護事業所が病院の相談員を訪ねて自事業所を知ってもらう営業は、この記事で扱った①の営業に当たります。

出典