法人営業とは、企業や団体に自社の商品やサービスを売る営業です。個人営業との違いは、使う人と決める人が分かれ、社内の検討に時間がかかる点にあります。まずは相手の会社で決裁がどう流れるかをつかみ、誰に、いつ、何を渡すかを決めることから始めます。そのうえで、進め方の段階ごとに「次へ進んだと言える条件」を決め、足りない人手を採用・派遣・外部への委託のどれで埋めるかを選びます。
この記事は、法人向けに販路を広げたい経営者や、法人営業の体制を初めてつくる責任者に向けて書いています。法人営業職への転職や年収、向き不向きを調べている方向けの内容ではありません。
この記事で分かること
- 法人営業の意味と、個人営業との違い(決める人・判断の基準・検討の進み方)
- 狙う会社選びから契約までの5つの段階と、決裁者に届くまでに渡す材料
- 採用・派遣・営業代行や人材アサインの違いと、体制の選び方
法人営業とは|企業や団体を相手に、社内の検討を経て契約する営業
法人営業の相手は、企業・団体・官公庁などの組織です。自社の商品やサービスを提案し、契約につなげるまでを担います。BtoB営業という呼び方もあります。相手が組織なので、契約するかどうかは担当者一人の好みではなく、会社の予算や目標、社内の決まりに沿って判断されます。
法人営業の仕事は、大きく2つに分かれます。ひとつは、まだ取引のない会社に接点をつくり、商談につなげる新規開拓です。もうひとつは、すでに取引のある会社に継続して納め、追加の注文や別の部署での導入につなげる既存顧客への営業です。どちらを重く見るかで、必要な人数や動き方が変わります。新規開拓を増やしたいのか、既存顧客からの売上を伸ばしたいのかを先に決めておくと、この後の進め方と体制の選び方を考えやすくなります。
扱う商材は、業務用の機器やソフトウェア、原材料、清掃や人材などのサービスまで幅広くあります。同じ法人営業でも、1回の商談で決まる取引もあれば、複数の部署を回って時間をかけて決まる取引もあります。この記事では、後者のように社内の検討を経て決まる取引を中心に説明します。
個人営業との違い|使う人と決める人が分かれ、検討に時間がかかる
個人営業は、個人や家庭を相手に、本人や家族が使う商品やサービスを売る営業です。相手の困りごとを聞いて提案する点はどちらも同じですが、誰が決めるか、何を基準に決めるかが違います。どちらに向けて売るかは、担当者の向き不向きではなく、商材を使う相手が事業者か家庭かで決まります。
| 観点 | 法人営業 | 個人営業 |
|---|---|---|
| 売る相手 | 企業・団体・官公庁などの組織 | 個人・家庭 |
| 使う人と決める人 | 分かれることが多い(現場の担当者が使い、部門長や経営者が決める) | 同じ人か、家族の中で決まることが多い |
| 判断の基準 | 費用に見合う効果、業務への影響、予算の時期や社内の決まり | 本人の好みや必要性、家計 |
| 検討の進み方 | 担当者が社内に説明し、比較や稟議を経て決まる | 本人がその場や短い期間で決めることもある |
| 契約の後 | 継続取引や追加の注文、別の部署への広がりを前提にすることが多い | 1回の購入で終わる取引も多い |
出典: 編集部による一般的な整理(統計にもとづく数字はありません)
使う人と決める人が分かれる
法人営業では、話を聞いてくれた担当者が、そのまま契約を決める人とは限りません。担当者が良いと思っても、上司や予算を持つ部署、経営者が納得しなければ話は進みません。そのため、担当者を説得するだけでなく、担当者が社内で説明するときに使える材料を渡すことまでが営業の仕事に含まれます。
社内の検討に時間がかかる
組織が何かを買うときは、比べる会社を集める、見積もりを取る、稟議を回す、予算の時期を待つ、といった手順を踏むことが多く、個人の買い物より決まるまでに時間がかかりやすくなります。商談の回数が増えるほど、案件がどこまで進んでいるかを記録しておかないと、追いかける順番を誤ります。
なお、特定商取引法の訪問販売・電話勧誘販売の規定は、相手が営業のために結ぶ契約には適用されません(同法第26条第1項第1号)。ただし消費者庁の通達は、相手が事業者や法人であることだけで一律に適用除外とするものではないとし、主に個人用・家庭用に使うための契約には原則として適用され、事業の実態がほとんどない零細事業者の場合は適用される可能性が高いとしています。
法人営業の進め方|5つの段階ごとに次へ進む条件を決める
法人営業は、狙う会社を決めてから契約するまで、いくつかの段階を順に進みます。段階ごとに「何ができたら次へ進んだと言えるか」を決めておくと、担当者によって報告の中身がばらつかず、どこで止まっているかを見つけやすくなります。
| 段階 | やること | 次へ進む条件の例 |
|---|---|---|
| 1. 狙う会社を決める | 業種・規模・地域・抱えていそうな課題から、商材が役に立つ会社の条件を書き出し、リストにする | 連絡する会社と優先順位が決まっている |
| 2. 最初の接点をつくる | 電話、問い合わせフォーム、紹介、展示会、訪問などで連絡し、話を聞く約束を取る | 課題を聞くための商談の日時が決まっている |
| 3. 課題と決め方を聞く | 困りごと、今のやり方、検討の時期、誰が関わり誰が決めるかを聞く | 課題と、決裁までの流れが分かっている |
| 4. 提案と見積もりを出す | 聞いた課題に合わせて、効果・費用・導入の手順を資料にまとめて出す | 相手の社内で検討が始まっている |
| 5. 検討を支えて契約する | 質問への回答、比較のための資料、決裁者への説明を重ねる | 契約するか、見送りの理由が分かっている |
出典: 編集部による一般的な整理(統計にもとづく数字はありません)
2段階目|接点のつくり方は商材で選ぶ
最初の接点のつくり方は、商材の単価や、狙う会社の数によって向き不向きがあります。電話で数多く当たるのが合う商材もあれば、紹介や展示会のように相手との関係から入るほうが合う商材もあります。テレアポ・フォーム・紹介・広告・代行の違いは、中小企業の新規開拓方法の比較で整理しています。
4段階目|提案書は決裁者が読む前提で作る
提案書は、会った担当者ではなく、その先にいる決裁者が読む前提で作ります。担当者が説明を足さなくても、何が解決し、いくらかかり、どう進めるかが伝わる構成にしておくと、社内の検討で話がずれにくくなります。決裁者が気にする論点に答える構成は、受注に近づく提案書の作り方を参考にしてください。
5段階目|検討中の案件は顧客の事実で見込みを分ける
5段階目は、相手の社内の検討を待つ時間が長くなりやすい段階です。案件ごとに相手の会社で何が起きたか(比較の相手が決まった、稟議に上がったなど)を記録し、見込みの高さを同じ基準で分けておくと、追いかける順番を決めやすくなります。見込みの分け方は、ヨミ管理のやり方で詳しく扱っています。
3段階目で誰が関わり誰が決めるかを聞けていないと、4段階目以降で話が止まりやすくなります。次の節では、この決裁の流れに合わせた進め方を説明します。
決裁者に届く進め方|誰に、いつ、何を渡すかを先に決める
法人営業で話が止まる場面の多くは、担当者までは話が進んでいるのに、その先の人に必要な材料が届いていない場面です。決裁の流れに合わせて、関わる人、渡す材料、渡す時期の3つを先に決めておきます。
関わる人を役割で書き出す
商談で出てきた人を、名前ではなく役割で書き出します。たとえば、実際に使う人、比較や選定を任されている人、予算を持つ人、最後に決める人、導入の手続きに関わる部署(情報システム・経理・法務など)です。一人が複数の役割を持つこともあれば、まだ会えていない役割が残っていることもあります。会えていない役割があれば、それが次の商談で確かめることになります。
役割ごとに渡す材料を変える
使う人には、仕事がどう楽になるか、切り替えにどんな手間がかかるかを伝えます。予算を持つ人や決める人には、費用とその見返り、導入しなかった場合に残る課題、進め方と途中でやめる場合の条件を伝えます。担当者が上司に説明するときにそのまま使える要約を用意しておくと、担当者の言い換えで中身が変わるのを防げます。
渡す時期を相手の社内の予定に合わせる
予算を決める時期、稟議を回す会議の日、比べる他社の提案が出そろう時期を、商談のなかで聞いておきます。材料は、その予定に間に合うように逆算して渡します。予定が分からないまま提案を出すと、比較の途中で後回しにされたり、予算の時期を逃したりしやすくなります。
決裁者に会う手段を選ぶ
決裁者と話す機会をつくる手段には、訪問して直接会う、担当者に次の商談への同席を頼む、経営者に届きやすい手段で最初の接点をつくる、などがあります。現場や設備を見て提案する必要がある商材では訪問が合うことがあり、進め方は法人向け訪問営業のコツと進め方で説明しています。商談を担う役割についてはフィールドセールスとはで、こちらから連絡して接点をつくる営業についてはアウトバウンド営業とはで扱います。
法人営業の体制の選び方|採用・派遣・営業代行や人材アサインを比べる
進め方が決まったら、それを誰が担うかを決めます。人手が足りない場合の選び方は、自社で採用する、派遣会社から労働者派遣を受ける、営業代行や人材アサインで外部の会社に任せる、の3つに分けて考えると比べやすくなります。
採用を考える場合は、募集してから人がそろうまでの見通しも考えに入れておきます。ハローワークの数字ですが、厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、2026年7月の「営業職業従事者」の有効求人倍率は2.05倍(パートタイムを含む常用、原数値)でした。ハローワークを通した求人と求職だけの数字で、民間の転職サイトや人材紹介の求人は含みません。統計の読み方は営業の人手不足を公的統計で見た記事にまとめています。
3つの選び方の違い
| 選び方 | 仕組み | 合いやすい状況 | 確認しておくこと |
|---|---|---|---|
| 自社で採用する | 自社が雇用し、自社が仕事の指示を出す | 長く続ける営業で、やり方や顧客との関係を社内に残したい | 募集と教育にかかる時間。社内に教える人がいるか |
| 労働者派遣を受ける | 派遣会社が雇用する人に、受け入れる自社が指示を出して働いてもらう | 自社のやり方が決まっていて、日々の指示を出せる管理者がいる | 派遣会社が厚生労働大臣の許可を受けているか。受け入れの条件は派遣会社に確かめる |
| 営業代行・人材アサインで外部に任せる | 外部の会社に、任せる段階と成果として数える地点を決めて依頼する | 社内に教える人や時間が足りない。どの接点のつくり方が合うかを試したい | 契約の形(業務委託か派遣か)。業務委託なら、要望を誰を通して伝えるか |
出典: 労働者派遣の定義と許可は労働者派遣法 第2条第1号・第5条第1項(e-Gov法令検索、2026-09-15確認)。そのほかは編集部による一般的な整理
外部に任せるときは、指示の通り道を先に決める
外部に任せる場合に気をつけたいのは、契約の名前ではなく実態で判断される点です。厚生労働省の疑義応答集は、準委任などのいわゆる業務委託の形でも、発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に当たるとしています。営業を請け負ったスタッフに発注側が顧客への営業上の対応方針などを直接指示している場合は、労働者派遣事業と判断されるという回答もあります。業務委託で任せるなら、要望は相手の会社の責任者に伝える形を契約前に決めておきます。
自社に残す段階を先に書き出す
どの選び方でも、進め方の5つの段階のうち、どこを自社に残し、どこを任せるかを先に書き出すと比べやすくなります。たとえば、狙う会社の決定と契約の判断は自社に残し、最初の接点づくりと商談の日程調整を外部に任せる、という分け方があります。売り先と決裁の流れから任せる工程を決める手順は、BtoB営業代行の選び方で詳しく説明しています。
エイギョウブに相談する場合
当メディアを運営するLongWave株式会社のエイギョウブは、営業支援サービスです。サービスページに掲げている流れは、ヒアリング、支援計画作成(KPI・PL設計、体制の提案)、契約、アサイン・稼働開始の順です。実行支援のメニューとして、電話営業(BDR/SDR)、フォームDM(1日最大500件のアプローチ)、SNS運用(LinkedIn)、交流会・展示会、即戦力人材アサイン(最短数日で稼働)、マルチチャネルを掲げています。
サービスページでは、支援企業は100社以上と掲載しています。料金は月額の目安(税別)で、トライアル30万円〜/月、スタンダード50万円〜/月、エンタープライズは個別見積りです。実際の金額は支援範囲や体制に応じて変わります。
相談の前に、この記事の進め方の表のうち任せたい段階と、自社に残したい判断を書き出しておくと、提案の中身を確かめやすくなります。人材アサインを含め、どの契約の形で進めるかは、相談の際に確認してください。
まとめ
- 法人営業の相手は企業や団体で、個人営業と比べると、使う人と決める人が分かれ、社内の検討に時間がかかります。
- 進め方は、狙う会社を決める、接点をつくる、課題と決め方を聞く、提案する、検討を支えて契約する、の5つの段階に分け、段階ごとに次へ進む条件を決めます。
- 決裁者に届けるには、関わる人を役割で書き出し、役割ごとに渡す材料と、相手の社内の予定に合わせた渡す時期を決めます。
- 体制は、採用・派遣・営業代行や人材アサインの中から、自社に残す段階と指示の通り道を決めたうえで選びます。
よくある質問(FAQ)
- 法人営業とは何ですか?
- 法人営業とは、企業・団体・官公庁などの組織を相手に、自社の商品やサービスを提案して契約につなげる営業です。BtoB営業とも呼ばれます。まだ取引のない会社に接点をつくる新規開拓と、取引のある会社に継続して納めて追加の注文につなげる既存顧客への営業に分かれます。相手が組織なので、契約は担当者一人の好みではなく、予算や社内の決まりに沿って判断されます。話を聞いた担当者の先で誰が決めるのかを確かめながら進めます。
- 法人営業と個人営業の違いは何ですか?
- 大きな違いは、使う人と決める人が分かれることと、社内の検討に時間がかかることです。個人営業では本人や家族が使い、そのまま決めることが多いのに対し、法人営業では現場の担当者が使い、部門長や経営者が費用や効果を見て決めることが多くなります。そのため法人営業では、担当者が社内で説明できる材料を用意し、稟議や予算の時期に合わせて渡すことが求められます。どちらに向けて売るかは、商材を使う相手が事業者か家庭かで決まります。
- 法人の新規開拓は何から始めればよいですか?
- 最初に、商材が役に立つ会社の条件を書き出し、連絡する会社と優先順位を決めることから始めます。条件は業種・規模・地域・抱えていそうな課題などで決め、リストにします。次に、電話・問い合わせフォーム・紹介・展示会・訪問などから、商材の単価や狙う会社の数に合う手段を選んで接点をつくります。最初の商談では課題に加えて、検討の時期と誰が決めるかを聞いておくと、提案の後で話が止まりにくくなります。
- 法人営業は外部に任せられますか?
- 任せる方法はあります。営業代行や人材アサインのように外部の会社に任せる方法と、派遣会社から労働者派遣を受ける方法があり、自社で採用する方法と比べて選びます。外部に任せるときは、狙う会社の決定や契約の判断など自社に残す段階と、任せる段階を先に分けておきます。業務委託の形で任せる場合、発注側がスタッフに営業上の対応方針などを直接指示すると労働者派遣事業と判断されることがあるため、要望は相手の会社の責任者を通して伝える形にします。
出典
- 特定商取引に関する法律 第26条第1項第1号(e-Gov法令検索・2026年8月12日施行版)確認日 2026-09-15
- 特定商取引に関する法律等の施行について 第5節(雑則)関係(消費者庁・経済産業省、令和6年11月19日)確認日 2026-09-15
- 一般職業紹介状況(令和8年7月分)参考統計表(厚生労働省・2026年8月28日公表)確認日 2026-09-15
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第2条第1号・第5条第1項(e-Gov法令検索)確認日 2026-09-15
- 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集(第3集)Q1(厚生労働省)確認日 2026-09-15
- 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集(第2集)問1(厚生労働省)確認日 2026-09-14



