医療の営業代行は、医療機関へ製品やサービスを売る企業が新規開拓を任せるものと、医療機関が患者を増やすための営業を任せるものとで、守る決まりも成果地点も違います。企業側で任せるなら、院長・事務長・購買担当などに分かれる決裁の流れを押さえ、承認や認証の範囲を超えて効能や性能を言わない台本を代行会社と先に決めておきます。この記事は、病院・クリニックなどの医療機関へ医療機器・医療IT・業務サービスを売る企業の経営者・営業責任者で、医療機関向けの新規開拓を外に出したい方に向けて書いています。医療機関自身の患者集めと、製薬会社のMR業務の受託は対象外とし、関係する決まりだけを短く触れます。

この記事で分かること

  • 医療の営業代行を「誰が誰に売るか」で3つに分けたときの、売り先と主な決まりの違い
  • 薬機法66条・68条、医療法6条の5、療担規則の紹介対価の禁止を、台本と報酬の決め方にどう反映するか
  • 代行に任せやすい工程と自社に残す工程、成果地点と費用の決め方

医療の営業代行は、誰が誰に売るかで3つに分かれる

「医療 営業代行」で調べると、医療機器や医療ITの企業が病院へ売り込む話と、クリニックの患者集めを手伝う話が、同じ言葉で並んで出てきます。売る側と売り先が違えば、関係する法令も、成果として数えるものも変わります。まず、自社がどれに当たるかを確かめてください。

区分 売る側と売り先 主な決まり(確認した条文) この記事での扱い
医療機関へ売る企業の新規開拓 医療機器・医療IT・業務サービスの企業が、病院・クリニックへ売る 医療機器などの誇大広告・承認前の広告の禁止(薬機法66条・68条)/営業リストの個人情報(個人情報保護法) 中心に扱う
医療機関自身の患者集め 病院・クリニックが、自院を受診してもらうために知らせる 医療に関する広告の規制(医療法6条の5)/保険医療機関の紹介対価の禁止(療担規則2条の4の2第2項) 読者の対象外。決まりだけ触れる
在宅医療・訪問看護の連携先への営業 在宅医療を行う医療機関や訪問看護の事業者が、ケアマネジャーの事業所などの連携先へ知らせる 営業する側が保険医療機関なら療担規則2条の4の2第2項が関係し得る/ケアマネジャーの事業所への利益供与の決まりは介護の基準省令 決まりだけ触れる

出典: 医療法、医薬品医療機器等法、保険医療機関及び保険医療養担当規則(いずれもe-Gov法令検索、2026-09-15確認)。区分は編集部の整理です。

ケアマネジャーの事業所への営業と、介護の基準省令が禁じている利益供与については、介護の営業代行の記事で扱います。

売り先の数の目安として、令和6年経済センサス‐基礎調査では「医療、福祉」の民営事業所が全国に433,229事業所あります(2024年6月1日現在、雇用者のいない個人経営の事業所を除く)。これは医療と福祉を合わせた数で、病院・クリニックだけの数ではありません。

医療機関で決裁が分かれる場所

医療機関へ売る営業では、最初に話を聞いてくれる人、製品を使う人、導入を決める人、発注の手続きをする人が別々になることがあります。どこで決まるかは法人の規模や組織によって違うため、ここでは一般的な傾向として役割を並べます。

役割 関わりやすい話題 営業で押さえる点
理事長・院長 経営方針、大きな投資、診療の方針に関わる導入 最終的な判断者になりやすいので、導入の目的を経営の言葉で説明できる材料を用意する
事務長・事務部門 予算、契約、事務作業の効率化、事務系のシステム 窓口になることがあるので、費用と導入の手間を整理して渡す
看護部門 病棟や外来で使う物品、看護業務に関わる仕組み 現場で使う立場の意見として、判断に関わることがある
診療部門(各科の医師) 診療で使う医療機器、検査機器 性能や使い方の質問が出るので、代行会社ではなく自社の担当者が答える
購買・用度の担当 見積もりの取り寄せ、発注、納入の手続き 見積もり依頼の段階から関わるので、手続きの流れを早めに聞いておく
情報システムの担当 電子カルテなど既存のシステムとつなぐ医療IT 連携の可否の確認で関わるので、技術的な資料を自社で用意する

編集部による一般的な整理です。統計や特定の医療機関の事例にもとづくものではなく、実際の決裁の流れは法人ごとに違います。

病院とクリニックでの違い

病院では上の役割が部署として分かれていることがあり、最初に話を聞く窓口と決裁者が離れやすくなります。クリニック(診療所)では院長が経営と診療を兼ねていることがあり、その場合は院長と話せるかどうかが進み方を左右します。どちらでも、診療の時間帯は電話や来訪に対応しにくいことがあります。

代行会社に任せる前に、売りたい製品について「最初の窓口」「使う人」「決める人」「発注する人」が誰になりそうかを仮に置き、台本とリストの項目に反映しておくと、取れたアポの中身をそろえやすくなります。担当者止まりから決裁者に届く経路の作り方は、決裁者に会えない営業を変える到達経路の記事にまとめています。

台本と資料で守る決まり|承認・認証の範囲を超えて効能や性能を言わない

医療機器を売る営業を外に出すとき、最初に代行会社とそろえるのは、製品について何を言ってよいかです。医薬品医療機器等法(薬機法)66条1項は、何人も、医薬品や医療機器などの名称、製造方法、効能、効果、性能について、明示・暗示を問わず虚偽や誇大な記事を広告し、記述し、流布してはならないと定めています。同じ条の2項は、医師などが効能や性能を保証したと誤解されるおそれがある記事も、1項に当たるものとしています。68条は、何人も、承認や認証を受けていない医薬品・医療機器などについて、名称や効能・効果・性能に関する広告をしてはならないと定めています。

どちらも主語が「何人も」なので、製品を作る企業だけでなく、説明を代わりに行う代行会社の担当者も対象になり得ます。一方で、営業電話や訪問での口頭の説明がどこから「広告」に当たるかは、今回確認していません。そのため、この記事では「電話の説明は広告ではない」とも「すべて広告に当たる」とも書きません。台本と資料は、承認や認証の内容を超える効能や性能を言わないという範囲で作っておくと、担当者ごとの言い回しのぶれを抑えられます。

代行会社に渡す前に決めておくこと

  • 製品について言ってよい内容の範囲(承認や認証を受けた内容に沿った表現)
  • 効果を保証するように聞こえる言い方や、医師が性能を保証していると受け取られる言い方をしないこと
  • 承認や認証を受けていない製品について、名称や効能・性能を案内しないこと
  • 性能や使い方の詳しい質問を受けたら、その場で答えずに自社の担当者へ回すこと
  • 台本と資料は自社の薬事・法務の確認を通した版だけを渡し、代行会社の側で書き換えないこと

医療機器の販売業の許可が代行会社に必要になる場面があるか、医療機器業界の公正競争規約や、製薬企業の販売情報提供活動に関する指針が自社の営業にどう関係するかは、この記事では確認していません。要否は自社の薬事・法務の担当に確認してください。

医療機関の広告を代わりに作るとき

医療機関から頼まれて広告や案内文を作る場合は、医療法6条の5が関わります。何人も、医業・歯科医業や病院・診療所に関して広告をする場合には虚偽の広告をしてはならず、あわせて、他の病院・診療所と比べて優良である旨の広告や誇大な広告をしないといった基準に適合する必要があります。ここでいう広告は、医療を受ける者を誘引するための表示を指します。医療機関へ製品を売る企業の営業とは別の話ですが、依頼の範囲に医療機関の広告物の作成が入る場合は、この規定も確認の対象に入れてください。

紹介料の形に気をつける|療担規則は保険医療機関が対象

保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)2条の4の2第2項は、保険医療機関が、事業者やその従業員に対して患者を紹介する対価として金品を提供することなど、健康保険事業の健全な運営を損なうおそれのある経済上の利益の提供によって、患者を自院で受診するよう誘引してはならないと定めています。

この規定の対象は保険医療機関です。医療機関へ医療機器や業務サービスを売る企業の営業を、直接規律する条文ではありません。ただし、患者の紹介を製品の導入と組み合わせた提案がこの規定とどう関係するかを確認した資料は無いため、そうした話を台本に入れる前に自社の法務に確認してください。

気をつけたいのは、医療機関の側が報酬を払う形です。医療機関が患者集めのために営業代行や広告の会社へ成果報酬を払う形が、この規定の「患者を紹介する対価」に当たるかを示した厚生労働省の資料は、今回見つかりませんでした。当たるとも当たらないとも言えないため、来院した患者の数や紹介した患者の数に応じて報酬が決まる形を提案されたり求められたりしたときは、契約の前に医療機関側で専門家に確認してもらう進め方にします。

外に出す工程と自社に残す工程

医療機関向けの新規開拓は、製品の説明に入る前の工程と、入った後の工程で分けると線を引きやすくなります。前半は台本とリストの範囲で動けるので代行会社に任せやすく、後半は承認や認証の内容を理解した自社の担当者が受け持つほうが、前の章の決まりと食い違いにくくなります。

工程 分け方 注意する点
公開情報をもとにした医療機関リストの作成 任せやすい 医療機関の名称・所在地などの団体の情報と、個人名入りの情報を分けて扱う
電話で担当窓口を特定し、アポを設定する 任せやすい 台本の範囲で話し、製品の詳しい質問は自社へ回す
問い合わせフォームからの案内 任せやすい 文面も薬事・法務の確認を通した版を使う
訪問の予約と日程調整 任せやすい 訪問先が対応しやすい時間帯を記録してから連絡する
製品の詳しい質疑・デモ 自社に残す 性能や使い方は、承認や認証の内容を理解している自社の担当者が説明する
見積もり・契約 自社に残す 価格と条件の判断は自社で行う

編集部の整理です。「任せやすい」は法令上の可否を示すものではありません。

個人名入りのリストを使うとき

リストに個人名入りのメールアドレスを載せる場合、ユーザー名とドメイン名から特定の個人を識別できるメールアドレスは、それだけで個人情報に当たります(個人情報保護委員会のQ&A)。名簿業者から名簿を買うこと自体は禁止されていませんが、適正に取得する義務と、第三者から個人データを受け取るときの確認・記録の義務がかかり、相手が名簿を取得した経緯などを確認・記録する必要があるとされています。代行会社がリストを用意する場合も、どこから取った情報かを契約の前に確かめておきます。

チャネルと商材ごとに詳しく見る

医療機関に電話がつながらないときに、リスト・時間帯・トークのどこから直すかは、テレアポが繋がらない原因と直す順番の記事で整理しています。フォームでの案内を任せるときの課金の単位や法律の注意点は、フォーム営業代行の費用と進め方の記事にまとめています。

予約システムや電子カルテまわりなど医療ITを売る場合は、IT・SaaS企業の営業代行で外に出す工程の決め方も参考になります。医療機器メーカーで技術的な説明が営業の中心になる場合は、製造業の営業代行で技術営業をどこまで任せられるかを扱った記事もあわせて確認してください。

成果と費用の決め方|医療に限った相場は確認できない

医療機関向けの営業では、先に見たように窓口と決裁者と発注の担当が分かれることがあるため、「アポ1件」とだけ決めると、代行会社と自社で数え方がずれることがあります。どの段階までを代行会社の成果にするかを、契約の前に言葉で決めておきます。成果地点の例は次のとおりです。

  • 担当窓口の特定: 医療機関の中で、製品の話を受ける部署と担当者が分かった状態
  • デモの設定: 自社の担当者が製品を見せる日時が決まった状態
  • 見積もり依頼: 医療機関から見積もりを求められた状態

窓口の特定は代行会社の電話やフォームだけで完結しやすい一方、デモの設定や見積もり依頼は、自社の担当者の日程や説明と組み合わせて初めて成り立ちます。どの地点を成果にするかで、代行会社の担当範囲も費用の決め方も変わります。

費用については、医療機関向けに限った営業代行の相場を示す資料を確認できませんでした。営業代行全体の目安としては、固定報酬型は営業担当者1人あたり月50万〜60万円程度とするメディアが多く(Sales Marker、PRONIアイミツほか。税区分の記載なし)、テレアポ中心なら月50万〜70万円とする例もあります。成果報酬型のアポイント1件は、1万5,000円〜2万円程度(Sales Marker、PRONIアイミツ、BOXILの34サービス調査)から、1万〜3万円(グランドセントラル)、決裁者アポなど難易度が高いと3万〜5万円程度(アイドマ、ローカルマーケティングパートナーズ)まで幅があります。どちらも医療に限った数字ではないため、見積もりを比べるときは成果地点の定義をそろえてから並べてください。

成果報酬の料率や1アポの単価の考え方は、成果報酬は何パーセント・1アポいくらかを扱う記事で整理します。医療機器や医療ITが営業代行に向く商材かどうかを商材の条件から確かめたい場合は、営業代行が向いている業種・向かない業種の記事が参考になります。

エイギョウブに相談する場合

エイギョウブは、LongWave株式会社が運営する営業支援サービスです。サービスページでは、支援企業は100社以上と掲載しています(時点の記載はありません)。使えるチャネルは、電話・DM・SNS・訪問・手紙・紹介・交流会の7以上です。

総合の「エイギョウブ」の実行メニューには、電話営業(BDR/SDR)、フォームDM(1日最大500件のアプローチ)、SNS運用(LinkedIn)、交流会・展示会、即戦力人材アサイン(最短数日で稼働)、これらを組み合わせるマルチチャネルがあります。アポイント獲得だけでなく、商談から成約までを一括で請け負うこともできます。

料金は月額の目安で、トライアル30万円〜/月、標準50万円〜/月(いずれも税別)です。支援範囲・体制に応じて提案する形で、上位のプランは個別見積りです。

医療分野の支援に対応できるか、医療機関向けの実績があるかは、お見積りの際に確認してください。あわせて、台本と資料の薬事・法務の確認を自社のどの担当が行うかを決めてから相談すると、任せる範囲の話が進めやすくなります。

まとめ|売る相手を分け、台本と成果地点を先に決める

医療の営業代行を検討するときは、どの会社に頼むかより先に、誰が誰に売るのかと、担当者に何を言わせるのかを決めておきます。要点は次のとおりです。

  • 医療機関へ売る企業の新規開拓と、医療機関自身の患者集めは、関係する決まりも成果地点も違います。
  • 医療機関では、窓口・使う人・決める人・発注する人が分かれることがあるため、台本とリストに役割の項目を入れておきます。
  • 薬機法66条・68条は主語が「何人も」です。台本と資料は、承認や認証の範囲を超えて効能や性能を言わない内容にし、自社の薬事・法務の確認を通してから代行会社に渡します。
  • 療担規則の紹介対価の禁止は保険医療機関が対象です。医療機関が患者集めに成果報酬を払う形が当たるかを示した資料は見つからないため、契約前に専門家に確認します。
  • リスト作成・窓口の特定・アポや訪問の予約は任せやすく、製品の詳しい質疑・デモ・見積もり・契約は自社に残すと線を引きやすくなります。
  • 医療に限った料金の相場は確認できません。営業代行全体の目安と比べるときは、成果地点の定義をそろえます。

販売業の許可や業界の自主規制が関係するかは、この記事の範囲では確かめていません。自社の薬事・法務の担当に確認したうえで、外に任せる範囲を決めてください。

よくある質問(FAQ)

医療の営業代行とは何ですか?
医療に関わる営業を外部の会社に任せることで、大きく2つの意味で使われています。1つは、医療機器・医療IT・業務サービスの企業が、病院やクリニックへの新規開拓を任せるものです。もう1つは、医療機関が自院の患者を増やすための営業や広告を任せるものです。前者では薬機法66条・68条の広告の決まり、後者では医療法6条の5の広告の規制や療担規則の紹介対価の禁止が関わり、成果として数えるものも違います。まず自社がどちらに当たるかを確かめてから、任せる範囲を決めてください。
医療機器の営業を代行会社に任せるとき、気をつける法律は何ですか?
製品の説明では、薬機法66条と68条を押さえます。66条は、何人も、医療機器などの名称や効能・効果・性能について虚偽や誇大な記事を広告し、記述し、流布してはならないと定め、医師などが保証したと誤解されるおそれがある記事も同じ扱いにしています。68条は承認や認証を受けていない製品の広告を禁じています。主語が「何人も」なので代行会社の担当者も対象になり得ますが、口頭の説明がどこから広告に当たるかは確認していません。販売業の許可の要否や業界の自主規制は、自社の薬事・法務の担当に確認してください。
クリニックの患者集めを営業代行に頼めますか?
この記事は医療機関自身の患者集めを主な対象にしていませんが、頼む場合に関係する決まりとして次の2つがあります。医療法6条の5は、何人も、病院・診療所などに関して虚偽の広告をしてはならず、他院と比べて優良である旨の広告や誇大な広告をしないといった基準に適合する必要があると定めています。療担規則2条の4の2第2項は、保険医療機関が事業者などに患者紹介の対価として金品を提供することなどによる誘引を禁じています。患者集めの成果報酬がこれに当たるかを示した厚生労働省の資料は見つからないため、契約前に専門家へ確認してください。
医療機関へのアポが取りにくいのはなぜですか?
一般的な理由として、診療の時間帯は受付や事務の担当が患者対応を優先することがあり、電話や来訪に応じにくいこと、製品の話を受ける窓口が決まっていないことがあること、話を聞く人と導入を決める人が別々になることがある点が挙げられます。対策としては、訪問先が対応しやすい時間帯を記録してから連絡する、最初の電話では担当窓口の特定を目的にする、窓口・使う人・決める人・発注する人をリストの項目に入れておく、といった進め方があります。どれくらい取りにくいかを示す医療に限った数字は、この記事では確認していません。

出典