手紙営業は、決裁者の名前宛てに「会う理由」を1つ書いた手紙を送り、届いた頃に電話で約束を取り、訪問につなげる営業の進め方です。手紙だけで商談を取り切ろうとせず、電話と訪問までの順番を決めてから書き始めると、送ったあとに何をすればよいかで迷わずに済みます。

この記事は、取引のない法人の経営者や部門の責任者と接点をつくりたい経営者・営業責任者に向けて書いています。個人のお客さまに送る手紙や、季節のあいさつ状、年賀状の書き方は扱いません。送った通数と、電話でつながった件数、訪問が決まった件数を自社で記録して判断してください。

この記事で分かること

  • 手紙営業と、営業メール・問い合わせフォーム・郵送DMの違いと使い分け
  • 決裁者の名前宛てに送るための宛名の調べ方と、個人名を扱うときの注意
  • 1枚の手紙に入れる6つの要素と、場面別の例文3つ(新規・展示会後・電話がつながらない相手)

手紙営業とは|紙の手紙で決裁者に会う理由を先に届ける方法

手紙営業は、取引のない会社の特定の人に宛てて、紙の手紙を郵送で届け、面談の約束につなげる営業の方法です。こちらから相手に働きかけるアウトバウンド営業の手段の一つで、電話や訪問の前に「誰が、なぜ連絡してくるのか」を相手に知ってもらう役割を持ちます。電話・フォーム・訪問を含めた全体の組み立てはアウトバウンド営業の進め方で整理しています。

この記事では、同じ内容の案内物を多くの会社へまとめて送るものを「郵送DM」、一人の相手に宛てて書き、その人に会うことを目的にするものを「手紙」と呼び分けます。どちらも郵便で届きますが、手紙は送る相手ごとに「なぜあなたに送ったか」を書き分ける点が違います。

メール・フォーム・郵送DMとの違い

手紙は、ほかの手段と比べて1通に手間がかかります。その分、送る相手を絞り、1通ごとに理由を書くことが前提になります。多くの会社に広く知らせたいときは郵送DMやフォーム、名刺交換した相手に早く連絡したいときはメールというように、目的で使い分けます。

手段 届け方 向いている場面 送る前に確かめること
手紙 会社の住所へ、特定の人の名前宛てで郵送する 会いたい相手が決まっていて、電話だけでは取り次いでもらえない 宛名の人が今もその役職にいるか。個人名の扱い(次の節)
営業メール 相手のメールアドレスへ送る 名刺交換した相手などに、早く・続けて連絡したい 特定電子メール法で送ってよい相手か
問い合わせフォーム 相手のサイトのフォームに入力して送る 担当者が分からない会社に、広く知らせたい フォームに営業目的の送信を断る記載がないか
郵送DM 同じ案内物を多くの会社へ郵送する 新しいサービスや催しを、条件の合う会社にまとめて知らせたい 送付先の名簿をどこから手に入れたか

出典: 編集部による一般的な整理(2026-09-15)。法令の確認点は本文の各節と出典欄を参照。

営業メールの書き方と送ってよい相手の確かめ方は新規開拓の営業メールの例文と件名の付け方で、フォームからの営業を外に任せるときの確認点はフォーム営業を外注するときの判断材料で扱っています。

送る相手と宛名|会社宛てではなく決裁者の名前宛てにする

手紙営業で最初に決めるのは、どの会社の、誰に送るかです。会社名だけの宛名や「ご担当者様」宛ての手紙は、社内で誰の手に渡るかが決まりません。発注を決める立場の人の部署・役職・氏名まで書いて送ります。

送る会社は、会う理由を書ける会社に絞る

手紙は1通ごとに「なぜあなたに送ったか」を書くので、その理由を書ける会社だけに送ります。業種や規模、所在地で候補を出したあと、相手のホームページや公開資料を読み、自社の商材と関係する事実が1つ見つかった会社を残します。訪問まで見すえた候補の絞り方は訪問営業リストの作り方にまとめています。

宛名の人は、決める立場かどうかで選ぶ

宛名には、自社の商材を入れるかどうかを決める立場の人を書きます。中小企業では社長、部門ごとに予算を持つ会社では部門の責任者が候補になります。誰が決めるのか分からないときは、電話で担当部署を聞いてから送る方法もあります。決裁者にたどり着く経路の選び方は決裁者に会えない営業を変える到達経路で整理しています。

役職者の名前は、相手のホームページの会社概要や役員紹介、公表されている資料で確かめます。人事異動で変わっていることがあるので、送る直前にもう一度見ておきます。

個人名や買った名簿を使うときの注意

宛名に書く個人の氏名は、特定の個人を識別できる情報なので個人情報に当たります。ホームページや登記簿で公開されている氏名でも個人情報であることに変わりはなく、取得するなら利用目的を特定しておく必要があります。

名簿業者から送付先の名簿を買うこと自体は禁止されていません。ただし、名簿の取得経緯などを確認・記録する義務があり、名簿業者が個人情報保護委員会へオプトアウトの届出をしているかを同委員会のホームページで確かめる必要があるとされています。

手紙の書き方|1枚に入れる6つの要素

営業の手紙は、便せん1枚に収めます。長く書くほど、相手が「で、何をしてほしいのか」を探す手間が増えるからです。次の6つを、上から順に入れます。

要素 書くこと 避けたい書き方
1. 宛名 会社名・部署・役職・氏名 「ご担当者様」だけにする
2. 名乗り 自社名、自分の名前、何をしている会社かを1文 会社の沿革や受賞歴から書き始める
3. 送った理由 相手について調べて分かった事実を1つ どの会社にも当てはまる言葉で済ませる
4. 会う理由 相手に関係する話を1つと、会って話したい内容 商品の機能を並べる。根拠のない成果を約束する
5. 次の約束 いつ頃電話するか、面談にかかる時間 「ご連絡をお待ちしております」で終える
6. 連絡先と断り方 直通の電話番号とメールアドレス、不要なときの連絡先 代表番号だけを書く

出典: 編集部による一般的な整理(2026-09-15)。統計にもとづく目安ではありません。

なかでも大事なのは3と5です。3があると、相手は「一斉に送られてきたものではない」と分かります。5があると、次にこちらから電話する理由ができ、相手も電話を受ける心づもりができます。「ご連絡をお待ちしております」で終える手紙は、相手が動かなければそこで止まってしまいます。

手書きにするか印刷にするかに決まりはありません。宛名と最後の一言だけを手書きにするなど、送る通数と手間を考えて社内で決めます。名刺を同封しておくと、相手が連絡先を控えやすくなります。

手紙営業の例文|新規・展示会後・電話がつながらない相手

ここからは、場面ごとの例文を3つ載せます。( )の中は、送る相手に合わせて書き換える部分です。「送った理由」の部分は、相手ごとに書き直してください。

例文1: 取引のない会社へ初めて送る

(会社名)
(部署名) (役職) (氏名)様

突然のお手紙で失礼いたします。(自社名)で(事業内容を1文で)をしております、(自分の名前)と申します。

御社のホームページで、(相手について分かった事実。例: 今年度から新しい地域へ営業所を広げていらっしゃること)を拝見し、お手紙を差し上げました。当社は(相手の状況に関係する取り組みを1文で)をお手伝いしております。

(話したい内容)について、30分ほど直接ご説明する機会をいただけないでしょうか。(月)月(日)日頃に、改めてお電話でご都合をうかがいます。

ご不要の場合は、同封の名刺のメールアドレスへお知らせいただければ、以後のご連絡は控えます。

例文2: 展示会で名刺を交換した相手へ送る

(会社名)
(部署名) (役職) (氏名)様

(月)月(日)日の(展示会名)で、当社のブースにお立ち寄りくださった際に名刺を交換させていただいた、(自社名)の(自分の名前)です。

当日うかがった(相手が話していた課題や関心)について、ブースではご説明しきれなかった点を資料にまとめ、同封いたしました。(資料のどこを見てほしいかを1文で)。

御社の状況をもう少しうかがったうえで、ご提案できることがあるか確かめたく、30分ほど面談のお時間をいただけないでしょうか。(月)月(日)日頃にお電話いたします。

例文3: 電話で取り次いでもらえなかった相手へ送る

(会社名)
(部署名) (役職) (氏名)様

(自社名)の(自分の名前)と申します。これまで何度かお電話を差し上げましたが、ご多忙のところお話しできなかったため、お手紙で失礼いたします。

(相手について分かった事実)を拝見し、(話したい内容)について、一度ご説明の機会をいただきたいと考えております。

(月)月(日)日頃に、改めてお電話いたします。その際は「(月)月(日)日にお手紙をお送りした(自社名)の(自分の名前)」と名乗らせていただきます。お電話よりメールがよろしければ、同封の名刺のアドレスへご連絡ください。

例文3のように、電話で名乗る言い方を手紙の中で先に伝えておくと、受付の方が取り次ぐときの手がかりになります。なお、訪問や商談のあとに送るお礼状は目的が違うので、訪問営業後のフォロー方法を参考にしてください。

電話・訪問につなげる順番|手紙に書いた日に電話する

手紙営業は、手紙を送ったあとの電話で約束を取るところまでが一続きの作業です。送る前に、次の順番を担当者全員でそろえておきます。

  1. 電話する日を先に決め、手紙に書く。手紙の「次の約束」に書いた日が、そのまま電話の予定日になります。
  2. 発送日と送り先を記録する。会社名、宛名の人、発送日、電話の予定日、使った例文を一覧にしておくと、電話のときに何を送ったかをすぐ確かめられます。
  3. 予定日に電話し、手紙のことから名乗る。受付では「(日付)にお手紙をお送りした(自社名)の(名前)です」と伝え、宛名の人につないでもらいます。
  4. 本人につながったら、面談の日時を2つ示す。手紙の内容を1文でなぞり、「来週の(曜日)か(曜日)で30分いただけますか」と具体的に聞きます。
  5. つながらなければ、次にかける日を決める。何回かけたら止めるかも先に決めておき、担当者ごとにばらつかないようにします。
  6. 訪問が決まったら、手紙の写しを準備に使う。手紙に書いた「送った理由」と「会う理由」から話を始めると、相手は約束した理由を思い出しやすくなります。

受付を通るときの言い方や、本人につながったあとの話の運び方はテレアポのトークスクリプトで詳しく扱っています。

電話の代わりにメールで追う場合は、送ってよい相手かを先に確かめます。特定電子メール法では、営業のメールは原則として事前に同意した相手にしか送れず、名刺などの書面でアドレスを知らせてきた相手、取引関係にある相手、インターネットでアドレスを公表している団体などが例外とされています。

手紙から訪問まで任せる場合|どこまで頼めるかを先に確かめる

送る相手の絞り込み、手紙の文面づくり、発送、電話、訪問までを社内だけで回すのは、営業の人手が足りない会社には重い作業です。外に任せる場合は、手紙だけを頼むのか、電話や訪問まで一続きで頼むのかを先に決めます。手紙と電話を別々の会社に頼むと、「手紙に書いた日に、手紙のことから名乗って電話する」という順番が崩れやすくなるためです。

当メディアを運営するLongWave株式会社のエイギョウブは、扱う営業のチャネルとして、電話・DM・SNS・訪問・手紙・紹介・交流会の7以上をサービスページに掲げています。訪問営業に特化したエイギョウブのサービスページでは、業種・規模・エリア・決裁構造で訪問優先度の高い企業を抽出し、電話やDMで事前接点を作って「会える商談」にしてから訪問し、訪問トークを標準化したうえで、訪問結果を週次で分析してアポ率・商談率・受注率を改善する、という進め方を示しています。手紙の文面づくりや発送をどこまで任せられるかはサービスページに細かい記載がないので、相談の際に確認してください。

料金は月額40万円〜で、支援範囲・体制に応じて提案します。訪問営業を任せる会社を比べるときの確認点は訪問営業代行会社の選び方と契約前の確認項目で整理しています。

まとめ|手紙は「電話で約束を取る理由」をつくる道具

手紙営業は、決裁者の名前宛てに会う理由を1つ書いて送り、手紙に書いた日に電話で約束を取り、訪問につなげる進め方です。手紙だけで商談を取ろうとせず、電話と訪問までの順番を決めてから書き始めます。

  • 送る会社は、相手について調べた事実を1つ書ける会社に絞る
  • 宛名は決める立場の人の部署・役職・氏名まで書く。個人名は公開されていても個人情報として扱う
  • 手紙は1枚に、宛名・名乗り・送った理由・会う理由・次の約束・連絡先と断り方の6つを入れる
  • 手紙に書いた日に電話し、手紙のことから名乗る。何回で止めるかも先に決める
  • 成果の判断は、送った通数・電話でつながった件数・訪問が決まった件数を自社で記録して行う

よくある質問(FAQ)

手紙営業のアポ率はどれくらいですか?
業種や送る相手、手紙のあとに電話をするかどうかで大きく変わるため、他社の数字を目安にするより、自社の記録で測るほうが実態に合います。送った通数、電話で本人につながった件数、面談の約束が取れた件数、訪問した件数を一覧に残し、例文や送る相手の条件ごとに比べると、どこを直せばよいかが分かります。
営業の手紙は手書きでないとだめですか?
手書きでなければならないという決まりはありません。印刷した手紙でも、宛名が正しく、相手ごとに「送った理由」が書き分けてあれば用件は伝わります。手書きは1通にかかる時間が長くなるので、宛名と最後の一言だけを手書きにするなど、送る通数と手間を考えて社内で決めてください。どちらにする場合も、便せん1枚に収め、次に電話する日を書いておくことが大事です。
手紙は会社の誰宛てに送ればいいですか?
自社の商材を入れるかどうかを決める立場の人に、部署・役職・氏名まで書いて送ります。中小企業では社長、部門ごとに予算を持つ会社では部門の責任者が候補になります。名前は相手のホームページの会社概要や公表資料で確かめ、送る直前にもう一度見直します。個人の氏名は公開されていても個人情報に当たるので、取得するときは利用目的を特定しておきます。
手紙を送ったあと、いつ電話すればいいですか?
手紙に「(月)月(日)日頃にお電話します」と書き、その日に電話します。電話する日を手紙の中で先に伝えておくと、相手も電話を受ける心づもりができ、受付でも「(日付)にお手紙をお送りした(自社名)です」と名乗れます。何日後が良いかについて公的な目安は見つからなかったので、郵便が届くまでの日数を見込んで社内で決め、担当者全員でそろえてください。

出典