紹介営業は、紹介してほしい相手の条件を具体的に伝え、そのまま転送できる文面を渡し、紹介後の報告まで決めておくと続きます。「いい方がいたら紹介してください」とお願いするだけでは、頼まれた側は誰を思い浮かべればよいか決められず、紹介が来るかどうかは相手の記憶と気分に任せたままになります。
この記事は、取引先や既存の顧客からの紹介を、新規の商談をつくる安定した経路にしたい中小企業の経営者・営業責任者に向けて書いています。人材紹介会社の営業や、個人のお客様どうしの紹介(友人紹介の特典など)は扱いません。また、紹介経由の商談がほかの経路より成約しやすいかを同じ条件で比べた統計は確認できなかったため、成約率の数字は示していません。
この記事で分かること
- 紹介営業(リファラル営業)の意味と、代理店・取次・営業代行との違い
- 紹介が止まる6つの原因と、紹介してほしい相手を1文にする書き方、そのまま使える依頼・転送・報告の例文3つ
- 紹介先の連絡先を受け取るときの段取りと、紹介料を払う前に確かめる業界の規定
紹介営業とは|既存の顧客や取引先に、次の見込み客をつないでもらう営業
紹介営業とは、すでに取引のある顧客や取引先、知人などに、自社の商品やサービスを必要としていそうな相手を紹介してもらい、そこから商談をつくる営業のやり方です。紹介者が間に入るので、初めて話す相手にも「あの方の知り合いなら」と話を聞いてもらいやすくなります。電話やメールで一から接点をつくる方法との違いは、この最初の信用を紹介者から借りられる点にあります。
リファラル営業も同じ意味で使われます。リファラル(referral)は英語で「紹介」を意味する言葉です。なお「リファラル採用」は社員に知人を紹介してもらう採用の方法で、営業の話ではないのでこの記事では扱いません。
代理店・取次との違い|契約で紹介してもらうか、好意でつないでもらうか
紹介してもらう点で似ているのが代理店や取次です。代理店・取次は、契約に基づいて自社の商品を売ったり、見込み客を取り次いで手数料を受け取ったりする相手で、紹介すること自体が相手の仕事になっています。これに対して紹介営業の紹介者は、そうした契約を結んでいないことが多く、取引の関係や好意からつないでくれる相手です。
| 項目 | 紹介営業(リファラル営業) | 代理店・取次 | 営業代行 |
|---|---|---|---|
| つなぐ・売る人 | 既存の顧客・取引先・知人 | 契約した販売店・取次店 | 契約した営業代行会社 |
| 契約 | 結ばないことが多い | 代理店契約・取次契約を結ぶ | 業務委託の契約を結ぶ |
| 見返り | お礼にとどめる場合と、紹介料を払う場合がある | 手数料や仕入れ値との差額を契約で決める | 固定の報酬や成果報酬を契約で決める |
| 件数の見通し | 紹介者の都合で決まり、計画しにくい | 代理店の販売力に左右される | 活動の量を契約で決められる |
出典: 編集部作成。一般的な形を整理したもので、特定の調査の数字は含みません。
代理店と営業代行の違いや、地方へ販路を広げるときの選び方は、代理店と営業代行の違いで詳しく比べています。紹介営業は契約のない好意に支えられているぶん、頼み方と紹介後の扱い方で続くかどうかが決まります。
紹介が止まる理由|頼む側の準備で防げるものが多い
最初の数件で紹介が止まったときは、紹介者の気持ちを推し量る前に、頼む側の準備に次の6点の抜けがないかを先に確かめます。
- 紹介してほしい相手を伝えていない。「どなたかいれば」では、紹介者は自分の取引先の中から誰を選べばよいか決められません。
- 紹介者が先方に説明する言葉を持っていない。自社が何の会社で、会うと先方にどんな得があるのかを、紹介者が自分の言葉で組み立てるのは負担です。
- 頼むきっかけが一度きりになっている。一度お願いしただけでは、紹介者が該当する相手に会ったときに自社を思い出してもらえません。
- 紹介のあと、どうなったかを報告していない。紹介者は、自分がつないだ相手に迷惑をかけていないかを気にしています。何も聞かされないと、次の紹介をためらう理由になります。
- 紹介された相手への連絡が遅い、または売り込みになっている。紹介者の顔に関わるため、最初の連絡の仕方がそのまま次の紹介に響きます。
- 頼んでいるのが社長など一部の人の人脈だけ。頼む人が限られると、その人が忙しい時期や、つきあいの相手が異動した時期に紹介も止まります。
このうち最初の3つは、頼む前に文章を用意しておけば防げます。あとの3つは、紹介を受けたあとの段取りを決めておくことで防げます。次の節から、準備の順に見ていきます。
紹介してほしい相手を1文にする
紹介を頼む前に、紹介してほしい相手を1文で言える形にしておきます。業種・規模・地域・状況・会いたい役職の5つを埋めると、紹介者は自分の取引先の中から当てはまる相手を思い浮かべやすくなります。
| 要素 | 決め方 | 記入例 |
|---|---|---|
| 業種 | 自社の商品やサービスで成果が出た取引先の業種を並べ、多いものから選ぶ | 金属加工の製造業 |
| 規模 | 従業員数か売上の幅で書く。「中小企業」だけでは広すぎる | 従業員30〜100名ほど |
| 地域 | 訪問や対応ができる範囲に絞る | 県内と隣の県 |
| 状況・困りごと | 先方が口にしそうな言葉で書く | ベテランが退職して見積もりが回らない |
| 会いたい役職 | 決裁する人か、困りごとを抱えている人か | 社長か工場長 |
出典: 編集部作成。記入例は書き方を示すための架空の例で、特定の会社の事例ではありません。
5つをつなげると「県内で、従業員30〜100名ほどの金属加工の会社で、ベテランが退職して見積もりが回らなくなっている社長か工場長の方にお心当たりがあれば、おつなぎいただけないでしょうか」のような1文になります。
あわせて、紹介してほしくない相手も決めておきます。対応できない地域の会社や、すでに取引のある会社の関連会社などです。紹介者がせっかくつないでくれた相手をこちらから断ることになると、紹介者の顔をつぶしてしまいます。
条件を細かくすると紹介の数が減るのではと心配になるかもしれません。ただ、条件が具体的なほど紹介者は「あの会社のことだ」と思い当たりやすくなり、会ってから断る紹介も減らせます。条件は一度で決めきらず、紹介が来た相手と成約した相手を見比べて直していきます。
依頼と転送用の例文3つ|そのまま使える文面をこちらで用意する
紹介者の手間を減らすには、頼むときの言葉と、紹介者が先方にそのまま送れる文面をこちらで用意しておきます。次の3つの例文の( )の部分を、自社の内容に置き換えて使ってください。
例文1 紹介をお願いするとき
(紹介者のお名前)様
いつもお世話になっております。(自社名)の(自分の名前)です。ひとつお願いがございます。弊社は(商品・サービス)で、(相手の困りごと)の解決をお手伝いしています。(紹介してほしい相手の1文)にお心当たりがございましたら、おつなぎいただけますと幸いです。
ご紹介の際にそのままお使いいただける短いご案内文を、このあとお送りします。先方のご迷惑になるような売り込みはいたしません。ご紹介いただいた後の経過も、こちらからご報告します。
頼む場面は、紹介者が自社のサービスに満足していることを話題にした直後が向いています。納品や導入が終わったとき、成果を報告したとき、定例の打ち合わせの最後などです。口頭でお願いした場合も、同じ内容をメールで送っておくと、紹介者が後から読み返せます。
例文2 紹介者が先方にそのまま転送できる紹介文
(先方のお名前)様
いつもお世話になっております。(紹介者の会社名)の(紹介者のお名前)です。弊社の取引先の(自社名)さんをご紹介させてください。(自社名)さんは(商品・サービスを1文で)をしている会社で、弊社でも(紹介者が実際に頼んでいる内容)を任せている会社です。
先日お話しされていた(先方の困りごと)について、一度話を聞いてみると参考になるかもしれないと思い、ご連絡しました。
ご興味があれば、(自社名)の(担当者名)さんからご連絡してもよいか、このメールにご返信ください。ご興味がなければ、そのままで構いません。
この文面で気をつけたいのは3点です。1つ目は、「(紹介者が実際に頼んでいる内容)」の欄を自社で勝手に埋めず、紹介者に書いてもらうか空けたまま渡すことです。紹介者の実感がそのまま紹介の中身になります。2つ目は、最後に「そのままで構いません」と先方が断りやすい一文を入れることです。3つ目は、連絡してよいかを先方に尋ねる形にしていることで、これは次の節で触れる連絡先の扱いにもつながります。
例文3 紹介の後の報告とお礼
(紹介者のお名前)様
先日は(先方の会社名)の(先方のお名前)様をおつなぎいただき、ありがとうございました。(日付)にお打ち合わせの時間をいただき、(話した内容を1文で)についてお話ししました。次は(次の予定)の予定です。
進み具合は、また改めてご報告します。引き続きよろしくお願いいたします。
報告は、商談の結果が出てからまとめて送るのではなく、最初に会った直後と、結果が決まった時点の2回に分けると、紹介者が気にかけ続けずに済みます。成約しなかった場合も、差し支えのない範囲で結果を伝えます。改まった形でお礼を伝えたいときは、手書きの手紙も選べます。書き方と例文は手紙営業のやり方と例文で紹介しています。
紹介先の連絡先を受け取るとき|先方の了承を先にもらう
紹介者から「この人に連絡してみて」と、先方の名刺の写しや連絡先だけを渡されることがあります。個人情報保護法は、個人データを第三者に提供するには、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意が必要と定めています(第27条第1項)。紹介者の手元の連絡先がこれに当たるかどうかは状況によりますが、受け取る側としては、紹介者から先方の了承をもらってもらい、そのうえで連絡先を受け取るか、先方から連絡してもらう段取りにしておくと安心です。
例文2の最後で「ご連絡してもよいか」を先方に尋ねているのはこのためです。先方から返信をもらえたら、紹介者も入れた3者のメールで日程を決めると、紹介者も経過を把握でき、例文3の報告も短く済みます。
紹介料を払う前に確かめること|業界の規定と、書面での約束
紹介が続くと、紹介者にお礼として紹介料を払うかどうかを考える場面が出てきます。紹介料の一般的な金額の目安は、この記事で確かめた範囲では信頼できる資料が見つからなかったため示していません。金額を決める前に、次の3点を確かめてください。
- 自社の業界に、紹介の対価を払うことを制限する規定がないか
- 紹介者の業界や勤務先に、紹介の対価を受け取ることを制限する決まりがないか
- 誰に、何が成立したときに、いくらを、いつ払うかを書面にしたか
3つ目を書面にしておくのは、口約束のままだと、何をもって成約とするかや支払いの時期で後から行き違いが起きやすいためです。「紹介した会社と面談した時点」なのか「契約した時点」なのかで、払う側と受け取る側の受け止め方は変わります。決まった相手に紹介料を払い続ける関係は、上で触れた取次に近づいていくので、その場合は取次の契約として内容を整えることも考えてください。
士業は、紹介の対価に関わる規定を先に確かめる
弁護士については、日本弁護士連合会の弁護士職務基本規程が、依頼者の紹介を受けたことに対して謝礼その他の対価を支払うことと、紹介したことに対して対価を受け取ることを禁じています(第13条)。司法書士についても、日本司法書士会連合会の司法書士行為規範が、名目を問わず、依頼者の紹介を受けたことへの対価の支払と、紹介したことへの対価の受取を禁じています。
社会保険労務士については、茨城県社会保険労務士会のFAQが、企業が社労士事務所を紹介して社労士事務所から紹介料を受け取る行為について、社会保険労務士法第23条の2に抵触すると回答しています。同じFAQは、社労士が知人や取引先から顧客を紹介される場合は該当しないとも述べています。税理士については、税理士会の綱紀規則(準則)が、税理士法第52条などに違反する者やその疑いのある者から業務上のあっせんを受けたり、紹介したりすることを禁じています。紹介料一般を禁じる規定は、確認した資料には見つかりませんでした。
具体的な契約がこれらに当たるかは個別に判断されるため、所属する会に確かめてください。士業が集客を外に任せるときの線引きは、士業の営業代行は違法かで資格ごとにまとめています。
介護・医療・不動産は、分野ごとの決まりを確かめる
介護の分野で紹介のお礼を考えている場合は、介護の営業代行で、事業所がケアマネジャー・相談員へ営業するときの決まりを先に確かめてください。
医療機関を相手にする営業や、医療機関が紹介料を払う形については、医療の営業代行で紹介料に関わる決まりを整理しています。
不動産では、宅地建物取引業者が免許のない紹介者や営業代行会社に紹介料や成果報酬を払ってよいかを示した国土交通省の資料は、確認した範囲では見つかりませんでした。売買や賃貸の媒介との線引きは不動産の営業代行で扱っています。
紹介だけに頼らない|件数を自社で決められる経路と組み合わせる
紹介営業は、紹介者の都合で件数が決まるため、来月に何件の商談が入るかを自社で読むことができません。紹介が多い時期に営業の手を広げていても、紹介者の事業が忙しくなったり、窓口の担当者が異動したりすると紹介は止まります。紹介が続く仕組みを整えたうえで、件数を自社で決められる経路と組み合わせておくと、売上の見通しを立てやすくなります。
テレアポ・フォーム営業・訪問・営業代行などの方法をどう選ぶかは、中小企業の新規開拓営業の方法を比較で比べています。建設業で、紹介や元請けに頼った受注の偏りを測る方法は建設業の新規開拓で扱っています。
エイギョウブは、営業のチャネルとして電話・DM・SNS・訪問・手紙・紹介・交流会の7以上を掲げています。支援はヒアリングから始まり、KPI・PL設計と体制の提案を含む支援計画を作ったうえで、契約、アサイン・稼働開始へ進みます。エイギョウブ(総合)の料金は月額40万円〜で、支援範囲・体制に応じて提案します。
まとめ
紹介営業は契約のない好意に支えられた経路なので、頼み方と紹介後の扱い方で続くかどうかが決まります。
- 紹介してほしい相手を、業種・規模・地域・状況・役職の1文にして伝える
- 紹介者がそのまま転送できる紹介文を渡し、先方が断りやすい一文を入れておく
- 先方の了承を先にもらってから連絡先を受け取り、最初に会った後と結果が出た後に報告する
- 紹介料は金額より先に、自社と紹介者の業界の規定を確かめ、支払いの条件を書面にする
- 紹介だけに頼らず、件数を自社で決められる経路と組み合わせる
よくある質問(FAQ)
- 紹介営業とは何ですか?
- 紹介営業とは、既存の顧客や取引先、知人に、自社の商品やサービスを必要としていそうな相手を紹介してもらい、そこから商談をつくる営業のやり方です。リファラル営業とも呼ばれます。紹介者が間に入るので、初めて話す相手にも話を聞いてもらいやすい点が、電話やメールで一から接点をつくる方法との違いです。一方で件数は紹介者の都合で決まるため、紹介してほしい相手を1文で伝え、転送用の文面を渡し、紹介後に報告する段取りまで決めておくと続きやすくなります。
- 紹介はどのタイミングで頼めばよいですか?
- 紹介者が自社のサービスに満足していることを話題にした直後が頼みやすい場面です。たとえば納品や導入が終わったとき、成果を報告したとき、定例の打ち合わせの最後などです。一度頼んで終わりにせず、紹介してほしい相手の1文と転送用の紹介文をメールで渡しておくと、紹介者が当てはまる相手に会ったときに思い出してもらいやすくなります。取引が始まったばかりで、まだ成果を見てもらえていない時期は避けたほうが無難です。
- 紹介してくれた人に紹介料は払うべきですか?
- 払うかどうかを決める前に、業界の規定と書面での約束を確かめてください。弁護士と司法書士は、会規や行為規範で依頼者の紹介に対する対価の支払と受取が禁じられています。社労士や税理士にも、紹介やあっせんに関わる規定や所属会の見解があります。紹介者の勤務先の決まりで受け取れない場合もあります。払う場合は、誰に、何が成立したときに、いくらを、いつ払うかを書面にします。紹介料の一般的な金額の目安は、信頼できる資料が見つからなかったため示していません。
- 紹介が来なくなったらどうすればよいですか?
- 紹介者の気持ちが離れたと考える前に、紹介してほしい相手を具体的に伝えているか、紹介後の報告をしているかを見直してください。そのうえで、紹介が来た相手と成約した相手を見比べて条件を直し、頼む相手を社長の人脈だけでなく、現場の担当者どうしのつきあいにも広げます。それでも件数が読めない場合は、テレアポや訪問など、件数を自社で決められる経路と組み合わせることを考える時期です。
出典
- 個人情報の保護に関する法律 第27条第1項(e-Gov法令検索、2026-07-17施行の現行版)確認日 2026-09-19
- 弁護士職務基本規程 第13条(日本弁護士連合会、平成16年会規第70号、最終改正 令和3年6月11日)確認日 2026-09-19
- 司法書士行為規範 第12条・第13条(日本司法書士会連合会)確認日 2026-09-14
- 社労士と社労士制度 よくある質問(Q&A FAQ)「社労士でない者の業務制限と業務侵害行為」(茨城県社会保険労務士会)確認日 2026-09-19
- ○○税理士会綱紀規則(準則) 第23条・第24条(日本税理士会連合会、最終変更 令和4年11月22日)確認日 2026-09-14
- 税理士法 第37条の2・第52条(e-Gov法令検索)確認日 2026-09-14



