営業戦略は、誰に・何を・どの経路で・どの体制で売るかを決めたもので、戦術はそれを動かす手順です。中小企業は目標から逆算して1枚にまとめ、四半期ごとに数字で見直すのが扱いやすい形です。分厚い計画書を作るより、社内の誰が読んでも同じ動きになる1枚を先に作るほうが、実行に移るまでが早くなります。

この記事は、営業戦略を初めて文書にする中小企業の経営者・営業責任者に向けて書いています。大企業の全社的な経営戦略や、事業部ごとの中期計画の作り方は扱いません。また、営業戦略を立てた会社と立てていない会社の成果を比べた公的な統計は確かめられなかったため、成果の割合の数字は載せていません。

この記事で分かること

  • 営業戦略・営業戦術・マーケティング戦略の違いを、決めることと期間で並べた表
  • 目標の数字から逆算する5つの手順と、迷った段階ごとに使い分ける考え方の道具4つ
  • 営業戦略を1枚にまとめる表の見本と、四半期ごとに数字で見直すときの問い

営業戦略とは|誰に・何を・どの経路で・どの体制で売るかを決めたもの

営業戦略とは、売上の目標を達成するために、どの会社に(売り先)、どんな価値を(提供価値)、どの経路で届け(経路)、誰がどれだけ動くか(体制)を決めたものです。言い換えると、限られた人と時間をどこに使い、どこには使わないかを決めることです。

営業戦略とよく混同される言葉に、営業戦術とマーケティング戦略があります。3つは決める範囲が違うので、先に並べておきます。

言葉 決めること 見直す間隔の目安 答えの形
営業戦略 売り先・提供価値・経路・体制と、追う数字 四半期〜1年 「〇〇業の従業員△名規模の会社に、□□の課題を解決する提案を、電話と訪問で届ける」
営業戦術 戦略を動かす具体的な手順(リスト、トーク、提案書、訪問の順番など) 週〜月 「最初の電話では課題を2つだけ聞き、資料を送る約束を取る」
マーケティング戦略 どの市場で、どんな商品を、いくらで、どう知ってもらうか 半年〜数年 「この市場に、この価格帯の商品を出し、展示会と自社サイトで知ってもらう」

出典: 編集部が作成した整理。言葉の範囲は会社や書籍によって違いがあります。

営業戦術との違い

営業戦略が「どこで戦うか」を決めるのに対し、営業戦術は「決めた場所でどう動くか」を決めます。戦略が決まっていないまま戦術だけを磨くと、トークの改善や架電件数の増加に力を注いでも、そもそも相手が買う理由を持たない会社に連絡し続けることになりかねません。反対に、戦略だけを書いて戦術に落とさないと、現場は明日何をすればよいかが分からず、計画が紙のまま残ります。

マーケティング戦略との違い

マーケティング戦略は、市場の選び方、商品、価格、知ってもらう方法までを含む広い計画です。営業戦略はその中で、見込みのある会社に接触し、商談をして、受注するまでの部分を受け持ちます。小さな会社では両方を同じ人が考えることも多いので、無理に分けて書くより、営業戦略の1枚に「どう知ってもらうか」の欄を1行添えておくと、話がつながります。

小さな会社にも営業戦略が必要な理由

2026年版小規模企業白書によると、最も重視する経営課題として「受注・販売の拡大」を挙げた割合は、小規模事業者で36.6%と最も高く、中規模企業でも29.0%で「人材確保」(44.7%)に次ぐ2番目でした(第1-1-13図)。売上を伸ばしたいのに、使える人と時間は限られています。だからこそ、どこに力を集めるかを先に決めておく意味があります。

営業戦略の立て方|目標から逆算する5つのステップ

営業戦略は、次の5つの順番で決めると、途中で話が戻りにくくなります。先に目標の数字を置き、そこから必要な受注件数と商談数を逆算していくのが基本の流れです。

ステップ 決めること 手元に用意する材料
1. 目標 期間内の売上・粗利と、そこから逆算した受注件数・商談数 過去1〜2年の受注の記録(単価・件数・受注までの期間)
2. 売り先 業種・規模・地域・相談相手の役職 受注した会社と失注した会社の一覧
3. 提供価値 相手のどの困りごとを、他の選択肢と比べてどう解決するか 既存顧客が発注を決めた理由の聞き取り
4. 経路 最初の接触をどの手段で行い、どの順で商談までつなぐか これまでの受注が、どのきっかけから生まれたかの記録
5. 体制と数字 誰が何を担当し、どの数字を毎週・毎月見るか 営業に使える人数と1人あたりの時間

出典: 編集部が作成した整理(2026-09-19時点)。

ステップ1〜2|目標を数字にし、売り先を絞る

最初に、期間内に達成したい売上と粗利を決めます。次に「必要な受注件数=売上目標÷平均の受注単価」「必要な商談数=受注件数÷商談からの受注率」と逆算します。受注率は業界の平均ではなく、自社の過去の記録から出すのが基本です。記録が無い場合は、仮の値で置いて四半期後に実績で置き換えると決めておきましょう。

売り先は、過去に受注した会社の共通点から探します。業種、従業員の規模、地域、最初に話を聞いてくれた人の役職、発注までにかかった期間を並べると、自社が選ばれやすい会社の姿が見えてきます。「どんな会社にも売れる」と書きたくなりますが、売り先を広げるほど1社あたりにかけられる時間は減ります。

ステップ3〜5|提供価値・経路・体制を決める

提供価値は、自社が言いたいことではなく、相手が発注を決めた理由から書きます。既存顧客に「なぜ当社に決めたのか」「他にどんな選択肢を比べたのか」を聞くと、そのまま提案の言葉に使える答えが集まります。

経路は、売り先に届きやすい手段を選びます。電話、問い合わせフォーム、手紙、訪問、紹介、展示会など、どの手段が合うかは相手の業種や規模で変わります。最後に体制として、誰が最初の接触を担い、誰が商談と受注を担うかを決め、ステップ1で逆算した商談数を回せる人数と時間があるかを確かめます。足りない場合は、目標か売り先か体制のどれかを見直します。

営業戦略で使うフレームワーク|4つを場面で使い分ける

フレームワークは、考える順番を助ける道具です。種類はたくさんありますが、中小企業が営業戦略を1枚にまとめる段階では、次の4つで足ります。表をすべて埋めることが目的ではないので、迷っているステップに合うものだけを使いましょう。

名前 使う場面 出す答え
3C分析(顧客・競合・自社) ステップ3。何を強みとして打ち出すかが決まらないとき 相手が求めていて、競合が満たしておらず、自社ができること
SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威) ステップ1の前。社内で現状の認識をそろえたいとき 伸ばす分野と、今期は手を出さない分野
STP(市場の分け方・狙う層・立ち位置) ステップ2。売り先が広すぎて絞れないとき 最初に攻める業種・規模・地域と、その相手から見た自社の位置
営業プロセスの分解(接触→商談→提案→受注) ステップ5。どの段階の数字を追うかを決めるとき 段階ごとの件数と、次の段階へ進む割合

出典: 編集部が作成した整理。各フレームワークの呼び方や項目の分け方は書籍・会社によって違いがあります(2026-09-19時点)。

フレームワークを使うときにつまずきやすいのは、分析の表を作ったところで満足してしまうことです。表の結論が、1枚の営業戦略のどの欄の答えになったのかを書き写しておくと、分析と実行がつながります。

営業戦略を1枚にまとめる型|表の見本

5つのステップで決めたことは、A4で1枚、または表計算ソフトの1シートに収めます。1枚にすると、経営者と営業担当、外部の協力先が同じものを見て話せるようになります。次の見本の右の列を、自社の言葉で埋めてみてください。

欄 書く内容 自社の答え(記入欄)
期間と目標 いつまでに、売上・粗利をいくらにするか  
逆算した件数 必要な受注件数・商談数・接触数(月あたり)  
売り先 業種・規模・地域・話す相手の役職。今期は狙わない先も1行  
提供価値 相手の困りごとと、自社が選ばれる理由を1〜2文で  
経路 最初の接触の手段と、商談までの順番  
体制 接触・商談・受注の担当者と、外部に任せる範囲  
追う数字 毎週見る行動の数字と、毎月見る成果の数字  
見直す日 次に戦略を見直す日付と、参加する人  

出典: 編集部が作成した記入用の型(2026-09-19時点)。

1枚にまとめるときの注意

1枚に収まらないときは、書きすぎより決めきれていないことを疑います。売り先の欄に業種が5つも6つも並ぶ場合は、今期に集中する先を1〜2つに絞り、残りは「来期に検討」と書いて外に出しましょう。また、「頑張る」「強化する」のような言葉は、何件・何回・いつまでに置き換えます。数字に置き換えられない欄は、まだ決まっていない欄です。

経路と体制の選び方|売り先に届く手段と、動かせる人数から決める

1枚の中で、実行の成否を左右しやすいのが経路と体制の欄です。どちらも「よく使われている方法」ではなく、自社の売り先と手元の人数から選びます。

経路の選び方

経路は、売り先の会社が普段どのように情報を集め、誰が窓口に出るかで合う・合わないが決まります。新規の取引先を探す主な方法の特徴と費用の違いは、中小企業の新規開拓方法の比較で表にしています。自社から相手を選んで連絡する方法を中心にするなら、アウトバウンド営業の手法の使い分けと始める前に決めることもあわせて確認してください。法人相手の営業の全体の流れは、法人営業とは何かを整理した記事で解説しています。

経路を決めたら、接触した相手のうち、どの状態になったら商談として営業担当に渡すかも決めておきます。予算や決裁者、必要性、導入時期を確かめる考え方は、BANTとは何かを解説した記事で紹介しています。

体制の選び方

体制は、ステップ1で逆算した商談数を、今いる人で回せるかどうかから考えます。回せない場合の選択肢は、社内の担当を増やす、採用する、外部に任せるの3つです。営業職の採用が難しくなっている背景は、営業の人手不足を公的データで確かめた記事にまとめています。

外部に任せる場合、費用は頼む範囲で大きく変わります。固定報酬型の営業代行は、営業担当者1人あたり月50万〜60万円程度とするメディアが多く(Sales Marker、PRONIアイミツ)、戦略設計まで含むと月100万〜150万円(ローカルマーケティングパートナーズ)とする例もあります。1枚の戦略があれば、どこまでを自社で決め、どこからを任せるかを見積もりの前に示せるので、依頼範囲の食い違いを減らせます。

数字で見直す|四半期ごとに行動と成果を分けて確かめる

営業戦略は、立てた時点では仮説です。四半期に1回、1枚の「追う数字」の欄を実績と並べ、どこが計画とずれたかを確かめます。見直しでは、次の順番で問いを立てると、戦略を変えるべきか、戦術を変えるべきかを分けやすくなります。

  1. 接触や訪問などの行動の数は、計画どおりに実行できたか
  2. 行動は計画どおりなのに、商談や受注が足りないのはどの段階か
  3. 商談に進んだ会社は、1枚に書いた売り先の条件に合っていたか
  4. 失注した理由は、提供価値の書き方で防げるものだったか

1と2の問いで原因が見つかる場合は、多くは戦術の修正で対応できます。3と4で売り先や提供価値そのものが合っていないと分かった場合は、1枚の戦略を書き直します。行動の数字と成果の数字の分け方は営業KPIを行動量と成果に分けて設計する方法で、商談が思うように増えないときの詰まりの探し方は商談数が増えない原因を工程ごとに特定する記事で詳しく扱っています。

戦略から実行まで相談する場合|計画づくりと実行を同じ相手に頼む選び方

営業戦略を1枚にまとめても、それを実行する人や時間が足りない場合があります。外部に相談するかどうかの判断材料は、営業代行を入れるべきタイミングの見極め方で整理しています。戦略づくりと実行を別々の会社に頼むと、計画の意図が実行側に伝わりにくくなるため、両方を相談できる相手かどうかも確かめておくとよいでしょう。

当メディアを運営するLongWave株式会社のエイギョウブは、ヒアリングのあとに支援計画作成(KPI・PL設計、体制の提案)を行い、契約、アサイン・稼働開始へと進む流れをとっています。実行のメニューとして、電話営業(BDR/SDR)、フォームDM(1日最大500件のアプローチ)、SNS運用(LinkedIn)、交流会・展示会、即戦力人材アサイン(最短数日で稼働)、マルチチャネルを用意しており、支援企業は100社以上です。料金は月額40万円〜で、支援範囲・体制に応じて提案します。

まとめ|目標から逆算した1枚を、四半期ごとに書き直す

  • 営業戦略は、誰に・何を・どの経路で・どの体制で売るかを決めたものです。営業戦術はそれを動かす手順で、マーケティング戦略は市場・商品・価格まで含むより広い計画です。
  • 立て方は、目標→売り先→提供価値→経路→体制と数字の順に決めます。目標の売上から受注件数と商談数を逆算し、回せる体制があるかを最後に確かめます。
  • フレームワークは3C分析・SWOT分析・STP・営業プロセスの分解の4つで足ります。表を埋めることより、結論を1枚のどの欄に書くかが大切です。
  • 決めたことはA4で1枚にまとめ、「頑張る」を件数と日付に置き換えます。
  • 四半期ごとに行動と成果の数字を分けて見直し、売り先や提供価値がずれていたら戦略を、手順がずれていたら戦術を直します。

よくある質問(FAQ)

営業戦略とは何ですか?
営業戦略とは、売上の目標を達成するために、どの会社に、どんな価値を、どの経路で届け、誰がどれだけ動くかを決めたものです。限られた人と時間をどこに使い、どこには使わないかを決めることでもあります。中小企業では、目標・売り先・提供価値・経路・体制・追う数字・見直す日を1枚の表にまとめておくと、社内と外部の協力先で同じ認識を持ちやすくなります。
営業戦略と営業戦術の違いは何ですか?
営業戦略は「どこで戦うか」、営業戦術は「決めた場所でどう動くか」を決めるものです。戦略では売り先や提供価値、経路、体制を四半期から1年の単位で決めます。戦術では、リストの作り方、最初の電話で聞くこと、提案書の構成などを週や月の単位で決めて改善します。戦略が無いまま戦術だけを磨くと、買う理由のない相手に連絡し続けることになりかねません。
営業戦略とマーケティング戦略の違いは何ですか?
マーケティング戦略は、どの市場で、どんな商品を、いくらで、どう知ってもらうかまでを含む広い計画です。営業戦略はその中で、見込みのある会社に接触し、商談をして受注するまでを受け持ちます。小さな会社では同じ人が両方を考えることが多いため、営業戦略の1枚に「どう知ってもらうか」の欄を添えておくと、2つの計画が食い違いにくくなります。
小さな会社にも営業戦略は必要ですか?
人数が少ない会社ほど、力を集める先を決める意味があります。2026年版小規模企業白書では、最も重視する経営課題として「受注・販売の拡大」を挙げた割合が小規模事業者で36.6%と最も高くなっています。分厚い計画書は必要なく、目標から逆算した件数と、売り先・経路・体制をA4で1枚に書き、四半期ごとに実績と比べて書き直すだけでも十分に役立ちます。

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